“厚いインパクト”に深いターンは要らない

必要十分なターンを得られる「右足スクエア」

両足のツマ先を開く、いわゆる「ハの字スタンス」は現代でも主流の1つ。ホーガン流の、左ツマ先は開き、右足はスクエアに構えるスタンスよりも、バックスイングのターンが深くなりやすい。身体が硬い人や、シニア向けにメリットがあると言われている。

森プロ「ツマ先を開くと確かに身体は回りやすくなりますが、バックスイングで必要以上に回すのは、安定感を損ねるだけです」と森プロ。

身体が硬くても、股関節を正しく使えば、右足スクエアでも腰は40度以上ターンする。背骨自体は10度程度しかネジれないが、肩甲骨がスライドすることで、肩は90度前後回転するという。

森プロ「右ツマ先を開いて回転量を増やして、トップを深くすることでクラブの助走距離を伸ばしたとしても、切り返しでのロスが増えるだけ。ミート率にはマイナスです。自動車事故後のホーガンも、それに気づいていたと思います」

「回転しやすい」が正解ではない

「ハの字」時代のホーガンはオーバースイングだった

自動車事故前のホーガンは、広いスタンスながらターンも大きく、オーバースイングだった。
飛距離も出ていたが、フック病に悩まされていた。

軸回転しやすい「ハの字」スタンス

左右の母趾球とカカトに対称的に体重移動することで、身体の中心を軸にスムーズに回転しやすくなる。ただし、クラブの動きの慣性に引っ張られて、動きすぎてしまうことも。

「右足スクエア」の据え方がボールへの圧を促す

POINT(1)右足は方向性のガイドラインに

森プロ「ホーガンは、アイアンでは元から右足にスクエア感がありました。自動車事故後、深いバックスイングよりミート率重視でドライバーにも採用したところ、ショット精度が増した。

ターン補助より、目標方向への押し込み感のほうがプラスになると確信したんだと思います」

POINT(2)左腰の前後の動きがターンを促す

森プロ「右足スクエアで内側に踏み込むと、右脚から首にかけて右軸ができる感覚になります。左腰を前に出すことで捻転を感じ、ダウンではそれを解放。

ホーガンは著書『モダン・ゴルフ』で、左腰に付けたゴムヒモが伸縮するイメージで解説しています」

左腰ターンの軸を作る「右足スクエア」

右足は内側に圧をかけ、目標方向に押し込む感覚。左足はバックスイングで母趾球に体重移動。

ダウンでカカトを強く踏み込み、左腰の鋭いターンを促す。左腰が後方に回り込んだ時点で、右サイドが押し込まれていく。

スイング中の右足が粘るポイントとは?

【右足の上手な据え方】トップまでブレない右脚の位置をイメージ

“左右”ではなく“前後”の回転を支える

森プロ「ターンというと左右の動きで考えがちですが、クラブを前後に振ると考えると、支える軸感覚も変わってきます。ホーガンの場合、クラブが背中側に遠ざかるぶん、左サイドがボール方向に出て、バランスを取っていました。アドレス時より前傾が深く見えるのはこのためです」

右脚に軸感覚を持たせる

「両ヒザは正面」も大事なポイント

森プロ「左ツマ先を開いていると、左ヒザも開きがちですが、ホーガンは内側に軽く絞って正面に向けていました。バックスイングで下げながら左腰のターンを促し、ダウンでしっかり踏み込むためには非常に有効です」

「右脚にクラブを立てかける」真意

森プロ「ホーガンは『モダン・ゴルフ』で、クラブを右脚に立てかけて、バックスイングでその角度が変わらないようチェックすることを提唱しています。右腰を引く、右ヒザを割るような動きは、右脚の軸感覚とは相容れないわけです」

左腰のターンの後に右腰は押し込まれる

左カカト外側に乗ると左腰を一気に引ける

森プロ「地面反力を生かそうと、左脚を伸ばしてインパクトするイメージが流行っていますが、これでは“左のカベ”ができて、左腰のターンが詰まります。ジョン・ラームのように、思い切って左足をめくるように、左カカト外側に踏み込んでください。すると、左腰が鋭くターンします」

左足を下ではなく後ろに蹴ってみる

森プロ「最近、体重移動や地面反力を意識して、ダウンで左足を下に踏み込む人が目立ちますが、ホーガン流で左腰ターンを促すなら、左足を後ろに蹴るドリルがオススメ。ヘッドのリリースのタイミングで蹴ってみると、右脚の軸感覚がつかめます」

方向精度を上げる右足で右サイドを押し込む感覚

ゴルファーが方向性を高める方法として、アドレスを整えるレッスンは多い。

森プロ「ですが、足場が平らなことが少ないコースでは、目線から足元までスクエアに構えることはできません。だから、いくつか拠り所となるポイントを探すべきです」

ホーガン流の「右足スクエア」も、その1つになるという。

森プロ「右手のサイドスロー感覚でヘッドをリリースしていくホーガンの場合、右脚に軸感覚を持つことがポイントだったと思います。よく、インパクトでも右カカトが上がらない“ベタ足”のスインガーがいますが、総じてショット精度が高い。右ヒジの支点感覚で、左サイドをかわしつつ、たぐるようにヘッドを出せるタイプも多いようです。

スイングのバランスを押さえるポイントとして“スクエアな右足内側に圧をかける”という方法は、非常に有効だと思います」

Ben Hogan
ベン・ホーガン(1912~1997)

アメリカ・テキサス州出身。身長173cm、体重68kg。ツアー通算64勝。メジャー3勝後の1949年に自動車事故で瀕死の重傷を負うが、翌年に復帰。以後、メジャーでは1953年の3冠を含む6勝を加え、グランドスラマーに。1948年に『パワー・ゴルフ』、1957年にレッスンのバイブルと呼ばれる『モダン・ゴルフ』を著し、現代でもそのスイング理論は多くのゴルファーに影響を与え続けている。

ホーガンアナリスト 森 守洋

ベン・ホーガン(1912~1997)を手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。


【アイアンが際立つ!強いアレンジの作り方】
←スイング軸を安定させるには頭の位置を固定するのではなく、右脚を“左腰の回転軸”とイメージする
クラブは“上”ではなく背中側に振り上げるのがベン・ホーガン流 それってどうやるの?何がいいの?→

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