スピーダーはオートマチック系、ベンタスはマニュアル系
スピーダーとベンタスは、言わずと知れたフジクラの二大フラッグシップブランド。ともに高い技術力を集結したモデルですが、設計思想、適正スイングタイプ、弾道や挙動に至るまで対極に位置する特性を備えた別物のシャフトです。ざっくり言うと、スピーダーはその名の通り、振りやすさ、ヘッドの走りなどスピード感を重視。ベンタスは叩いた時の安全性や操作性を重視して作られています。
シャフトの挙動と弾道特性の違いを比べると、スピーダーはシャフト自体が俊敏に動く中で“走り感”を得られるオートマチック系。積極的にしなり&しなり戻ってスイングをアシストしつつボールを力強くとらえてくれます。しなりを感じやすいということはタイミングが取りやすいということ。必要なスピン量も確保できて球が上がりやすく、つかまりもいいタイプなので、調子が良くない時でもスイングの再現性を補完してくれる一面があります。
一方、ベンタスはシャフト自体の無駄な動きを抑制してプレーヤーのパワーやコントロール能力がダイレクトにヘッドに伝わります。しっかりしているぶんスピン量が低減されるため、低めで強い弾道が持ち味となります。手応えはソリッドで、叩きにいってもヒッカケが出にくい。打点やフェース面のブレも少なく、ボールの飛翔ラインが安定します。タイミングがとりやすいのがスピーダーなら、こちらは自分でタイミングを作っていくマニュアル系のモデルと言えます。
ここまでわかるとスイングタイプの適正とターゲット層がうっすらわかると思いますが、スピーダーはしなりを活かしてヘッドを走らせたいプレイヤー、インパクトで球をつかまえたい層、硬い手応えが嫌いな人に適しています。対するベンタスは基本的にヘッドスピードが速く、過度なシャフトの挙動を嫌う人、抑えの効いたスイングで打球をコントロールしたい人、左へのミスのリスクを排除したいプレイヤーに最適です。
こう言うとヘッドスピードが速い人はベンタス、それほどでなければスピーダーと考えがちです。もちろんスペックによってその傾向があることは否めず、同モデル内でもスペックによる特性のグラデーションがあります。例えば、ベンタスシリーズの中でも先中調子寄りの「RED」はスピーダーに近い走り感を備えていますし、スピーダーシリーズの「NX BLACK」はベンタスのようなしっかり感があります。とはいえ、ヘッドスピードが40m/sでもベンタスが合う人もいれば、40m/s以上でもスピーダーがフィットする人もいるのが事実。両者の選択についてはヘッドスピード基準でなく、スイングの特性や振り心地など官能評価に依存するべきです。
先側の動きを感じにくいベンタスはREDでもオーバースペック
正直なところを言うと、ベンタスを打ちこなせるアマチュアゴルファーがどれだけいるのか懐疑的です。最近はカスタムシャフトに走る傾向があります。もちろん悪いことではないですが、カスタムに走るとなぜかオーバースペックになりがち。必要としないのにハイスペックのベンタスを使い“ベンタス疲れ”している人が多い気がします。18ホールもたないシャフトで満足なら構いませんが、本気でショットの安定を図りたいなら考え直した方がいいです。
愛用するプロが多いベンタスに憧れるのはわかりますが、それで行き詰まっていたらスピーダーも試してみましょう。ベンタスはモデルを問わず、 先端の剛性が高くヘッド側にしっかり感があります。振った時に先側の動きが感じられないようであれば、フレックスを問わずオーバースペックです。逆にスピーダーは、振った時に先端側が動きすぎると感じたらアンダースペック。こちらもフレックスは気にせず選んでください。
ということで、スピーダーとベンタス、どっちがいい? という問いに対する答えはスピーダー。ベンタスのことが頭から離れなくてもスピーダーから入るべきです。一つ気をつけてほしいことは、スイングでは先側(ヘッド)が動いてくれると楽なので、それをもって“運命の一本”と感じてしまうことがあること。実はこれがシャフトマジックで、頼りすぎると手打ちになります。その瞬間はいいですが、そのまま続くと手打ちスイングが定着してしまいます。比較的楽なスピーダーですが、ある程度振っても先側が暴れないスペックを選ぶのがポイントになります。

吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・中央区日本橋浜町の「吉本巧ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。












