駅のホームのすぐ横に1番ティがある!
まず驚かされるのが、1番ティの場所だ。なんとプレストウィック駅のすぐ隣。ホームで電車を待つ乗客の目の前で、ティショットを打つことになる。日本のゴルフ場なら考えられない光景。ところがここでは、当たり前の風景なのだ。
ちなみに1番ホールの名前は「鉄道(RAILWAY)」と名付けられている。
19世紀、鉄道網の発達がリンクスへのアクセスを変え、ゴルフ普及を後押ししたと言われる。1850年代に開業したプレストウィック駅のそばにコースがあるのは、まさにこの鉄道の普及とゴルフ場との関係を示す象徴でもあるのだ。
ちなみにコースは、フェアウェイの起伏が激しく、随所にポットバンカーが点在している。中には思わず圧倒されるような巨大なバンカーもある。さらにブッシュに覆われたエリアも少なくない。フラットに整えられ、きれいに整備された現代のゴルフコースとは対極にあるようなコースだ。

「ティ」からグリーンが見えないパー3がある!?

プレー中、日本のコースでは考えられないホールがあった。5番ホール(Par3)の別名「Himalayas(ヒマラヤ)」だ。
ティに立っても、グリーンはまったく見えない。巨大な丘に遮られ、その向こうにあるピンは完全に隠れてしまっている。一瞬、「えっ、どこに向かって打つの!?」と途方に暮れてしまった。キャディに聞かなければ狙いどころすらわからないホールは、日本のゴルフ場ではなかなか考えられない。
ここではホールアウトしたら鐘を鳴らし、「もう打って大丈夫」と後続組に知らせるのがルールだ。このなんとも素朴な仕組みも、日本では体験できない興味深さがあった。
17番(Par4)「Alps(アルプス)」も、セカンドショットがブラインド。丘の向こうにグリーンが隠れ、手前には巨大な「Sahara Bunker(サハラバンカー)」が口を開けている。

最初はブラインドホールに面食らってしまっていたが、徐々に面白く感じるようになってきた。見えないからこそ、想像力が働くことに気づいたのだ。丘の向こうに何があるのか。風で球はどう変わるのか。着地したボールは転がるのか、止まるのか。
現代の設計では敬遠されがちなブラインドホールは、自然の地形を活かした19世紀のリンクスでは普通だった。1860年の第1回全英オープン当時から存在するこれらのホールが、160年以上の時を経た今もこうして残っていて、その歴史を感じながらプレーできることは、このゴルフ場の大きな魅力だ。
実は世界の著名設計家の中には、ブラインドホールの要素を現代のコース設計に取り入れているものもいる。米国のC.B.マクドナルドはプレストウィックの17番ホール「Alps」の設計思想を持ち帰り、ニューヨークのナショナル・ゴルフ・リンクス・オブ・アメリカに模倣ホールをつくっている。
自然のままの地形のほうが記憶に残る!
ラウンドを終えて強く残ったのは、各ホールの記憶の鮮明さだった。帰国後、ホームページのコースレイアウトを見るだけで、「あの左のバンカーで苦労したな」などと一打一打が蘇る。
岩場や尾根を越えたハイキングの道が記憶に残るように、自然の地形をそのまま活かしたホールは、個性ごと焼き付く。アリスター・マッケンジーが「ゴルフコースは自然と見分けがつかないほど自然であるべき」と語った思想にも、ここは通じる。
見えないグリーンに向かってボールを打つブラインドホールは、ある意味では理不尽だ。特に競技となれば、目標が見えないことに戸惑ったり、不満を感じたりする選手もいるかもしれない。
でも、競技ではないゴルフには、“想像するゴルフ”という楽しさもあるのではないだろうか。見えないからこそ想像力を働かせる。そんなプレー体験もまた、ゴルフの醍醐味だと思うのだ。
「ショットの先が見えなくても、いろいろと想像ができて面白いかも!?」
プレストウィックでブラインドホールを終えた後、リンクスならではの風に吹かれながら、そう感じた。













