世界のゴルフスイング事情|ゴルフレッスン界に押し寄せる『3D』の波
ゴルフリサーチャーTASK【世界のゴルフスイング事情】vol.1
国内外で収集したゴルフスイングに関する最先端情報を「Jacobs3D」アンバサダー、ゴルフリサーチャー「タスク」が独自の視点と考察を交えてお届けします!
ゴルフリサーチャー・タスク
国際金融マンからゴルフリサーチャーに転身。米国のゴルフサイエンス団体Jacobs 3D GOLFのアドバイザリーメンバーであり、日本のアンバサダー。USGTF Teaching Professional、TPI Certified資格を所持。
ゴルフスイングの原理原則を知ろう
今月号よりこのコラムを担当させていただくTask(タスク)です!よろしくお願いします。
私はアメリカのゴルフサイエンス研究機関Jacobs3DGolfでゴルフ力学を学び、本体のアドバイザーリーメンバー及び日本のオフィシャルアンバサダーとして認定を受けました。このコラムでは、ゴルフサイエンスに関する欧米の最新の情報や議論、一流プレーヤーのスイング分析などをお伝えしていきたいと思います。
さて、昨今のモーションキャプチャー技術やコンピューター解析技術の飛躍的な向上により、約1秒で終わってしまうスイング中のプレーヤーやゴルフクラブの動きを詳細に観測できるようになりました。モーションキャプチャーシステムであるGEARSはもちろんですが、弾道を測定し解析するトラックマンなどの観測機器は、今やアマチュアプレーヤーにまで浸透しつつあります。しかしながら、スイングの結果の観測データを実際のゴルフスイングの改善に役立たせるのは実は非常に難しいのです。なぜでしょうか。
その理由を一言で言えば、使用するゴルフクラブが非常に特殊な形状をしているからです。つまり、インパクトのはるか前にプレーヤーがグリップに与えたエネルギーを、偏重心であるゴルフクラブの複雑な伝達経路を通じてクラブヘッドに届かせなければならないからです。そこには、このゴルフクラブの形状特性のおかげで飛距離を実現できる一方で、クラブヘッドを正しくボールにインパクトさせる再現性は低くなるという二律背反の関係が存在するからです。
さらにここで明確なのは、クラブに加えるエネルギーは原因であり、クラブヘッドの加速度やパスなどの観測数値は結果だということです。ゴルフ力学ではその原因をキネティクス、観測結果をキネマティックスと定義しています。あえて残酷な話をすると、皆さんがこのキネティクスを理解せずにGEARSやトラックマンで観測されている一流選手の数値だけを目指して体を動かそうとすることは、何の意味もないと断言できてしまうのです。
では、キネティクスとは何か。このこれまで謎だったグリップに与えられるエネルギーの解析を初めて実現したのが、現在アメリカのゴルフ界で旋風を巻き起こしているJacobs3Dです。実はゴルフクラブの挙動はこれまで解析不能だったので、いわゆるスイング理論というものはほとんど全て身体の動かし方、すなわちバイオメカニズムからのアプローチで論じられてきました。しかも、皆さんはスイングを動画や写真で撮影し分析しますが、それはあくまでも2Dという平面で観測しているに過ぎないという限界があります。
実はゴルフのスイングにおけるヒジ先の動きの大半が否定しえない「剛体の物理学」の原理原則の物理で規定されます。しかもそれは3Dキネティクスの世界。まずここに立脚しないと身体のことを論じてもほとんど意味がないのです。その意味で、ゴルフは新しい世紀に入ったと言っても過言ではありません。そこには欧米で多くの面白い議論や情報の発信がされています。この連載では、そうした最先端の情報を皆さんにお伝えしていきます。
プレーヤーがグリップを通じてクラブに与えるエネルギーは直線運動のForceと回転運動のTorqueのそれぞれ3次元ベクトルに分解される。それがスイング中のにクラブの挙動にどう影響を与えるかが解明された。これらの数値が様々な形でグラフィック化され分析できる。
Jacobs3Dは精緻なモーションキャプチャーのデータをもとにグリップに与えるプレーヤーの三次元エネルギーすなわちキネティクスを世界で初めて解析。
Jacobs3DのマネジメントであるMichaelJacobs(左)とBrianManzella(右)両者とも全米トップ50に入るティーチングプロ。筆者(中央)は厳しい指導を受け日本のアンバサダーとして認定された。
HubPathという左右グリップが接する中間点の動きが個々のスイングを規定する。
Jacobs3Dではスイング中のタイムラインにおけるキネティクスを刻々解析する。
アイアンの軸旋回であるガンマトルクの数値変化を表している。
Hub(グリップ)がどのような曲率を持って移動するかを表している。
GOLF TODAY本誌 No.573 116〜117ページより
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