プレーオフ2ホール目で稲森佑貴を破る

通算9アンダーで並んだ石坂と稲森のプレーオフは1ホール目がともにパー。

2ホール目を稲森がボギーとしたのに対して石坂はパーセーブに成功。2020年にプロ転向して、26歳での嬉しい初優勝となりました。

前日に続いて強い風が吹く中でのプレーでボギーはわずかにひとつの堅実なプレーをした石坂のキャディバッグの中身はどうなっているのかと思って見てみると、男子プロには珍しいセッティングになっていました。

シャフトのフレックスがドライバーとアイアンはS。3本のFWはXになっていた

14本は全て契約するテーラーメイドで、ドライバーと3、5、7番のフェアウェイウッド(FW)は最新の「Qi4D」になっています。

ところがシャフトはドライバーが「TOUR AD PT」(60グラム台)のSフレックスなのに対してFWは同じモデルですが、3番と5番ウッドは60グラム台。

7Wは70グラム台で、いずれもXフレックスになっているのです。

さらに、4番と5番が「P770」。6~9番とPWが「P8CB」となっているアイアンは日本シャフトの「MODUSプロトタイプ」のSフレックスとなっていました。

レギュラーツアーに参戦する男子プロともなると、シャフトのフレックスはXにするのが“標準”ともいえます。

“マン振り”ではなく、優しく捕まえたいからSシャフトに

それがドライバーとアイアンをSにしている理由について石坂は「自分は“マン振り”していくタイプではないので、Sシャフトにしてやさしく振って捕まえていきたい、とうのがあります。Xだと、振らなきゃいけない、という気持になるので」と説明してくれました。

チップカットしているので、通常のSよりはXに近い硬さになっています。

それでも「X」と表示されていると、どうしても振らなきゃ、となってしまう。

それよりも「S」と表示されている方が自分の打ちたい球のイメージに合ったスイングができる。

これは自身のスイングのイメージによってシャフトのフレックスを合わせる、という意味でアマチュアにも参考になることだといえるでしょう。

「師匠」が亡くなり、コーチ不在の練習でやっていることは

石坂は地元の横須賀(神奈川)でジュニア時代から「師匠」と慕い、主にメンタル面でのアドバイスをもらっていた鈴木隆さんが昨年の秋に亡くなり、現在はコーチ不在。練習は誰の指導も受けずにひとりでやっています。

それでツアーに参戦し、優勝もできるのですから、その中身が気になるところです。これについては「基本に帰ろう、ということでアプローチを中心にやっています」と石坂は言いました。

さらに「ボールを思い切り右に置いて(クラブを)上から入れたり、ロブショットしたり。あるいは7番アイアンを思い切り開いて短い距離を打ったりと、遊びの要素も入れながらやっています」と詳しく教えてくれました。

昨シーズンのリカバリー率(パーオンできなかったホールでパー以下のスコアでホールアウトする確率)が67.420%で8位の実績は、こうした練習の成果なのでしょう。

「変わったことをしていると思われていい。当たり前の練習じゃ勝てない」

普段は一般のお客さんもいる、いわゆる「打ちっ放し」でこうした練習をしていることについて「変わったことをしているな、と思われてもいいんです。むしろ、当たり前の練習をしていたら勝てないと思うんです」(石坂)。

優勝という結果を出したのですから、この練習スタイルもクラブ(シャフト)に対する考え方も正しかったことになります。

自分を知り、やることもギアのスペックもそれに合わせることの大切さを教えてくれた勝利でした。

(取材・文/森伊知郎)