6打リードでスタートも、攻め続けた最終日

初日から首位を守り続けた山下は最終日を6打リードでスタートしました。

パー5が2ホールしかないパー70のコースで、風も強くなってきたコンディションも加味すると、パープレーかひとつ、ふたつ伸ばせば勝てそうな状況です。

ですが山下は違いました。

2番パー3でバンカーからチップインさせてバーディーを先行させると、5番パー5は3打目を1メートルにつけて。

7番パー3はカラーからパターで決め、続く8番も3メートルを沈めるバーディーラッシュ。

後半も12番パー5で確実に伸ばすと、18番パー4は奥から傾斜を使ってピンに寄せ、2メートルを決めてバーディーフィニッシュしました。

最後も無難にパーセーブする安全策は取りませんでした。

グリーンを外せば難しいアプローチの残るショートサイドの傾斜を使って戻してのバーディーチャンスに付けたプレーは、現実には目の前にはいない誰かと戦っているかのようでした

目の前にはいない“敵”と戦っていた?

山下はルーキーだった昨シーズンはポイントランキング2位になりました。

今シーズンは少なくともその順位、あるいは上を目指しているはず。

今週は現在のポイントランキング1位を独走するネリー・コルダも出場していましたか、全ての面でコルダを上回るプレーを意識していたように見えました。

同組選手が敬意を払い、演出してくれた「勝者だけの空間」

そのプレーに敬意を払っていたのが同組のジーナ・キムでした。

18番のティショット。さらにほぼ同じ距離から2打目を打った後は山下のかなり後方を歩いていました。

2位に8打差で最終ホールに来ていますから優勝は間違いなし、の状況です。

そこでフェアウェイもグリーンへの花道も、まるで勝者のためだけにあるかの様な雰囲気を作ってくれていたのです。

ジーナも今年の「ダウ選手権」で優勝している実力があります。

その選手に最大限の敬意を払われる存在になり、無双のプレーだったといえるでしょう。

表彰式でもファンの心をガッチリ

さらに印象的だったのは、ホールアウト直後のインタビューと表彰式のスピーチを英語でしたことでした。

前回の優勝だった6月の「マイヤー選手権」の表彰式ではカンペを見ながらの英語でのスピーチでした。

今回は横に通訳がいるにも関わらずインタビューの質問に即英語で返し、表彰式でもカンペなどは見ずに、拙いながらも「I’m so happy」(とても嬉しいです)「I was nervous」(緊張していました)「Trust my swing」(自分のスイングを信じていた)と英語での自分の言葉でメッセージを伝えました。

山下の母国語が英語でないことは誰もが知っていますから、大事なのは英語が上手い、下手ではなく、自らが発信しようとする姿勢です。

これは山下自身もLPGAツアーにより溶け込んでいく、との意思なのでしょう。

そして最後は司会者に促されたとはいえ「GO OILERS!」と地元エドモントンのNHLチーム、オイラーズを応援する言葉で締めました。

これでカナダのファンの心もガッチリつかんだはず。

単なる1勝ではなく、大きな意味が込められていたことを印象づける勝利でした。

(文/森伊知郎)