【2021】女子プロのドライバーショットは上達の宝庫だ!!<PART1>ランク上位選手のドライバーテク
飛んで、曲がらない選手たちの連続写真をじっくり見られる【保存版】
19年は渋野日向子ら「黄金世代」が台頭したが、20年は19歳の笹生優花、ミレニアム世代の古江彩佳、西村優菜ら若手ルーキー勢がランク上位に割って入った。フレッシュで強い選手たちのドライバーテクニックに注目。※賞金ランキングは2020年終了時点。
※2020年シーズンはドライバーの平均飛距離のデータとなるドライビングディスタンス部門は未公表。そのため2019年シーズンの同部門の上位選手をピックアップした。
GOLF TODAY本誌 No.584 18〜47ページより
〔強いスイングのヒント1〕左足を踏み込んだ位置で骨盤を高速ターン|笹生優花
2020年賞金ランキング1位笹生優花(9389万1170円)
①手元から上げていく感じのテークバック
②力感のある男性的なトップ
③背景の木を見ると骨盤の位置がズレていないことがわかる
④インパクトで適度なアッパー軌道を確保している
骨盤の位置がズレないから軸が傾かない
男性的でとてもダイナミックなスイングだと思います。笹生優花の一番の長所は、トップの位置から骨盤が左にスライドしないで、その場で回転させていること。切り返しで骨盤が左にスライドすると、背骨の角度が右に倒れてアッパー軌道になりすぎてます。手首も早くほどけやすいのですが、彼女にはそれがない。だから背骨の角度をしっかりキープでき、適正のアッパー軌道でボールをとらえられるのです。背景の木を見るとよくわかるでしょう。
〔強いスイングのヒント2〕インパクトで両足を蹴り上げてパワーアップ
①切り返しの瞬間、カラダを少し沈み込ませる
②インパクトの手前から両足の蹴り上げが始まる
③インパクトの瞬間、両足をジャンプ。強靭な下半身のパワーをボールに伝えている
④フォロースルーの振り抜き感がダイナミック
沈み込み→回転→蹴り上げの3つの動きを連動
笹生優花はインパクトの瞬間に両足をジャンプするように蹴り上げています。右カカトだけでなく左カカトも浮かせているのです。これは切り返し以降の「カラダを沈み込ませて、回転して、蹴り上げる」という3つの動きのシークエンスによるもの。
ジャンプする動きを本人はそんなに意識していないと思いますが、小さい頃からの日々の鍛錬で身についたのでしょう。骨盤の高速回転と連動して両足を蹴り上げ、大きなパワーを生み出しているスイングはまるでスプリングのようで、豹のようなしなやかさを感じさせます。ルーキーながら国内ツアーでナンバーワンの飛距離を誇るのも十分に頷けるスイングです。
[使用ドライバー]テーラーメイド M5
笹生優花 さそう・ゆうか(ICTSI)
2001年6月20日生まれ、東京都出身。166㎝。2020年シーズンに彗星のごとく登場。圧倒的な飛距離を武器にNEC軽井沢72ゴルフトーナメント、ニトリレディスで2大会連続優勝を果たすなどの大活躍で賞金ランク1位に輝いた。
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〔強いスイングのヒント3〕右ヒジでインパクト球を押し込む|古江彩佳
2020年賞金ランキング2位古江彩佳(9050万2992円)
①アドレスの前傾姿勢のバランスがとてもいい
②ダウンスイングで右ヒジが体側にきれいに密着する
③右ヒジでボールを目標に押し込むように右腕を伸ばしていく
④クラブを高く振り抜いてドローを打っている
ダウンスイングで右ヒジが体側につくのがベスト
古江彩佳のアドレスはややアイアン型ですが、バランスの良さが見られます。スイングの長所は右ヒジのポジションです。切り返しで右ヒジが背中側に下がったり、カラダから離れて前に出たりしないで右ワキの体側にきれいに密着しています。右ヒジと右腰が一体となってカラダを回転しているから、ボールを目標に真っすぐ押し込むようなぶ厚いインパクトが作れている点に注目。スクエアフェースでボールをとらえるカギは右ヒジにあるのです。
〔強いスイングのヒント4〕ためたパワーをフォロースルーで一気に解き放つ|古江彩佳
①下半身をしっかり踏ん張って上体を捻転
②左肩を左斜め後方に浮かせてインサイドアウトの軌道を作る
構えたときの右手首の角度をフォローでリリース
