バンカーショットの打ち方の基本とオススメ練習法
人気プロコーチ・大西翔太がわかりやすく解説!
バンカーから1回で出せず、いつも大叩き。「バンカーさえなければ……」と嘆くゴルファーは多いが、「脱出しやすい構え方さえマスターすれば、だれでもやさしく打てるようになりますよ」と大西翔太コーチはいう。バンカーの打ち方の基本を頭にインプットして、バンカー恐怖症を克服しよう。
バンカーショットの打ち方の基本とオススメ練習法
バンカーショットの打ち方の基本とは
バンカーショットにはグリーン周りのガードバンカーから打つショットと、フェアウエイの端に点在するクロスバンカーからのショットがあります。ここではグリーン周りからのバンカーショットについて解説しましょう。クロスバンカーからは距離を出す必要があるので、基本的にはボールをクリーンにヒットしますが、ピンまで30ヤード以内のガードバンカーからのショットはボールを直接打ちません。ボールの少し手前にクラブヘッドを入れて、砂の爆発力を引き出してボールを飛ばすのです。これがよくいわれる「エクスプロージョンショット」です。
ボールの手前をダフらせるのだから、バンカーショットは特殊な打ち方が要求されると思いがちですが、決してそんなことはありません。スイング自体は通常のショットと同じでOKです。難しく考えるほどスイングが複雑になってしまいますから、シンプルに考えるようにしましょう。
またバンカーショットが苦手な人たちは、わざわざ脱出の確率を下げてしまうような構えをしています。最初にバンカーショットがやさしく打てるようになるアドレスのポイントを整理しましょう。
・クラブを短めに持ち、腰を落として重心を低くして構える
・フェースを開き、ボールを中心にして自分のカラダを反時計回りに移動してオープンに構える
バンカーは足場が安定しにくいですから、シューズを砂に埋めるつもりで立ち、両ヒザを通常より深く曲げて腰を落としましょう。下半身を安定させておけば、スイング中も下半身がブレず、クラブヘッドをボールの手前に正確に入れやすくなります。クラブは通常のショットと同じ長さに持っても構いませんが、砂の中に深くもぐりこませすぎないために少し短く持つのがオススメです。
バンカーショットではサンドウェッジを使って打つのが基本ですが、フェースを開くのは砂の爆発力を引き出しやすくするためです。
アドレスを作る手順としては、最初にフェースはスクエア、ボールを左カカト内側の延長線上よりもボール1個分内側にセットし、シャフトを少し右に回してフェースをピンの右に向けます。そのまま打つとボールがピンの右に飛んでしまいますから、フェースがピンの方を指すまでカラダを左に向け直します。
このときの重要なポイントはボールを中心にして自分のカラダを反時計回りに円を描くように移動すること。他人からはボールの位置がかなり左に見えますが、自分から見れば最初のボールの位置と一緒です。
初心者のうちはフェースを開いて、カラダをピンの左に向けて構えるのは難しく感じるかもしれません。フェースを開かず、カラダもピンに対してスクエアに構えても1回で出せないこともありません。
でもフェースをスクエアにセットしたままでは、インパクトでフェースの刃が砂に刺さってヘッドが抜けにくくなる危険性大です。フェースを開いておけば、ヘッドが鈍角に下りてきてボールの下の砂を薄く取ることができ、フォロースルーへとスムーズに振り抜きやすくなります。上から鋭角にドンと打ち込むイメージでは砂が多く取れすぎてインパクトが詰まってしまうのでNGです。
フェースを開く利点をもっと詳しく説明しましょう。サンドウェッジのソールには「バウンス」と呼ばれる出っ張った部分があります。フェースを開くとバウンスの厚みによってフェースの刃が浮いてきます。つまり、フェースを開いて構えておくことで、フェースの刃よりもバウンスが先に砂に着地するのです。イメージとしてはバウンスで砂を叩き、そのままヘッドを走らせて砂をスパット削り取る。そんな感じです。
プロたちのバンカーショットは、「パーン」と心地よい乾いた音がしますが、これはバウンスで砂を叩いているからです。結果として砂がピンの方に飛んでいき、ボールが周りの砂と一緒に飛んでいくのです。初心者の人もフェースを開いて打つ基本を先にマスターしておけば、バンカーショットがすぐにうまくなります。
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フェースをスクエアにセットして打つのも間違いではないが、フェースの刃から入りやすく砂を多く取りすぎるミスを招きやすい。
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フェースを開けばフェースの刃が浮き、バウンスから砂に入る。砂を薄く取ってフォロースルーへと振り抜きやすく、脱出成功率がアップする。
