スイング軸を安定させるには頭の位置を固定するのではなく、右脚を“左腰の回転軸”とイメージする
ベン・ホーガンを先生に!森プロが解説する『アイアンが際立つ!強いアレンジの作り方』【第15回】
スイングを安定させるのは軸に対する意識が肝心。ホーガンの場合は“右脚”に注目すべき、と森プロ。ビハインド・ザ・ボールで叩くのに、スイングを支えるための右脚での踏ん張り感は非常に有効。右脚の使い方を改めて考えてみよう。
GOLF TODAY本誌 No.616 73〜77ページより
イラスト/久我修一 取材協力/東京ゴルフスタジオ
取材・構成・文/戸川 景 撮影/圓岡紀夫
叩けるターンの軸は右脚の支えが作る
ホーガンの安定感の要は“おとなしい右腰”
森プロ「オンプレーンスイングの元祖と言えるホーガンは、オーバースイングでも軸がブレず、鋭いターンで長打を放っていました。
スイング軸の安定というと、頭の位置を固定するようなレッスンが多いようですが、実際に効果的なのは下半身の動きでバランスを取ることです」と森プロ。ホーガンの場合、おとなしい右脚、右腰の動きがポイントになっているという。
森プロ「両ヒザを軽く絞って腰のターンを促す状態で構えつつ、右足ツマ先を開かずに、基本的に右脚を動かさずにバックスイング。手元とクラブが背中側に上がるのに対して、左腰、左サイドが胸側に回り込んでバランスが取れます。だからダウンでは左腰からスタートする感覚と、右手のサイドスロー感覚で軸回転の動きになるのです」
右脚を左腰の回転軸とイメージすると、右腰は突き出ることなく、おとなしい動きになるという。
右手で叩くなら右足は蹴らない
森プロ「右手主体でインから叩こうとするほど、右肩や右腰が突っ込むのはNG。左サイドをかわしてヘッドの通り道が作れるターンを考えると、右ヒザが突き出て右サイドが崩れるような右足の蹴りは使わないほうがいい」
右脚が流れるほどの体重移動もいらない。ヘッドのリリースとターンの動きを合わせていく。
右ヒザのキックインは左腰が軸になる動き。右サイドが崩れ、右手で叩く動きとは相性が悪い。
サイドスローで叩くから右軸+左開きターンに
なぜホーガンは「ボール投げ」を提唱したのか?
森プロ「ホーガンは両手で強く叩くイメージをつかむドリルとして、バスケットボールを目標方向に投げることを提唱していましたが、これも右サイドを突っ込ませず、左サイドを開いてターンしないと上手くボールをリリースできません」
左サイドが開き切った後に右腰と右脚が出ていく
森プロ「スイング軸は体の中心を通るイメージで構いませんが、右半身の動きが左半身よりもおとなしい、とイメージすると、右脚から首にかけて右軸ができる感覚になります。ダウンで左サイドを開き、右手のスナップで叩くイメージを加えると、ホーガンのような直立するフィニッシュに近づきます」
スイング中、支え続ける右脚の使い方とは?
【右脚で支えるヒント】出力よりバランスとタイミングが大事
(1)右ヒジをたたむ
右ヒジをたたむことでクラブが背中側に上がりやすくなり、左サイドの動きとバランスが取れる。
(2)左ヒザを緩める
張りのある右脚に対し、左ヒザを脱力して左腰のターンを促すと、右脚はほぼ動かず、右股関節がはまって腰の回りすぎが防げる。
(3)右足内側に踏み込む
左腰のターンでダウンをスタートしたら右ヒジのタックインとともに右足内側に加重。右腰をスライドさせるのではなく、その場で踏ん張るイメージ。
右ヒザは開かない、折らない
森プロ「ホーガンは“中腰の姿勢”を強調。直立に近く、両ヒザの向きと弾力にこだわったのは、スムーズなターンを邪魔しない脚の使い方を考えたからでしょう」
「左足カカト内側線上」よりも「叩ける右足の位置」が先
森プロ「ボール位置を左足カカト内側線上に固定する方式がホーガン流。ですが、視点を変えてみると右足とボールの間隔を決めてから、そのボール位置に対して左足の位置を決めていったように思います。
右手のスナップ動作で、ボールの後ろを叩くには、ボール位置は左寄りがいい。スクエアな右足とクラブフェースで目標をとらえ、左足はターンの動きを補いやすい位置に据える、という順序だったと思います」
右足の据え方で叩ける右手の位置が決まる
ボールに対して右手でヘッドをあてがい、右足の位置を決める。ボール位置よりは左足を外側に置けばバランスの良いスタンスになる。
自動車事故以降よりシンプルなフットワークに
森プロ「右脚で軸を支え、左サイドを大きくターンさせるスイングがホーガン流で、ロングヒッターとして知られていました。ですが、ダウンで右足の踏み込みが左腰のターンより先行することも多く、これもフック病の原因の1つだったと思われます」
バックスイングで右に流れないように踏ん張っていると、ダウンでは腰を左に押し込みやすくなるもの。すると、ダウンで手元が下がりすぎ、インからあおるフック打ちになってしまう。
森プロ「ホーガンは自動車事故以降、スイングがコンパクトに。左サイドの動く量が適正になり、右足の踏み込みすぎもなくなり、安定感が増したにもかかわらず、飛距離はハイレベル。つまり、スナップ動作を生かして叩くのに必要十分なターンには“おとなしい右腰”のほうが有効だった。脚で出力ではなく、バランスや使い方のタイミングのほうが大切です」
Ben Hogan
ベン・ホーガン(1912~1997)
アメリカ・テキサス州出身。身長173cm、体重68kg。ツアー通算64勝。メジャー3勝後の1949年に自動車事故で瀕死の重傷を負うが、翌年に復帰。以後、メジャーでは1953年の3冠を含む6勝を加え、グランドスラマーに。1948年に『パワー・ゴルフ』、1957年にレッスンのバイブルと呼ばれる『モダン・ゴルフ』を著し、現代でもそのスイング理論は多くのゴルファーに影響を与え続けている。
ホーガンアナリスト 森 守洋
ベン・ホーガン(1912~1997)を手本としたダウンブローの達人・陳清波に師事。現在もホーガンの技術研究に余念がない。
【アイアンが際立つ!強いアレンジの作り方】
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