太いグリップはゴルファーから飛距離を奪う元凶にさえなっている
ゴルフスイングによって生まれるエネルギーは、最終的にクラブを通じてボールへと伝達されます。大多数のゴルファーは、飛距離アップや方向性の安定を求めて、ヘッドの性能やシャフトの剛性にばかり目を奪われています。
しかし、クラブのフィッティングにおいて最も冷酷で、かつ決定的な事実があります。人間がゴルフクラブと接している唯一の部分は、グリップ以外に存在しないという点です。100万円を超える高性能なパーツを組み合わせたクラブでさえ、人とクラブのインターフェースであるグリップに致命的なエラーがあれば、シャフトのしなりもヘッドの初速性能もすべて水泡に帰すことになります。逆に言えば、グリップを見直すだけで、スイングを一切変えることなく飛距離が20~40ヤード伸びることも夢ではありません。
ゴルフショップの店頭やメディアでは「グリップを太くすると手首の余計な動きが抑えられて方向性が安定する」とか「グリップは太い方が手のひらに馴染んで強く叩ける」といった説がまことしやかに囁かれています。でも、これらは物理的・解剖学的な観点から見ると完全なる誤りで、逆に多くのゴルファーから飛距離を奪う元凶にさえなっています。
とりわけ、今アメリカで主流となっているミッドサイズ(通常より一回り太いサイズ)のグリップを安易に導入するのは非常に危険で、基本的には絶対に合わないと考えていただいて結構です。
そもそも、日本人と欧米人とでは、骨格および手のサイズが根本的に異なります。日本の成人男性における一般的な手のサイズはグローブサイズで言うと21~24センチが大半で、26センチを超えるような大きな手の人はごくわずかです。にもかかわらず、欧米の規格サイズで作られた太いグリップを装着すれば、手元の操作性は著しく低下します。
最大の出力が得られるのは「握り潰せる細さ」のグリップ
では、人間が最も大きな力を発揮できる手の形とはどのようなものでしょうか? 答えは完全にコブシを握り込んだ状態、つまり握りコブシを作った時です。人間は握る対象の直径が細く、関節を使ってしっかり握り潰せるサイズであるほど、前腕の筋肉が効率よく連動し、強力な握力やホールド力を発揮できます。逆に、握る対象が太いほど、手のひらの中に“遊び”が生まれ、物理的なグリップ力(摩擦とホールド力の総和)が低下します。これは解剖学的な見地から見た原則です。
「太くて軟らかいグリップは、手のひらの密着率が上がるから良い」と錯覚している人が多いですが、それはただ「心地よく感じる」だけです。インパクトの強烈な衝撃に対して、手が滑らない、あるいはブレないように支える真の出力は、細いグリップをしっかりと握り潰している状態のほうが圧倒的に高くなるのです。
私には、グリップの太さがもたらす深刻な影響を証明する、切ない家族の実例があります。私の父親は、かつては周囲が驚くほどの圧倒的な飛距離を誇る素晴らしいゴルファーでした。しかし、しばらく離れて暮らし、久しぶりに一緒にラウンドしてみると、父の飛距離が全盛期からは見る影もないほどに落ち込んでいました。高齢になり、体力が衰えてしまったのだな、と私はしみじみと思い悲しみ、とても切ない気持ちになりました。
ところが父親の使っているクラブを見た瞬間、その原因が加齢によるものではないことに気づきました。そのドライバーには、ウィングリップの見たこともないほどめちゃくちゃ太いモデルが装着されていたのです。なぜそれを使っているのか聞いたところ「年をとって手が滑るような気がするから太い方が安定する」とのこと。それでどんどん太い仕様に変えていったというのです。
私はすぐさま父のグリップを標準的な細いラバーグリップに戻しました。すると次のラウンドで飛距離が40ヤードも戻ったのです。10年間、加齢によるエネルギーロスだと思い込んでいたものが、たった一本の細いグリップによって一瞬にして吹き飛びました。グリップを細くしたことでインパクト効率と腕のリリーススピードが劇的に向上したことによる当然の結果です。「自分にも心当たりがある」という人は大至急細いグリップに替えてください。

浦 大輔
うら・だいすけ
1985年生まれ。関西ジュニアをはじめアマチュアタイトルを多数獲得。ゴルフ部特待生として松山英樹と同じ明徳義塾高→東北福祉大の道を歩み数々のアマチュアタイトルを獲得したが諸事情により大学を中退。サラリーマンをしながらゴルフの物理学、スポーツ力学、ゴルフクラブのメカニズム、人体構造などの研究を進めて独自のゴルフ理論を確立。2016年には「ゴルフダイジェストドラコン選手権」で優勝(399ヤード)した。「√d Golf Academy」代表取締役兼ヘッドコーチ。YouTube『かっ飛びゴルフ塾』塾長。