今度はバンカーショットの打ち方の基本について説明しましょう。
前述したようにバンカーショットはボールを直接打たずに、ボールの少し手前からヘッドを入れて、ボールの周りの砂をピンの方に向かって飛ばします。
イメージとしては実際に飛ばすボールの手前にもう1個のボールがあるとして、手前側の仮想のボールを打つつもりでスイングするのがオススメです。あるいは目玉焼きをイメージするのもいいでしょう。ボールを黄身として、白身の部分の砂を飛ばすという感覚です。どちらにしてもボールの手前の砂を目がけてバウンスを叩くだけでいいのです。
スイング中は構えたときの右手首の角度をキープし、カラダの回転主体でクラブを振りましょう。コックを使いすぎると上から鋭角に打ち込んでしまい、砂を多く取りすぎてフォロースルーがとれなくなるので要注意。
スイングの軌道はボールとピンを結ぶターゲットラインに対してアウトサイドインの軌道となりますが、自分が構えたカラダの向きに対しては通常のショットと同様、インサイドインの軌道です。意図的にアウトサイドインに振ると手先だけのスイングになりやすく、大ダフリしてバンカーから出なかったり、トップしてホールランしたりなどのミスを招く危険性大です。
バンカーショットは足場が不安定ですから、下半身の動きは小さめに抑えますが、お腹の回転をしっかり使ってスイングすることが重要です。
バックスイングでお腹を右に回し、ダウンスイングではお腹から左へと回して、フォロースルーではお腹が完全にピンの方を向くまで回しましょう。アドレスもスイング中もお腹に力を溜めておくことでスイング軸が安定し、バンカーショットの成功率が大幅アップします。
ピンまでが近くても、思い切りよくスイングすること。フェースを最初から開いて構える、直接ボールをヒットしない、インパクト時に砂の抵抗を受けるなどの要素から、アプローチショットの3倍くらいの振り幅が必要です。ピンまで20ヤードのバンカーショットなら、60ヤードのアプローチのつもりでスイングするのがベストです。
〈スイングのポイント〉
・アドレスの右手首の角度をキープする
・構えた向きのまま、インサイドインの軌道で振るイメージ
・お腹に力を溜めておき、お腹の回転主体でスイングする
・アプローチショットの3倍くらいの振り幅で打つ
バンカーショットのオススメ練習方法
次にバンカーショットの基本の打ち方をマスターする練習方法を紹介しましょう。オススメの練習法は次の2つです。
・砂の上に縦の線を引き、線の上にヘッドを入れて線の左側の砂を飛ばす
・バウンスで砂を叩いて、砂を思い切り飛ばす
バンカーショットに自信をつけるには、砂の感触に早く慣れるのが一番です。バンカーの練習ができる練習場に出かけたり、スタート前にコース内のバンカー練習場で実際に打つなどしてバンカーショットの打ち方の基本を身につけておきたいもの。ここではボールを打たなくても実戦感覚がすぐにつかめる練習法をチョイスしました。
その一つの砂の線を引いて、線の左側の砂を飛ばす練習は自分の狙った場所にクラブヘッドを正確に入れる感覚をマスターするのが目的。自分から見て線の少し左側にボールがあると想定し、線の上にクラブヘッドを入れて左側の砂を薄く取って飛ばしましょう。
1回打ったら、カラダを移動させて線の左の砂を取る練習を繰り返しましょう。すくい打ちになると線の手前側にヘッドが入ってしまいます。また鋭角に打ちすぎて上体が突っ込むと線よりもかなり左側の砂を取ってしまうことになります。
バウンスで砂を叩いて、砂を飛ばす練習もバンカーショットの上達に大きな効果があります。ボールをバンカーから出そうと思うと難しく感じてしまう人でも、砂を遠くに飛ばすだけならカンタンにできるはず。サンドウェッジのフェースを開いて、カラダをオープンに構えたら、「パーン!」を大きな音がするくらい、バウンスで砂を思い切り叩きましょう。
バウンスが砂の上で跳ね返り、その流れでフォロースルーへとスムーズに振り抜けて砂が一緒に飛んでいきます。フェースの刃から入れて砂を飛ばそうとしても飛ばせないのです。フェースを開いてバウンスを使って打つ意味が理解できれば、もうバンカーショットの悩みなんて解消されるはずです。
大西翔太のバンカーショット
フェースを開いて構え、バウンスを使って打てばカンタン脱出!
※動画はショット音が流れますので音量にご注意ください。
取材・文/三代 崇
写真/渡辺義孝
協力/船橋カントリークラブ
大西翔太
大西・翔太/1992年6月20日生まれ、千葉県出身。水城高校ゴルフ部を経てティーチングプロの道に進む。日本プロゴルフ協会公認A級の資格を取得。現在はジュニアの育成に尽力する一方で、青木瀬令奈のコーチもつとめる。メンタルやフィジカルの知識も豊富。女子ツアープロの大西葵は実妹。
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