アニカ・ソレンスタムのPGAツアー出場から20年　ゴルフ界のダイバーシティに大きな影響を与え続けている

PGA出場後に出版されたニコール・キッドマン表紙のVOGUE誌04年5月号

今年5月、アニカ・ソレンスタムのPGAツアー出場から20年が経過。この挑戦はゴルフ界に影響を与え続け、遂に大きな変革をもたらしはじめた。

女子のPGAツアー初出場は1938年ベーブ・ザハリアス、2人目が1952年シャーリー・スポーク。3人目のアニカ出場は51年ぶりの出来事で、会場コロニアルCCに世界200社以上のメディアが殺到。

大ギャラリーが押し寄せ、選手も含め賛否両論が渦巻き、押しつぶされそうな重圧の中で71︲74の好プレー。4打足りず決勝進出は逃したが、彼女の挑戦は多くのゴルファーの心を揺さぶった。

LPGAの仲間もNY州での試合会場からTV中継で応援。リーダーボードに男子選手にまじり表示されるアニカの名前を見つけ歓声をあげた（03年6月2日号スポーツイラストレイテッド）。

アニカに続こう！と女子のPGAツアー挑戦が続いた。

03年6月コネチカットPGA選手権（男子）優勝のスージー・ワェイレイがトラベラーズ選手権に、04年ミシェル・ウィーがソニーオープンをはじめ08年まで8試合、メジャー2勝ブリタニー・リンシコムが18年バーバソル選手権に出場。

以降もPGAツアーや下部ツアーへの出場を望む女子は後を絶たない。

アニカの挑戦は多様性や男女平等の象徴となり、2016年ゴルフの五輪競技復活にも大きな影響を与えた。

鍛え抜かれたアニカボディ（ゴルフワールド誌03年7月号）

ここ数年、世界各地でダイバーシティ促進のため男女混合、男女同一会場による試合が企画、開催され新たなフェーズを迎えている。

昨年6月DPワールドツアー（欧州）はスウェーデンで男女同人数の混合で初開催。今年は日本から欧州女子ツアーの識西諭里、欧州男子の川村昌弘、久常涼も出場した。

昨年11月豪州ではナショナルオープンである全豪オープンを男女が同日、同コース、同額賞金で開催。「画期的！これが未来のプロゴルフ」と大反響。
豪州女子ハンナ・グリーンが男子を上回る活躍で勝利した。

PGAツアーも今年12月に男女混合ダブルス戦の復活が決まっており、今後さらに進化系の試合を模索中。日本でも男女混合の公式戦が実現すれば話題沸騰だろう。

フロリダ州自宅近くで見事にビルドアップされた体にラルフ・ローレンのドレスをまとい登場。僕の初対面の印象はとてもシャイで可憐な女性だったが、懸命な努力で驚異の成長をとげた。再婚し現在は長女アヴァ（13歳）長男ウィリア（12歳）の母。今年12月の親子ペアPNC選手権に長男と出場を予定している。

PGAツアーは出場資格に性別規定はなく、実力があれば男女問わず出場権取得が可能。

が、女子が下部ツアーから昇格、QT合格でシード権を得るのはまだ現実的ではないので、最初は女子の上位数名に年間数試合の推薦枠を設けるなど工夫が必要かもしれない。

スタンフォード大学時代のタイガー・ウッズの記録を上回り6月にプロ初出場初優勝した20歳ローズ・チャンなど、男子と競えるまで成長が期待される選手の出現は好機でもある。

7月、全米女子オープンは女子の熱望が叶い男子メジャーの舞台ペブルビーチGLで初開催され、アニカも特別招待でプレー。

悲願の女子マスターズ開催、賞金の男女格差改善など、いよいよ大きな山が動くかもしれない。

1970年10月9日スウェーデンのストックホルム生まれ。アリゾナ大学卒業後93年プロ転向、通算72勝、メジャー10勝、賞金女王8回、01年女子ツアー史上初の59を記録、03年100人目の世界殿堂入り。
ジュニア時代はテニス選手。スキー（ダウンヒル）でも有望選手でナショナルチーム入り目前だった。ゴルフ好きの両親の影響で16歳から本格的にゴルフへシフト。放課後は背中にゴルフバッグを背負い毎日練習場へ。歴史的なPGAツアー挑戦を両親はスウェーデン自宅のTV中継で見守った。

●文／佐渡充高
さど・みつたか
上智大学法学部卒業。1985年に渡米し、USPGAツアーを中心に世界のゴルフを取材。2022年まで32年間NHKゴルフ解説者。今年からBS放送局『BSJapanext』にて「大正製薬 Presents PGA TOUR TV Program PGA ツアー」の解説者に。