プレーオフは日本勢世界最高位の山下VS国内でもっと勢いのある吉澤の一騎打ちに

プレーオフは昨年の「全英オープン」を制し、今シーズンも8月の「CPKC女子オープン」で優勝して世界ランキングは日本勢で最高の6位の山下と、先月の「北海道meijiカップ」で初優勝を挙げ、8月以降の獲得ポイントでは国内で最も勢いのある吉澤の一騎打ちという見ごたえのあるものになりました。

その1ホール目は吉澤がティショットと2打目でラフとバンカーを渡り歩き、グリーン奥のカラーからの4打目も入れられなかったのに対して山下はフェアウェイから確実にグリーンを捉えて2パットのパーセーブで勝利をものにしました。

山下が貫録勝ち、という結果になりましたが、終盤の両者のプレーには決定的な違いがありました。

山下らUSLPGA組と、吉澤の決定的な違いは

山下、というよりも今回参戦したアメリカLPGAツアーを主戦場にする選手全般に当てはまることですが、サンデーバックナインの勝負所でのファーストパットをショートさせたケースはほとんどありませんでした。

例えば決めれば通算9アンダーの首位に並べた16番パー5での竹田麗央のイーグルトライ。

10アンダーの単独トップに立てる可能性のあった山下の17番パー3のバーディーパットは、いずれも「お先に」ができない距離までオーバーしていましたが、2人とも返しのパットを確実に決めました。

アメリカLPGAツアー勢は「優勝争いで自分が伸ばさないと勝てない」とのマインドでプレーしているようにも映ります。

入らなくてもカップをオーバーさせれば返しのパットのラインはわかるから入れられる、

というぐらいの強気でないとアメリカでは通用しない。

入らなかったらどうしよう…という気配を感じるパッティングはありませんでした。

逆に吉澤は、入っていれば通算10アンダーとして勝てていた可能性のある17&18番のバーディーパット、プレーオフでは山下が2打でグリーンに乗せており入れることができなければ負けがほぼ確定する奥のカラーからパターで打った4打目、をいずれもショートさせています。

18番ホールのマネジメントにも表れた差は

さらに18番パー4のマネジメントにも差が現れました。

正規のラウンドでは最終組のひとつ前で回っていた山下はティショットを右ラフに曲げます。

このホールのティーイングエリア近くにはリーダーボードがあるので、最終組で回る吉澤が16番パー5でバーディーを奪えず9アンダーの首位に並んでいることは把握していました。

16番では勝みなみがイーグル奪って自身と3人が9アンダーの首位に並んでいる状況で、18番はこの日67人がプレーしてバーディーが7つしか出なかった難易度4位のホールです。

なので確率として9アンダーで先にホールアウトしておけばプレーオフには持ち込める、との判断があったのでしょう。

残り184ヤードをレイアップすると、88ヤードからの3打目を52度のウェッジで1メートルにつけてパーセーブします。

優勝会見では「首位に並んでいたことがわかっていた上での選択。あのパーセーブは大きかった」と振り返りました。

一方の吉澤はやはりティショットを右ラフに曲げたプレーオフの2打目で、一度素振りをしてからキャディーと相談するシーンがありました。

その後のショットは引っかけて左サイドのフェアウェイバンカーへ入れてしまいます。次の3打目はグリーンをオーバーして奥のカラーへ。

4打目をショートさせて万事休すとなりました。

吉澤は2打目について「絶対にフェアウェイに置かなければいけない状況でラフの状態を把握しきれなかったことがミスでした」と説明しました。

18番ホールでのこの差も勝敗を分けるポイントになりました。

QTランキング76位でシーズンをスタートした選手がメジャー覇者相手に大健闘

差が出た、とはいっても昨シーズンのメジャー覇者の山下に対してプロ3年目の吉澤は今シーズンをQTランキング76位からのスタートでした。

いわば新入幕の力士が横綱相手に大熱戦を演じたようなもの。

吉澤の大健闘があったからこそ好勝負となったといえる、見ごたえのあるメジャーでした。

(文/森伊知郎)