江戸時代は身分制度の一環で、着ていいものとダメなものが決まっていた
日本のゴルフコースにおけるドレスコードの不思議を追求していく中で、“着物の国のゴルファーだからだ”という考え方をすることがあります。諸説あり、という中の奇説みたいなものですが、これが調べれば調べるほどディープで面白いのです。
先日も江戸時代の着物の歴史を調べていて、驚きました。学校の授業で習った「享保の改革」(八代将軍徳川吉宗の行なった幕政改革)の内容を調べると、体制を維持する目的で身分ごとに衣服の統制が細かく強化されているのです。江戸時代は、身分に応じて服装が決められていて、一目でわかるようになっていました。時代劇などを見ると何となくわかるような、わからないような感じですが、言われてみればなるほどと納得できます。
現代でも残っている風習があります。女性の着物が未婚は振袖で既婚は留袖なのは、江戸時代の”一目で情報を得られる文化”の名残なのです。
最も驚いたのは、庶民の着物は特別な場合を除いて新しく購入することはなく、古着屋で購入するのが当たり前だったということです。それを知った瞬間、頭の中で疑問に思っていたいくつかの点が線になりました。つまり、ひらめいたのです。
一生中古クラブでいいのが普通?古い常識がぶっ壊れていく?
「予算3万円以内、中古のドライバーでオススメなのは何?」この数年で、同級生たち(50代後半。一応、社会的地位もある)からこんな相談をされることが増えました。
正直に、「よくわからない」と回答します。試打したことがあるクラブならわかりますが、どの世代のドライバーが、もしくはどのメーカーのドライバーの中古相場が3万円以内なのかわからないからです。
「分割でもいいので新製品のほうがいいと思う。○○ならバッチリ合っていると思うけど」というような提案をします。彼らとは何度も一緒にゴルフをしているので、スイングも癖もわかっているから、自信を持って推薦しますが、そこで戻ってくる言葉が、「中古で十分、新品は贅沢」というものでした。
ゴルフの楽しみ方は十人十色、自由です。その場ではそれ以上の話をしないようにしています。
中古を使用している人と新品を使用している人の割合について正確な統計データはありませんが、ずいぶんと前から中古使用者のほうが過半数になっていると言われています。最近は一部のメーカーが直販サイトで期間限定の自社製品下取りキャンペーンをしていますが、しっかりとした流通経路を押さえているから可能なのだと思います。
また、大手量販店ゴルフショップでも中古クラブの下取りは当たり前になっています。そういう時代なのだと、更新できていない自分の頭に言い聞かせる日々です。
新品と中古クラブに対するイメージの違い
コロナ禍で起きた令和のゴルフブームが始まってから、新品のゴルフクラブと中古のゴルフクラブのイメージについて、取材先などで意識して探るようにしています。そこでわかってくるのは、「金持ち=新品のクラブ」ではないということです。「上級者=新品のクラブ」という考え方がベースになっているのです。
ゴルフメーカーのラインアップに上級者用のモデルが多いのは、その辺りのマーケティングに基づくものなのでしょう。
約40年前、最初に使ったクラブと2番目に使ったクラブは叔父のお古でした。それらを使用していた7年間、新品のクラブに憧れました。使用していたクラブに不満はありませんでしたが、常に頭の片隅に「いつかは新品の自分のクラブ」という決意みたいなものがありました。
初めて自分のクラブを買った瞬間や、それをデビューさせた感動と現実、自分のクラブだからこそできるチューニングの面白さ。今でも鮮明に覚えています。それ以来、一部の例外を除いてクラブチェンジのときは新品です。
ゴルフクラブとの出逢いは、新品も中古も同じ感動と物語がある!
しかし、江戸時代の階級で圧倒的多数だった庶民たちはほぼ全ての着物を古着屋で購入していた、という歴史を知って唐突、自分の中で新品主義というバリケードがやわらかく小さくなりました。
江戸時代を生きたご先祖様の、無駄を出さないという中古品活用の精神が現代でも無意識の価値観の土台の一部になっているのだとしたら、それはごく自然なことです。むしろ、“SDGs”を合言葉に、一つしかない地球に暮らし続けられるよう努力をしようという時代に、中古活用はマッチしているのだと胸を張りたいぐらいです。
新しい中古クラブを入手した同級生たちのデビューラウンドに付き合うとき、彼らの喜怒哀楽は、新品クラブを手にしている時とほとんど変わりません。買って良かった、というハッピーエンドも、この買い物が間違いであるわけがないという悲劇の予感も、これを売って別物に買い替えようという決断も、全て個別の物語で、ゴルフの面白さが詰まっています。
中古クラブが購入できるのは、新品のクラブを買って使用し、買い替えのためにそれを手放すゴルファーに支えられていることも事実です。新品のクラブには中古クラブにはないスペシャルな利点があります。それを満喫するために、そして中古クラブ市場のためにも、僕は新品のクラブをオススメし続けるのです。
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。