右ヒジを体側につけてダウンスイングする動きをロングヒッターの人がやると、クラブがインサイドから低く下りすぎてボールが左右に散らばりやすいリスクがあります。かといって左肩を後ろに引くとアウトサイドインの軌道になってしまう。古江は左肩を斜め後方に浮かせながら軽いインサイドアウトに振り抜くことで球筋をうまくコントロールしています。
アドレスで適度に曲がった右手首の角度をフォロースルーで一気にリリースしてヘッドを走らせている点も参考にするといいでしょう。
[使用ドライバー]ブリヂストン TOUR B XD-3
古江彩佳 ふるえ・あやか(フリー)
2000年5月27日生まれ、兵庫県出身。153㎝。ツアーデビューとなった2020年はデサントレディース東海クラシック、伊藤園レディス、大王製紙エリエールレディスで優勝。フェアウェイキープ率部門4位(75.6158%)と正確性も光った。
〔強いスイングのヒント5〕ワイドスタンスのメリットを最大限に活用して飛ばす|原英莉花
2020年賞金ランキング3位原英莉花(7072万2208円)
①両足を大きく広げたワイドスタンス
②バックスイングで体重を右足に乗せる
③切り返しで左足をタテに踏み込んでいる
④左足の踏み込みでヨコ移動のパワーに転換したインパクト
⑤カラダの回転量が大きいフィニッシュ
長い手足の体型的長所を生かしたスイング
長身で手足が長い体型を最大限に生かしたダイナミックなスイングです。スタンスが広いとカラダの回転が制限されやすいのですが、原英莉花はバックスイングで体重を右足に乗せて、切り返しでは左足をタテにしっかりと踏み込むことで、ヨコの動きを大きなパワーに転換しています。
トップの力感とダウンスイングの右足の蹴りも、彼女の長所です。下半身のパワーをうまく使っているけれどスタンスが広いからタテの動きは少ない。むしろヨコの動きに主眼を置いて飛距離を出したいタイプのスイングといえます。
〔強いスイングのヒント6〕クラブと腕、胸板が連動するからインパクトが正確|原英莉花
①腕とクラブを胸板の前にキープしてバックスイング
②インパクトでも腕とクラブがカラダの真正面
③アドレスの前傾角度がフィニッシュまで変わらない
スイング中、腕とクラブがカラダの前から外れない
手足の長い人はダウンスイングでクラブが振り遅れたり、インパクトで手を返しすぎたりして、インパクトのタイミングがズレやすいマイナス要素があります。長尺ドライバーを使うと飛ばせるけれど、方向が安定しにくいのと同じ理屈です。
その点、原英莉花のスイングは腕とクラブを胸板の正面にキープしたまま、胸板の運動量を増やしています。スイング中、手元が胸板に対して一度もズレていない。それが飛んで曲がらないドライバーショットを実現しているポイントです。
[使用ドライバー]ミズノ ST200X
原 英莉花 はら・えりか(日本通運)
1999年2月15日生まれ、神奈川県出身。173㎝。2019年のリゾートトラストレディスでツアー初優勝。20年は日本女子オープン、JLPGAツアー選手権リコー杯と2つの公式戦を制覇した。2019年ドライビングディスタンス部門4位(253.33Y)。
〔強いスイングのヒント7〕コックを自然にまかせて使うナチュラルスイング|小祝さくら
2020年賞金ランキング4位小祝さくら(6288万6208円)
①ノーコックに見えるテークバック
②ダウンスイングで手首を柔軟に使っている
③笹生優花の「剛」に対して「柔」のスイング
コックを抑えても手首は柔らかくしておくことが大事
小祝さくらのスイングはとてもラクに振っているように見えて、飛距離がよく出ます。特徴としてはバックスイング、トップ、ダウンスイング、インパクトまで手首を結構浅く使っていること。コッキングが少ないのですが、手首を固めてノーコックで振っているわけでもない。
自分としてはコックを使う意識はないけれど、ナチュラルにコックを使うという感じです。グリップをほどよくソフトに握っておいて、クラブヘッドのスピードで手首が勝手に稼働するという意識でスイングしているのでしょう。
〔強いスイングのヒント8〕ハンマー投げのイメージでヘッドの遠心力を引き出す|小祝さくら
①腕がカラダからなるべく離れないようにダウンスイング
②ボールを打ち抜く瞬間に腕をピーンと伸ばす
