\驚異の19歳・笹生優花/規格外テクニックを大解剖
ルーキーイヤーでツアー2連勝その新人離れした技術とスケールを分析
国内女子ツアー再開初戦のアースモンダミンで5位となるや、2、3戦目で連勝。ド派手なツアーデビューを飾った笹生優花。その規格外のスケールに度肝を抜かれた読者も多いはず。そこでここでは、女子ゴルフ界のレジェンドで東京五輪女子ゴルフ日本代表チームのコーチを務める服部道子に驚異の19歳、笹生のテクニックを解説してもらった。
笹生優花
さそう・ゆうか 2001年6月20日生まれ。166㎝、63㎏。東京都出身。ICTSI所属。8歳でゴルフをはじめ、アマチュア時代は母親の母国フィリピンで大活躍。昨年、30.8倍の難関を突破してプロ入会するや、ルーキーイヤーの今季ツアーで2連勝をマーク。賞金ランクはもちろん、メルセデスランキング、平均ストロークでトップを走る。
解説 : 服部道子
はっとり・みちこ 1968年生まれ、愛知県出身。日本女子オープン2勝、日本女子プロ1勝を含むツアー通算18勝。98年には年間5勝を挙げて賞金女王に輝いた。現在は一児の母として子育てに奮闘する傍らトーナメントの解説やコラムも執筆。東京五輪ゴルフ日本代表女子コーチも務める。
[ドライバー]ベタ足トップで強くて柔らかい筋肉を十二分に使い切る
まず注目すべきはパワーと柔軟性を兼ね備えた身体能力。ベタ足トップで蓄積したパワーをインパクトで一気に爆発させる。
アドレスのままの下半身で打てるからショットの再現性が高い
270ヤード以上飛ばせるのはスイングの完成度によるもの
見た目はガッシリでもハグすると柔らかい。なで肩で力みがなく、それでいてしっかり重心が下がったアドレスが、そんな体の持ち主であることを想像させます。低重心を保ち、ベタ足でトップまで行けるのを見ると関節の可動域も広いようです。
その効果もあってスイング中に下半身が大きく動きません。アドレスのままの下半身でインパクトできるからショットの再現性が高い。さらに、早めにコックを入れて体幹でねじるので、いつも同じトップに決まってパワーロスがありません。270ヤード以上飛ばせるのは地力もさることながら、スイングの完成度の高さに裏打ちされている部分が大きいと考えられます。
[ドライバー]ジャンピングを抑えて飛距離とコントロールを両立
昨今の飛ばし屋の共通点である「タメ」と「地面反力」。笹生も使うが後者は抑えめ。スイングにはまだ余力あり!?
インパクトでジャンプする世界の飛ばし屋。あえて抑える笹生
アドレスとインパクト付近でクラブのライ角が一致
300ヤードに迫る飛ばし屋に共通するのは、ダウンスイングでしっかりタメができること。彼女も例外ではなく、そのタイミングで腰は左に回っても上体は正面を向いています。
また、地面反力を使うことが注目されている昨今、飛ばし屋の多くがインパクトでジャンプしながら打つ傾向もあります。でも、彼女はそれほどジャンプしていません。にもかかわらず飛ばせるのは、まだ余力がある証拠。ジャンプすると頭がブレて安定感を損なう一面もあるので、ある程度パワーをコントロールしているかもしれません。
いずれにしても前傾を崩すことなくシャローアウトしてきますから、インパクトゾーンが長い。アドレスとインパクト付近でクラブのライ角がきれいに一致している印象があります。
[アイアン]手と体の距離を近づけ背筋主体で重いボールを打つ
ドライバーもアイアンも基本的にスイングは同じ。パーオン率1位の精度は思ったキャリーを打てることによるものだ。
背筋主体で振るから手が体の近くを通る
スイングの主体は背筋。手や腕、そしてクラブは後からついてくるので手が安定して体の近くを通る。
腰のキレで素早く回転してヘッドスピードを上げる
体主体で振るからクラブが長く体の正面にキープされている。
タテ振りで入射角が変わらないため常に狙ったキャリーを打てる
アイアンの第一印象として飛び込んでくるのは、手と体の距離が近いこと。これによってタテに振ることができるので、ヘッドが上から鋭角に入ります。深いラフでも対応できて、止まりやすい高いボールが打てるでしょう。手先や腕といった枝葉末節は結果的についてくるだけで、体幹、おもに背筋を使って打てている証左と言えます。
おまけに頭、ヒザ、前傾角度など、スイングの要となるパーツもほぼ動きません。その場でコイルのように体幹を捻って戻すだけ。タテ振りで入射角が変わらないから常に狙ったキャリーを打てます。
また、ドライバーの解説でも触れたように、終始下半身が安定していますから、どんなライにも対応できる。これも大きな強みです。
[アイアン]高いボールでピンをデッドに攻める
笹生のショットの特徴の一つがハイボール。長めの番手でも高い球が打てるから、距離があってもピンをデッドに狙える。
手を返さず体の回転で高いフィニッシュをつくる
フェースローテーションを抑え体の回転でボールをつかまえる
アイアンショットに見られるもう一つの特徴は、手が高い位置でフィニッシュを迎えていることです。
アイアンの場合、ダウンスイングでヘッドがやや上から入ることもあり、このように振ると高い球が打てます。上から攻められるとボールが止まりやすいので、ピンをデッドに狙えます。この特徴がパーオン率の高さにつながっていると思います。海外で戦うことを想定してのセットアップかもしれません。
加えて、基本的に手首は使いません。このページのフォローの写真を見るとよくわかります。フェースローテーションを抑え、体の回転でボールをつかまえますから、ボールの回転も安定する。この感じでフェアウェイから打つ限りグリーンは外さないでしょう。
[ショートゲーム]大きな筋肉を使って打つからプレッシャーに強い!
アプローチ、パットもショットの流れを踏襲。すなわち、体の大きな筋肉を使ってクラブを操作する。新人離れした引き出しの多さも強さの秘密だ。
どんな状況でも重心がブレない
このバンカーショットはプロでも難しいライ。技術的には重心を下げ、下半身を固定した状態で、早めにコックを使いますが、ヘッドの入れ方や抜き方など、クリエイティビティがないと打てません。日本国内でプレーしているだけでは難しく、彼女のように早くから海外でプレーしているからこそ打てる。そういう意味では、若いけれどかなり多くの引き出しをもっているのではないでしょうか。
パットは浅めに読んで強めに打つ
重く転がりのいいボールだから失速しない
浅めに読んだラインに向かって強めに打つのが基本スタイルだと思います。メインに使っているのは背筋を中心とした筋肉と肩。下半身を動かさず、左右対称のストロークからフェースをボールにくっつけるような感じで打つ。こうするとボールがきれいにタテ回転し、いわゆる重くて転がるボールになるため、多少バンピーなグリーンでもあまり影響されることなくカップまで届きます。
パッティングフォームは極めてオーソドックス
取材トーナメント/NEC軽井沢72ゴルフトーナメント、ニトリレディスゴルフトーナメント
GOLF TODAY本誌 No.581 158〜169ページより
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