ヒジとヒザを曲げて伸ばすだけにすれば安定して飛ぶようになる

飛ばなくなったというシニアゴルファーの大半は、大人になってからゴルフを覚えた人が多く感じます。スイング理論と呼ばれるものを、まず頭で理解してから体にあてはめる、簡単に言えばカタチから入っています。致し方ないことではありますが、型にハメることで無理が生じているのも事実。すなわち、動かさなくていいところを動かしたり、動かないところを動かそうとすることで、スムーズにスイングできなくなっています。

人間の体は、隣り合う関節がそれぞれ異なる役割を担い、交互に組み合わさることでスムーズな運動を行っています。これをトレーニングやスポーツ科学の世界で「ジョイント・バイ・ジョイント理論」と言います。

関節にはモビリティ関節(可動性関節)とスタビリティ関節(安定性関節)があります。モビリティ関節は、動きの自由度が高く、前後・左右・回転など、あらゆる方向へ滑らかに動くことが求められる関節で、手首、肩、股関節、足首などがそれにあたります。

手首や股関節は動きの自由度が高いモビリティ関節。

一方、スタビリティ関節は、主に一方向(前後など)への屈伸運動を得意としています。ブレずに固定・安定させることが求められる関節で、ヒジ、ヒザ、腰椎といった部分がそれに該当します。

肩から先の構造は「モビリティ(肩)― スタビリティ(ヒジ)― モビリティ(手首)」。下半身は「モビリティ(股関節)― スタビリティ(ヒザ)― モビリティ(足首)」というように、動かすべき関節と安定させるべき関節が交互に並ぶ形で成り立っています。

ヒジとヒザは屈伸運動だけできるスタビリティ関節。肩から先および足の付け根から先はモビリティとスタビリティが交互に並ぶ。

スイングパフォーマンスが上がらなかったり、故障をする大きな原因は、これらの関節に無理な役割を負わせることです。代表的な例がヒザとヒジの使い方。構造上、ヒザもヒジも一方向にしか曲がらないスタビリティ関節です。しかし、多くのゴルファーはスイングの回転動作に伴い、ヒザを内側や外側にひねったり、ヒジを複雑な方向へねじろうとしています。

回旋やヨコ方向の動きを司るのは、ヒザの上下にある股関節や足首であり、ヒジの上下に位置する肩や手首といったモビリティ関節です。スタビリティ関節であるヒザやヒジに対して、動かない方向へ無理に動かそうとすると以下のような問題が発生します。

・運動効率の低下=動きがぎこちなくなり、スイングスピードが著しく低下する
・再現性の欠如=無理な軌道で振ることにより“合わせる作業”が発生して当たらなくなる
・怪我のリスク=不自然な方向へ負荷がかかり、関節や靭帯を痛める

ねじれないヒザをねじろうとするとヨコ方向にブレて回転運動を妨げることに。

よく見るとわかりますが、ドラコン選手や300ヤード超えの飛距離を打つ飛ばし屋は、関節が動くべき方向にしか力を使っていません。構造に逆らわない使い方が、体を守りつつ爆発的なパフォーマンスを生み出しているのです。

では、実際にはどう使えばいいのでしょう。まずヒザから言うと「曲げる・伸ばす」というシンプルな上下運動しか行いません。バックスイングから切り返しにかけてヒザを沈め(縮み)、インパクトに向けて地面を蹴り込むように伸ばすだけでいい。ヒザが回転しているように見えるのは、モビリティ関節の股関節や足首が柔軟に動いて回転力を生み出すからで、ヒザはその動きを受け止めるだけです。

ヒザの動きはシンプル。バックスイングで縮み、インパクトに向けて伸びる。

ヒジも同様に、折りたたんで伸ばすという一方向の屈伸運動しか行いません。ダウンスイングにおけるヒジは「曲がったものが伸びる」だけです。トップで右ヒジが開く“フライングエルボー”の人も、ダウンスイングでヒジが正しい方向に伸びてくれば問題ありません。逆にヒジが本来の屈伸方向と違う方向を向いたまま下りると、手元を体に合わせる補正動作が必要となってミートできません。クラブの多様な動きは、肩や手首が自由に回旋・可動することで作られます。ヒジは曲げ伸ばすだけでいいのです。

フライングエルボーでもダウンスイングでヒジが正しい方向に伸びればクラブが軌道に戻る。

いきなり実行するのは難しいかもしれないので、まずは練習や素振りを含めて「ヒザとヒジは曲げ伸ばすだけ」と意識してください。それだけでも周囲の可動関節と正しく連携し、無駄な動作が減ります。「あまり動いてないのに当たるし飛ぶ」という感覚が得られたらシメたものです。


解説:中村 修
(なかむら おさむ)

1968年3月26日生まれ。千葉県出身。26歳でゴルフを始め、2005年にPGA入会。PGAティーチングプロB級会員。コーチとして桑木志帆の指導に携わっていた経験もあるが、執筆もこなす。ゴルフクラブに対する造詣も深い。