③フォローはハンマーを遠くに放り投げるイメージ
インパクトまでは腕のゆとりをキープしておく
小祝さくらのスイングは自分のカラダの回転でクラブを操作していて、ハンマー投げに近いイメージです。
ハンマーを投げるときだって、投げる前の回転動作では手元がカラダから遠くなりすぎないように腕を軽く縮めますよね。そしてハンマーをリリースする瞬間に腕を一気に伸ばす。
小祝のダウンスイングも腕が軽く曲がって腕にゆとりがあり、リリース後はヘッドの遠心力にまかせて振り抜いています。遠心力を最大に生かしたスイングで効率が抜群にいい。まだ20歳そこそこですが、息の長いプレーヤーになると思います。
[使用ドライバー]スリクソン Z785
小祝さくら こいわい・さくら(ニトリ)
1998年4月15日生まれ、北海道出身。158㎝。2019年にサマンサタバサレディスでツアー初優勝。20年はゴルフ5レディス、ニトリレディス2位、日本女子オープン2位など飛躍の一年となった。ドライバーの安定性はピカイチ。
〔強いスイングのヒント9〕カラダの左サイドを素早く回して〝パワーフェード〟を打つ|渡邉彩香
2020年賞金ランキング5位渡邉彩香(6025万9965円)
①カラダの左サイドの回転でクラブを引っ張り下ろす
②ターゲットの左へとクラブをしっかり振り抜く
フェードヒッターで大事なのはカラダの左サイドを回すこと
元々フェードだったのをドローに変えて長いスランプに陥り、フェードに戻して復活した渡邉彩香です。そこにたどり着くまでの苦労は、並大抵でなかったと察します。
フェードヒッターの場合は、カラダの左サイドを素早く回転させるのが勝負。ダウンスイングで左肩を浮かせず、目標に対して左へと引く感覚です。左腰と左ワキ、左肩を思い切って左にターンすれば、ボールがよくつかまった飛ばせるフェードが打てるのです。
[使用ドライバー]ブリヂストン TOUR B J015
渡邉彩香 わたなべ・あやか (大東建託)
1993年9月19日生まれ、静岡県出身。172㎝。2020年はアース・モンダミンカップで5年振りにツアー4勝目を飾り、高らかに復活宣言。屈指のロングヒッターでも知られる。
〔強いスイングのヒント10〕両ワキを締めてカラダの回転主体で打つ|永峰咲希
2020年賞金ランキング6位永峰咲希(4987万1162円)
①カラダの左サイドの回転でクラブを引っ張り下ろす
カラダの回転が主体だから手元の減速が少ない
永峰咲希のスイングの長所は両ワキが締まっていて、カラダと腕を連動させているところ。
両ワキが開くとカラダと腕の動きがバラバラになりやすいのですが、このように両ワキの締まり感覚をキープすれば、手元が減速しないでクラブヘッドを加速できるし、スイングの安定性が高いです。
[使用ドライバー]テーラーメイド シム マックス ドライバー
永峰咲希 ながみね・さき(ニトリ)
1985年4月28日生まれ。宮崎県出身。158㎝。2020年は日本女子プロを制し、18年のフジサンケイレディスに続くツアー2勝目を飾った。
〔強いスイングのヒント11〕パターのフルショット版のスイング|申ジエ
2020年賞金ランキング8位申ジエ(4755万3250円)
①カラダの上下動も少ないからショットの正確性が高い
パットストロークの延長だからスイングが緻密
ツアー屈指のショットメーカーでも知られる申ジエは、リストワークが少ないのが一番の特徴。
パターを持って50ヤード、100ヤード、150ヤードと振り幅をどんどん大きくしていったかのようなスイングです。ダウンブローでもアッパーブローでもない適正の入射角が正確なドライバーの秘訣だと思います。
[使用ドライバー]テーラーメイド シム マックス ドライバー
申ジエ しん・じえ(スリーボンド)
1988年4月28日生まれ、韓国出身。155㎝。元世界ランク1位の実力者。2020年はTOTOレディス、富士通レディスで優勝。ツアー通算24勝。
〔強いスイングのヒント12〕カラダを開かないで左足を踏み込んでいく|西村優菜
2020年賞金ランキング7位西村優菜(4796万4000円)
①左足を踏み込み、胸を開かないでダウンスイング
②上体のタメを解放して大きな円弧を描いている
ピッチャーの踏み込みを連想させるスイング
西村優菜のスイングも笹生優花と同じような下半身使いをしています。身長や体型はまったく違いますが、カラダの「沈み込み→回転→蹴り」の3つの動きの連動がよく似ています。
