中・上級者向けのトラヴィル、守備範囲の広いMCI

「TRAVIL」(トラヴィル)と「MCI」は、ともにフジクラのアイアン用シャフト。「トラヴィル」はカーボン、ゴム、金属のコンポジット。MCIはカーボンと金属のコンポジットです。メーカーの説明によれば、「トラヴィル」はランディングアングル(打球の落下角)をつけてボールを止めるスタイル。「MCI」はスピンを効かせて止めるタイプ。グリーンに止めるという目的は共通ながら、各々で趣向が異なる興味深い2本です。

まずトラヴィルですが「落下角がつく=打球が高く上がる」ということ。グリーンに真上から落下する(!)ことを目指しただけあって、棒球と言っては何ですが、出球からボールが高く上がります。とはいえ、振ってみると粘り感、しっかり感があります。スチールシャフトでも粘り系とそうでない系がありますが、トラヴィルはカーボン系アイアンシャフトの中では粘りがあって、そこが他のカーボンと一線を画しています。ヘッド側が硬めでカーボンぽくないしなり方かもしれませんが、ボールを包み込むような軟らかめの打感。シャフト全体で打っている感じです。

メーカーによると「トラヴィル」でプロが打った場合、使用中のシャフトと比べて平均して1.1度落下角度がついたそうですが、やはり球が上がるぶん飛距離は落ちます。ですから、このタイプのシャフトで飛距離を求める人には全く合わない可能性があります。ボーンと飛んでランが出る打球を求めると物足りず「これはカーボンじゃない」と感じる人もいるでしょう。

一方、スピンで止めるタイプのMCIは、どちらかといえば滑らかな動き方をするカーボンです。でも、取り立ててしなやかというわけではないので、クセがないといった方が適切かもしれません。「トラヴィル」に比べると「MCI」の方がインパクト時の球離れが早く、一般的なアイアンのカーボンシャフトに近いイメージです。クラブバランス的にはやや重め。カーボンシャフトはグリップ側に重心がくる傾向にありますが、「MCI」はヘッド側にもしっかりウエイトをもってきているので、振った時にわずかながらスチールのような雰囲気も醸しています。

カーボンシャフト全体に言えるのは重量帯が作りやすいこと。この2機種もそうで、「トラヴィル」は70g台から120gまで、MCIは50g台から100g台までと幅広い重量帯で展開されています。ともに選択肢は多いですが、反面、多すぎて選びづらいとも言えます。全てを試打するのは現実的ではないですから、ひとつの目安として80g台から試すことをおすすめします。スチールではカバーできない軽量帯ということですね。

カーボンとはいえ、「トラヴィル」は簡単なシャフトではありません。飛距離にはこだわらずグリーンに止めたい人に向きますが、傾向的にはやはり上級者仕様だと思います。スチールと、いわゆる楽なカーボンの中間の立ち位置なので、長年スチールを使ってきたベテランプレーヤーが移行する最初のモデルとしてすごくいい。頼りがいがあり、なおかつカーボンのいいところも持ちあわせていますし、ヘッドスピードが速めでも使えます。

「MCI」は粘っこさとかは一切不要で楽に振りたい人向き。スチールだと重いのでカーボンにしたいけれど、いきなり大きなジャンプはしたくないという人にハマると思います。重量帯を選べばヘッドスピード30m/s台前半からイケます。こういった傾向から、「トラヴィル」は大きな変化を求めない中・上級者、MCIはアイアンショットの平均点を上げたいゴルファーが使うとメリットが最大級に発揮されると思います。

ちなみにアイアンシャフトの試打をする場合、圧倒的に7番アイアンが多いですが、できれば8番や9番で打ってみることをおすすめします。今やアイアンはストロングロフトの時代。一昔前の7番のロフトが今は8番です。また、8、9番ならちゃんと当たればピタッと止まるボールになるところもポイントです。正直、7番を使いこなせているアマチュアゴルファーは意外と少ない。実際7番は難しいところのある番手です。その意味では7番が打ちこなせていればトラヴィル、そうでなければ「MCI」という見方もできそうですが、いずれにせよ、なるべく高い確率でちゃんと当たる番手で打つことが大事です。


吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・中央区日本橋浜町の「吉本巧ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。