ゴルファーファーストという幻想と現実を見極めろ!

「ゴルフ人口増加には、ゴルフ場の変革が不可欠である!」という主張は、バブルが弾けゴルファーが激減して以降、何百回も耳にしました。

ゴルフコースは、お客様が来るのを待つビジネスモデルです。立地条件が良ければ、ただそれだけでも十分にビジネスは成り立ちます。地方などでは、そういう地域密着のビジネスで生き残ったコースがたくさんあります。

しかし、全国のゴルフコースの約半分が集中していてゴルファーの6割以上が住んでいるとされる東京を中心とした関東では、そんなコースは一握りです。自宅から100キロ以上離れているのは当たり前で、車で片道2時間以内なら許容範囲というエリアに、7割を越えるコースがあるのです。

待つだけではそれらのコースは次々に経営破綻して、山河に戻る運命でした。

生き残ってきたゴルフ場とは

そもそも昭和からバブル期までの時代は、過剰ともいえるサービスを積み重ねて、値上げを繰り返したのです。それでもゴルファーの数が多かったので、ゴルフコースは満員御礼でした。コース利用者の多くは社用族で、経費でゴルフをしていました。自分の財布が痛まないので、コスト感覚も狂っていたのだといえます。

ゴルフコースの過剰なサービスを廃止し、経営をスリム化して生き残りを模索したのが平成のゴルフシーンです。休日に5万円払ってプレーしたコースが段階的に値下げをして、5千円でプレーが可能になるという嘘のような話が現実になるのに四半世紀かかりました。

その期間、ゴルフを続けた生き証人の一人として断言できることは、立地条件が悪いコースほど、ゴルファーファーストで改革をし続けて生き残ってきたという現実です。

アメリカンなゴルフコースって平成のトレンドでもう古い?

プレー代の値下げが進んでいく中で、合言葉のように使われたのが『アメリカンなコース』『アメリカタイプのコース』でした。これほど曖昧でいい加減な言葉はないという感じで、広い意味で使われました。

アメリカのゴルフコースの数は世界一で、日本の約8倍の1万6千コースです。日本ではあり得ないようなコースも含めて、様々なコースがあります。

『アメリカのゴルフコース』とは
● 多くのコースにクラブハウスがない
● 簡易なスタート小屋で受付するシステムで、スタッフの数も最小限
● 無人販売所のように、お金を入れる箱だけがあるコースもある

最初に『アメリカン』を使った人は、日本のゴルフコースももっと簡易なシステムと最小限のスタッフで運営してもいいじゃないか、と考えたのだと推測できます。最小限のスタッフについては、どのゴルフコースも努力して達成しました。

しかし簡易なシステムは、絶対的な壁があって実現が難しいのです。ゴルフ場規模になると、勝手に開発することが法律で禁止されているので、行政の許可を取ってコースは造られます。

完成後のゴルフコースには、プレーごとにゴルフ利用税が発生しますが、この利用税の額は開発の規模とクラブハウスの大きさや施設のグレードで決められるのです。クラブハウスなしで運営できるのは、仮オープン期間限定で、期日までにクラブハウスができない場合は閉鎖まで含めた罰則があります。法律が変わらない限り、簡易なシステムには限界があるのです。

平成時代のスローガン的な用語が、『アメリカンなゴルフコース』です。今では業界内にやれることはやった感があるので、あまり使われません。

ゴルフコースも多様性の時代に! 令和らしいゴルフコースってあるの?

昨年から巷では、あらゆるものの価格が次々と値上げされて話題になっています。四半世紀にわたって、値下げを続けてきたゴルフコースも例外ではありません。1割から2割ぐらいの値上げはやむを得ないと決断して、実行したコースがたくさんあります。値上げ後も来場者数は変わらない、という安堵の声も聞きましたし、シビアに来場者が減ったと嘆く声も聞きました。

「若い新規ゴルファーってもう、減ってきているよね」
高級に分類されるゴルフコースのスタッフがそう言うので、「僕はむしろ増えている感じがしています」と話しました。お互いに経験した感覚で、そのように思ったのです。

ゴルファーは、コストパフォーマンスに敏感です。高級コースにも行ってみたうえでコスパが合わない、と判断することもあります。オールドゴルファーと比較しても雰囲気に流されずにバシッと決断できることは、若いゴルファーの特徴かもしれません。

コースもゴルファーも違っていていい

多様なゴルファーが存在していて、自分に合うコースを探す旅を続けているのが令和のゴルフシーンだと思っています。みんな同じでなく、違っていていいのです。コースも同じですし、ゴルファーも同じです。

アメリカのチープなプレー代のコースは、管理も最低限です。日本の場合は、最低限のレベルが全く違います。高級なコースが油断すれば負けてしまうほど、メンテナンスが優れている安価なプレー代のコースがたくさんあるのです。

令和の時代に合ったゴルフコースは、これからどんどん増えていくのだと思います。今のゴルファーたちが求めるシステムやコスパを自然に取り入れて、それは多様に完成していくはずです。

僕らは生き証人であり、同時に改革に参加するゴルファーなのです。




篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。


ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】

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