野球の右投げのピッチャーのように、肩や腰、胸などを開かないで左足を踏み込んでいるところに注目してください。上体のタメがないとクラブをインサイドから下ろせないためで、これはドローヒッターの特徴です。フェードヒッターの渡邉彩香とはそこが違うのです。
[使用ドライバー]キャロウェイ マーベリック サブゼロ
西村優菜 にしむら・ゆな(フリー)
2000年8月4日生まれ、大阪府出身。150㎝。ルーキーイヤーの2020年、序盤はつまずいたものの後半に調子を上げて樋口久子・三菱電機レディスでうれしいツアー初優勝。
〔強いスイングのヒント13〕カラダのトップから右サイドが効率よく動き続ける|鈴木愛
2020年賞金ランキング9位鈴木愛(3677万7182円)
①バックスイングで体重を右足に乗せるヨコの動きが見られる
②カラダを右に倒しすぎないで適正のアッパー軌道で打つ
カラダの右サイドを急がせないでインから振り下ろす
クラブを適正の角度で振り下ろし、ボールに対してインサイドからアタックしているなという印象のスイングです。ダウンスイングでカラダの右サイドをどこも止めないで、右腰、右ヒジ、右肩を一体化させて滞りなくクラブを振り下ろしています。
切り返しで右肩が前に突っ込むわけでもなく、右肩が下がるわけでもない。ボールに向かって右サイドがスムーズに動き続けているところに、ショットの正確性を生む秘訣があるのです。
[使用ドライバー]ピン G425 LST
鈴木 愛 すずき・あい (セールスフォース)
1994年5月9日生まれ、徳島県出身。155㎝。2017年と19年の賞金女王。20年は未勝利に終わったが、21年シーズンの巻き返しを誓う。ツアー通算16勝の実績も十分。
〔強いスイングのヒント14〕重心を低い位置にキープしてスイング|上田桃子
2020年賞金ランキング15位上田桃子(2092万0302円)
①重心が低く肩の力が抜けた理想的なアドレス
②低重心のままで上体をしっかり捻る
③切り返しで下半身を一瞬低く踏み込む
④下半身の踏ん張りが力強いインパクトを生む
重心が低くて、骨盤や肩甲骨のポジションがとてもいいアドレスです。カラダが緊張すると肩甲骨が上がって硬くなり、肩の稼働が制限されて腕がスムーズに振れません。上田桃子のように重心を低くキープし、上体をリラックスさせてスイングするのがよどみなく振るコツです。
[使用ドライバー]キャロウェイ GBBエピックスター
上田桃子 うえだ・ももこ(フリー)
1986年6月15日生まれ、熊本県出身。161㎝。2007年に5勝を上げて賞金女王。20年は日本女子オープン3位タイ。ツアー通算14勝。
〔強いスイングのヒント15〕スイング中、頚椎の位置を徹底キープ|三ヶ島かな
2020年賞金ランキング18位三ヶ島かな(2347万6064円)
①バックスイング中、首のツケ根の位置がまったく変わらない
②写真の背景を見ると頚椎のポジションのキープがわかる
効率がよくて、とてもバランスがいいと思います。実際のスイングを見ると軸が動いているようでも、連続写真で見れば構えたときの頚椎のポジション、首のツケ根がほとんど動いていないことが一目瞭然。軸の安定が正確性の高いインパクトを生み出すのです。
[使用ドライバー]ブリヂストン TOUR B JGR
三ヶ島かな みかしま・かな(ランテック)
1996年7月13日生まれ、福岡県出身。164㎝。2020年はニトリレディス3位タイ、JLPGAツアー選手権リコー杯6位タイなど好成績を残した。
◎スイング解説 石井 忍
いしい ・ しのぶ
1974年8月27日生まれ、千葉県出身。日大ゴルフ部を経て98年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くのツアープロを指導。千葉、赤坂、神保町で『エースゴルフクラブ』を主宰し、アマチュアのレッスンも行なっている。
取材トーナメント/NEC軽井沢72ゴルフトーナメント、ニトリレディス、TOTOジャパンクラシック
【2021】女子プロのドライバーショットは上達の宝庫だ!!
●<PART1>ランク上位選手のドライバーテク
●<PART2>飛ばせるドライバーのヒント
●<PART3>曲がらないドライバーの ヒント