ゴルフクラブの「重量」について考える
深読み! ギアカタログ| 今回のテーマ【重量】
ゴルフはプレーヤーの技術だけでなく、使っている道具の良し悪し、そして選び方が結果を大きく左右するスポーツだ。この連載では、そのゴルフギアについて深く深〜く「深読み」した話を紹介していく。今回は「重量」について深読みする。
GOLF TODAY本誌 No.585/122〜123ページより
パワーヒッターは重量級というのはもはやナンセンス
テープ、パーツの接着剤などが数グラム加わるが、多少バランスに影響する程度。グリップやヘッドの重量に含めて設計されている。
一般的に、クラブ選びで検討されるのは、シャフト重量だろう。カーボンや軽量スチールが採用されてから約半世紀を経て、重量帯は30g台~120g台と、かなり幅広く選べるようになっている。
ただ、その選び方には古くからある固定概念が、いまだに幅を利かせているように思う。その1つが「パワーヒッターは重いほうがいい」という考え方だ。
以前のシャフト素材は木製のヒッコリーにせよスチールにせよ、軽くなるほど強度が落ち、ヤワになるのが必然だった。そのため、パワーヒッターが使うとしなりやねじれが大きくなり、ショットが定まらなくなったり、折れてしまったりすることもあった。だから重い=硬くて強度があるものを選ぶのが〝常識〟だったわけだ。
だが、近年のカーボン素材は、軽くても強度が出せるようになり、フレックスも自在に設計できるようになっている。ショットを安定させるためにわざわざヘビー級シャフトを選ぶ必要はない。50g台のXシャフトといったものも選べるのだ。
かつてスチールシャフトのパーシモンドライバーは370gもあったが、現在のツアープロが使用するものは310g前後。この、約60gの差はほぼシャフト重量だが、要はそれだけ軽くてもハードヒットに耐える強靭さが得られているからだ。この軽量化の流れは、さらに進んでいくと思われる。
実際、昨今のジュニアの競技ゴルファーには、いわゆる〝軽・硬〟シャフトを選び、300ヤード超のロングドライブを実現している選手がごろごろいる。
逆に、ベテラン層ほど〝重め=硬め〟か〝軽め=軟らかめ〟といったイメージで選び続けている傾向がある。意識改革が必要だろう。
クラブの総重量は3つのパーツで構成される
ヘッド重量はドライバーで200g前後、ウェッジで300g前後。グリップ重量は50g前後が標準。シャフト重量はバリエーションが豊富で、総重量の違いに大きく影響している。
【シャフト】=重い=硬いは過去の話重量も30〜130gと多様化
グリップとともにヘッドも軽くなる傾向にある
さて、シャフト以外のパーツはどうなっているのか。グリップは50g前後が標準だが、たとえばダンロップの『ゼクシオ』のグリップは30g台のものがプロパーで装着されている。総重量を下げつつ、ヘッドを利かせるバランスを保つのには、軽量グリップが有利、ということだ。
あらゆるスポーツで、棒状で振り回す用具は、強度が保てる範囲で軽量化が進むもの。その点で、ゴルフクラブも軽量化するなら、グリップの軽量化も正当な進化といえる。
グリップは現在、20g台のものも市場に登場してきているが、10数年前にカーボンシャフトのバット部自体を成形してグリップを一体化したパターもあった。こういった発想なら更なるグリップの軽量化も可能かもしれない。
最近ではタイトリストが『TS1』という軽量モデルを発表したが、これはシャフトだけでなくグリップ、ヘッドも軽量化。インパクトで当たり負けない範囲で、パーツすべての重量を下げ、ヘッドスピードをアップさせるコンセプトだった。
ヘッド重量まで、下げることを考えているメーカーは今までほとんどなかったと言っていいだろう。というのも、スイングバランスにとらわれているため、シャフトの軽量化に応じて、逆に重くする傾向にあったからだ。
ドライバーのヘッド重量が200gを切るようになったのは、カーボンシャフトと金属へッドが主流になり、長尺化が進んだから。だが、長くするから軽くしていい、という考え方や、バランス合わせとは関係なく、当たり負けを起こさない、軽すぎない重量のほうから探していけば、もっと軽いヘッドに移行できるかもしれない。
物理的にはヘッド重量はボール重量の約46gより重ければ、当たり負けることなくエネルギーを伝えられるはず。打点がズレることを考慮しても、190gもいらないのでは、と考えることもできる。
アイアンやウェッジも、ヘッドを軽くできる余地はある。ストロングロフト化よりも、ヘッド軽量化による飛距離アップの可能性も、まだまだあるはずだ。
【ヘッド】長いものほど軽い