競馬場の「中」にゴルフコースがある!
マッセルバラを訪れると、まず驚かされるのがそのロケーションだ。
なんとゴルフコースが競馬場の内側に造られているのだ。
ここは現在も実際に競馬が開催されている競馬場で、1番ホール(240ヤード、Par3)は競馬場のトラック越えのティショットとなる。他のホールでも競馬場のトラックが近くにあるホールが多く、筆者もショットを曲げてトラックの中へ打ち込んでしまったが(笑)、これもマッセルバラならではの経験だ。

クラブハウスも小さくて素朴。しかし中に入ると、歴史的な写真や資料、展示品が並び、何百年というゴルフの歴史を感じさせる。
受付を済ませると「すぐスタートできるよ」と言われ、わずか15分後には一人でティオフ。世界最古とも言われ、全英オープンを6度も開催したコースとは思えないほど気軽だった。
プレーヤーよりも犬を連れた少女が優先!?
プレー中、驚くべき出来事があった。
3番ホール(357ヤード、Par4)でティショットを打とうとした瞬間、後ろから犬を連れた少女が「Hi!」と声をかけながら現れた。
そして、そのままフェアウェイ方向へ歩いていく。
「えっ、そっちに行くの?」
もちろん危ないので打つことはできない。少女とワンちゃんが十分に離れるまで数分間待つことになった。
その間に後続のプレーヤーも追いついてきた。しかし、誰も文句を言わない。イライラする様子もなく、みんな当たり前のように待っている。
日本のゴルフ場なら、そもそもプレーヤー以外の人がフェアウェイを散歩していること自体、まず考えられないだろう。
ところがマッセルバラでは、これが日常なのだ。
ほかのホールでも、犬を連れて散歩している人を何度も見かけた。ワンちゃんがフェアウェイを走り回っていることもある。
ここではゴルファーが最優先ではない。
ゴルフ場はプレーヤーだけのものではなく、市民の生活空間でもあるのだ。

ヒッコリークラブで楽しむゴルファーも!
さらに印象的だったのが、昔ながらのヒッコリークラブでプレーしている人たちが何組もいたことだ。
9ホールで距離も短いマッセルバラは、ヒッコリーゴルフとの相性もいいのだろう。
最新のドライバーで飛距離を追求する人がいる一方で、昔のクラブを手にゴルフを楽しむ人がいる。そしてその横では、市民が犬を連れて散歩している。
誰もそれを特別なことだと思っていない。
何百年も前から続いてきた「ゴルフ」という遊びが、今も街の暮らしの中に自然に存在している。

自由だからこそ、ゴルフが楽しい!
マッセルバラでプレーして感じたのは、ここがとにかく自由な場所だということ。それはゴルファーにとってだけではない。そこに暮らす市民にとっても、ゴルフ場は自由に過ごせる場所なのだ。
市民は犬を連れてフェアウェイを歩き、ワンちゃんは芝生の上を楽しそうに走り回る。そのときはゴルファーがプレーを止めて待つ。でも、誰も文句を言わない。それが当たり前の光景なのだ。そもそも競馬場の中でゴルフをしていること自体、かなり自由だ(笑)。
そして面白いのは、ゴルファーも決して窮屈そうではないこと。むしろ、そんな環境の中で自然にゴルフを楽しんでいる。
ここでは「ゴルフをする人が一番偉い」わけではない。市民の日常があり、犬との散歩があり、その中にゴルフがある。ゴルフよりも大事なものがあれば、そちらを大事にする。それをみんなが当たり前のこととして受け入れているからこそ、市民にとってもゴルファーにとっても自由な場所でいられるのだろう。
世界最古とも言われるゴルフ場なのに、格式張ったところはまったくない。何百年もゴルフが続いてきた場所だからこそ、ゴルフを特別なものとして囲い込むのではなく、市民の日常の中で一緒に楽しむ文化が根づいているのかもしれない。
ゴルフより大事なものはちゃんと大事にする。でも、ゴルフも思い切り楽しむ。そんなマッセルバラを見ていると、「ゴルフはもっと自由に楽しめばいい!」と思えてくる。
マッセルバラで少女とワンちゃんを待ちながら、そんなゴルフもいいなと思った。
(取材・文・写真/北村 収)















