もっともやさしいKグラインド、オールマイティさならSグラインド
タイトリストのボーケイウェッジ「SM11」には、K、D、F、M、T、Sと6種類のソールグラインドがあり、以下のように振り分けて採用されています。
- ピッチングウェッジ(ロフト44、46、48度) F
- ギャップウェッジ(同50、52度) F
- サンドウェッジ(同54、56度) M、S、D、F
- ロブウェッジ(同58、60度) M、S、D、K、T
いずれにせよ、アベレージゴルファーにとって本当に効果があるのか、どれを選べばいいのか、というのは悩ましいところ。これは他のメーカーが展開しているウェッジでも同じことが言えます。とはいえ、決して無意味な選択肢ではなく、スイングの特性やライとの相性により明確なメリットとデメリットが存在します。今回は「SM11」を例に「やさしさ」の観点からソールグラインドを眺めてみます。
もっともやさしいと思われるソールは「Kグラインド」です。特徴はワイドソールとハイバウンスの組み合わせ。ソールが滑ることでヘッドが地面に刺さりにくく、ロフトの大きいウェッジと相性が抜群なため、58度や60度で採用されています。アプローチ全般、およびバンカーが苦手な人など、ウェッジにミスを補ってほしい人には最適な選択肢となります。
ただ、ソールの広さゆえにフェースを開いたり閉じたりして打つ、といった操作がしづらい。ベアグラウンドなど下が硬いライでは、バウンスが跳ね返って打ちにくい弱点もあります。なお、「Kグラインド」にはローバウンス(6度)もありますが、これを使うには高いレベルで安定した入射角が求められるのでアベレージゴルファーにはおすすめできません。
同様にハイバウンス(12度)で展開する「Dグラインド」は、「Kグラインド」よりもソールが削られているため、フェースを開きやすいメリットがあります。しかし、バウンスが強いことには変わりがないので、ボールが沈んでいるライや砂が硬いバンカーではバウンスが邪魔になり、かえってミスを引き起こすリスクがあります。
ロブウェッジ以外で採用されている「Fグラインド」は極めてスタンダードで、スクエアに構えて打つことを想定したソール形状といえます。余計な加工が施されていないため、アイアンの延長線上のクラブとして扱いやすくフルショットにも向いています。選択肢が絞られるぶんシンプルに打てるのは大きなメリットですが、テクニックを使ってフェースを開閉したいプレーヤーは操作しにくい点がデメリットとなります。
アベレージゴルファー向きとは言えませんが、より操作性を重視したモデルと位置付けられるのが「Mグラインド」です。ソール幅が狭くフェースを開きやすいため意図したアプローチが打ちやすい。状況により「こう打ちたい」という明確なイメージをもてる人にはもってこいです。バウンスが少ない(8度)ため自力でソールを滑らせる技術が求められるマニュアル車タイプですが、技術のあるゴルファーが楽しくアプローチできそうなグラインドだと思います。
K、D、Fの3つのグラインドは、目的が比較的明確な反面、使い道が限定されるところがありますが、そんな中、オールマイティで多くのゴルファーにおすすめできるのが「Sグラインド」です。ソール幅、ロフト(10度)ともに適度で、スクエアにも使えれば開いても使いやすい、FグラインドとMグラインドの中間に位置する非常に扱いやすいソールです。1本のウェッジで多彩なショットを打ちたい人の入り口としても適していて、この方向性でアプローチしたいと望むアベレージゴルファーに向きます。反面、対応できる選択肢が多すぎて打ち方が安定しなくなる可能性もあるため、その点では注意が必要です。
最後に「Tグラインド」ですが、こちらは完全なローバウンスモデル(4度)で、ソールも細いプロ仕様のウェッジです。芝がないライや、硬いベアグラウンドからでもボールを拾いやすいところはメリットですが、ミスヒットに対してはかなりシビア。入射角や打点が安定していないとザックリも出ればトップも出ます。
入射角とバウンスの関係については、スティープ(上めから鋭角)ならバウンス多め、シャロー(緩やか)なら少なめが向くとされています。基本この考え方でOKですが、個人的にはバウンス過多のアマチュアゴルファーが多い気がします。というのも、人工芝で練習することが圧倒的に多い日本のゴルファーは、上から打ち込む意識が薄いから。ターフを取ることに罪悪感がある人もいるので、そんな人にはローバウンスが合う可能性が高いからです。
ある意味、バウンスにはあまりとらわれなくてもいいということで、そうなるとソールグラインドによって左右される部分が意外と多いのではないかと考えられます。多かれ少なかれ、プロは自分でソールを削りますから、グラインドバリエーションは完全にアマチュア向け。自分が使っているウェッジのミスの傾向を見てカバーしてくれるグラインドを選ぶことには、それなりの意義があります。

吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・中央区日本橋浜町の「吉本巧ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。













