最近のフィッティングで、少し気になることがありました。

トラックマンをはじめとする測定器が普及し、多くの方が数値を見ながらスイングを分析するようになりました。もちろん、測定器はフィッティングにも欠かせない道具です。

しかし、その一方で、数値に頼り過ぎてしまい、判断を見誤るケースが増えているように感じます。

例えば、お悩みがスライスボールだとします。すると、多くの方は、「アウトサイド・インだからかな?」と考え出します。

でも、なぜ、アウトサイド・インだと思ったのでしょうか?

ミスをするとスライスするからでしょうか? クラブパスの数値を見たからでしょうか? あるいは、レッスンプロやフィッターさんにそう教わったからでしょうか?

実は、多くの方は、ボールがどこへ飛び出して、どのように曲がったのかまで、考慮していない場合が多いです。

固定観念だけでミスの原因を決めている

ミスショットを

「スライスした」→「アウトサイド・イン」

という固定観念だけで判断してしまいがちです。

しかし、左へ打ち出して右へ曲がるスライスと、右へ打ち出して右へ曲がるスライスでは、

原因はまったく違います。

球筋は、「どこへ飛び出して、どこへ曲がったのか。」そこまで観察して初めて分析が始まります。

同じことは、測定器の数値にも言えます。例えば、クラブパスがアウトサイドインだったとします。

すると、

「アウトサイドインですね。」

「もっとインサイドから振りましょう。」

という話になるのは当然なのですが……、しかし、その数値だけによる判断は本当に正しいかを疑ってみることも必要です。

実は、実際にクラブ全体の動きを観察すると、すでに十分インサイドからクラブが下りてきているケースも少なくありません。

その状態で、さらにインサイドから振ろうとすると、かえって別のミスを招いてしまうこともあります。ここで誤解していただきたくないのは、

測定器を否定したいわけではありません。測定器は、多くの情報を与えてくれます。

アドレスの向きや、もともとの狙いどころと測定器の基準になるターゲットとの差によって、こういった現象と数値が逆転することもあるということを覚えていただきたいです。

つまり、その情報をどう読み解くかが非常に重要になるということなのです。

数値はすべてでなく判断材料のひとつ

では、どうすればよいのでしょうか?

まず、よ~く観察することです。ボールはどこへ飛び出して、どのように曲がったのか? クラブは実際にどのように動いたのか? そして、打った本人はどう感じたのか?

意外に思われるかもしれませんが、インドアで3メートルほど先のネットに当たる環境でも、

「今のは右へ出た」

「少し引っかけた」

と感じる方は少なくありません。そして、その感覚は当たっていることが多いです。

その感覚も、大切な情報の一つです。

測定器には、クラブパスやスピン軸など、さまざまな数値が表示されます。もちろん非常に参考になります。

しかし、それぞれの数値だけで原因を決めることはできません。特にインドアでは、測定環境によって数値の出方が気になる場面もあります。だからこそ、

数値はあくまでも参考情報の一つ。

球筋、クラブの動き、打った本人の感覚、それらを総合的に判断することが必要です。

もう一つ大切なのは、測定器が計測しているのは、主にインパクト前後の現象だということです。もちろん、インパクト情報は非常に重要です。

物理現象を数値化してくれているので、興味深いのも理解できます。

しかし、本当に知りたいのは、「なぜ、そのインパクトになったのか。」です。

そのためには、見るべき順番は逆になっていきます。

そのインパクトの原因は、インパクト前のダウンスイングにあります。

そのダウンスイングになった原因は、切り返しにあります。

その切り返しになった原因は、バックスイングにあります。

そのバックスイングになった原因は、始動にあります。

そして、その始動になった要因は、アドレスにあります。

さらに、そのアドレスの要因には、クラブスペックがあります。

つまり、インパクトを理解するためには、アドレスまで逆算して観察することが重要なのです。

さらに、スイングの結果は、フィニッシュに出ます。

心地よく振り切れているのかは、フィニッシュでバランスよく立てているのかに現れます。

フィニッシュには、そのインパクトが良かったのかだけではなく、そのスイング全体が自然に行えたのかという結果になっています。

測定器の数値は、打っている人にとって、とても大切な情報です。

自分の感覚と現実を照らし合わせるためには、大きな助けになります。

一方で、フィッターの仕事は、数値を読むことではありません。

なぜ、その数値になったのか。

その原因を読み解くことです。

だから、球筋、クラブの動き、インパクト音、打った本人の感覚、アドレスからフィニッシュまで、すべてのことを観察することから始まります。

その上で、測定器の数値を確認する。この順番が大切だと考えています。

多くのゴルファーは、数値だけを見て、「スイングを直しましょう」

と考えがちですが、その前に、一度立ち止まって考えていただきたいのです。

その現象は、本当に技術だけが原因なのでしょうか。

ゴルファーは、とても真面目です。だからこそ、思い通りに打てなかったり、測定器に気になる数値が表示されたりすると、

「自分の技術が悪い」

「もっと練習しなければ」

と考えてしまいます。

もちろん、技術が原因のこともありますが、クラブがそういう現象を引き起こしているケースの方が多いと考えています。

長さや重さの感じ方、振り重さ、そして、それらに影響するシャフト重量やヘッド重量、グリップの太さなど。クラブにはさまざまな要素があります。

それらが微小に変化しても、人間は無意識に反応し、対応しようとします。

その結果として現れた球筋や数値を見て、「技術が悪い。」

と判断してしまい、さらに技術を修正しようとしてしまうと、本当の原因からどんどん離れてしまうこともあります。

だからこそ、まず現象をよーく観察する。その現象が、本当に技術によるものなのか?それともクラブによって引き起こされているのか? そこを見極めることが、フィッティングでは最も重要だと考えています。

ゴルフで一番怖いのは、

間違った原因に対して、一生懸命努力してしまうこと。

測定器は、とても便利な道具です。しかし、答えを教えてくれる道具ではありません。

現象を観察し、原因を考え、その答え合わせをするための道具です。

その順番を間違えなければ、測定器はこれ以上ないほど心強い味方になってくれるはずです。

ダグ・三瓶(だぐ・みかめ) ブリヂストンスポーツ、アクシネット ジャパン インクと日米2つの大手メーカーに所属。その中でクラブ開発、ツアー担当、マーケティング、フィッティングなどを担当。ツアーレップ時代にはあのボブ・ボーケイ氏に日本で唯一の弟子と認められていた。現在、フリーとなり迷い多きアマチュアゴルファーにアドバイスを送ってくれることとなった。