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レジェンドから絶大な信頼を得た元FBI捜査官は今のPGAツアーをどう考えるのか

レジェンドから絶大な信頼を得た元FBI捜査官は今のPGAツアーをどう考えるのか

佐渡充高のプレミアム・ファイル

2023/01/29　ゴルフサプリ編集部

ゴルフ番組やゴルフ雑誌ではあまり語られることのないトピックを、ゴルフジャーナリストやトーナメント中継の解説者として活躍する佐渡充高が取り上げ、独自の見解とともにお届けします。

GOLF TODAY本誌 No.608／115ページより

元FBI捜査官で、PGAツアー繁栄の礎を築いたスーパー・ガイ

1988年米国ゴルフ生誕100年祭でヒーローズ100人に選出。NYCウォルドーフアストリアホテルで催されたパーティは授賞者ホーガン、サラゼン、スニードらとともにタトヒルも登壇。100人のうち女性14人。現役の男女プロとマスターズ創設ボビー・ジョーンズらアマゴルファー、フォード元大統領ら政治家、設計家、芸能人、記者など多くの分野から選ばれた。1980年米国記者協会の最高賞も授賞。

LIVゴルフ出現で揺れた1年、ツアー運営のプロフェッショナル、ジャック・タトヒル（05年81歳で逝去）はどう考えるだろうか？と思い続けた。

出会いは1980年太平洋クラブ御殿場コース。大学生だった僕は試合出場のT・ワトソンのキャディとして開幕数日前から現地にいたところ「要人がコースの下見をするのでサポートしてくれ」と言われ、現れたのがタトヒルだった。

朗らかな人柄、ハスキーボイスで少し早口、プロ級の腕前で楽しいラウンドだった。数年後にPGAツアーの取材を開始しフロリダ州の本部で再会した時、ツアーの重鎮だと知った。ルーキーの僕を歓迎し優しく丁寧に接してくれ、今も感謝の思いで一杯だ。

競技委員長M・シェイやM・ラッセルら各分野の責任者らを次々に紹介してくれるなど、ツアーを深く知る機会に恵まれ生涯の恩人、恩師となった。

当時の本部は華やかな試合から抱いていたイメージとは対極で、戸惑うほど簡素で小さな平屋建て。そこにゴルフ愛を絆にタトヒルらあらゆる分野出身の専門家が集結し、選手と一体となり猛烈に仕事に打ち込んでいた。

タトヒルの精神を受け継いでいく

1924年NY州ロングアイランド生まれ。NY州立大学、イサカ大学で体育の修士号。趣味はゴルフとフィッシング。ドロシー夫人もNY州出身でFBIの速記者だった。長女JCの就学まで一緒にツアーを転戦し選手夫人らのサポートなどツアーに貢献。仲睦まじい素敵な夫妻だった。（米国ゴルフ生誕100年祭のパーティにて）

タトヒルはプロゴルフと社会の繋がり方、チャリティのあり方、安全重視のギャラリー誘導からスタート時間、賞金配分、支払いまで、今では当たり前の細かい部分まで10人の部下とともに構築。

スロープレーには厳しく、選手はトランシーバーを持つ彼を見ただけでプレーが速くなったという。

1980年本部にTPCソーグラスが完成し2年後の旗艦大会ザ・プレーヤーズ選手権初開催も総責任者として携わった。

何より彼はツアーと選手をつなぐキーパーソンだった。

NY州労働局や航空会社で労使専門家として従事した経験から、プレー以外でもツアーに貢献する選手たちに賞金以外のインセンティブをと常に考え工夫。

抜群のコミュ力でA・パーマー、J・ニクラスらレジェンドからも絶大な信頼を得て、時に人生相談など悩みを聞き和らげる精神科医のような役割まで担っていた。

さすが元FBI捜査官！選手の成績や個性だけでなく性格や癖まで把握し変化を感じとっていた。

PGAツアーがタイガー・ウッズの大ブレークへと導き、世界最高峰の地位を確立したのはワンチームで築いた土台があったからだ。

創設以来の大変革へ挑む2023年、タトヒルのスピリッツを受け継ぎ、課題をチャンスに前進すると信じている。

● ジャック・タトヒル
PGAツアー・トーナメントディレクター

大学卒業後、NY州労働局、航空会社で労使関係の専門家として勤務の後、FBIの捜査官に。
ゴルフへの情熱からPGAオブ・アメリカのルールオフィシャルに転身し活躍が評価され46歳でPGAツアーのアドミニストレーターに就任。引退後も下部ツアーの試合創設などプロゴルフ界に貢献。