アイアンのシャフト選びは9番やPWをベースにするべき
アイアンのシャフトを選ぶためにショップの試打室に足を運ぶと、誰もが当たり前のように7番アイアンを手渡されますが、この業界のシステムには激しい怒りと致命的な構造的欠陥を感じざるをえません。試打をする番手のバリエーションがないことが、どれほど異常で恐ろしい博打か、ということをアマチュアの方も自覚しなければいけません。
なぜ7番だけでシャフト選びを完結させてはダメなのかというと、スイングの物理において、クラブ長が短くなり、スイング軌道がタテ(垂直)に近づくほど、重力エネルギーを効率よく使えるようになり、当該アイアン本来の性能とシャフトの真価が発揮されるからです。アイアン本来の、上からボールを潰して適正なスピンでピンをデッドに狙える性能をジャッジするなら、7番という中途半端な長さではなく、スイング軌道が最もタテに近づく9番やピッチングウェッジ(以下PW)をベースにシャフトを選ぶのが正しいのです。スイング軌道が最もフラットに近づき、重力の恩恵を受けづらいロングアイアンを基準にシャフトを選ぶ行為は狂気の沙汰です。
現在ゴルフメーカーが新製品のアイアンを発売する際の流通システムは、ユーザーの視点を完全に無視しています。メーカーが全国のゴルフショップや大手量販店、例えば150店舗に試打クラブを卸すとしましょう。メーカー側は、何かあった場合を考慮して、一気に200本の試打アイアンを製造し、各店舗にバラまきます。この時、全店舗へ流されるのは200本の7番のみです。
アイアンセットは、本来5番からPWまでの6本、あるいはそれ以上の流れで一つの作品として機能するものです。なのにシャフトを選ぶためにショップに行くと7番だけ渡され「さあ、これですべてを判断して大金を払ってください」と言われます。これは新車を買いにディーラーへ行ったのに、お店からハンドルだけ渡され、乗り心地とエンジンの性能を想像して、今すぐ数十万円払って契約してくださいと言われているのと同じで、非常識も甚だしい事態です。
ヘッド構造の激変がもたらすメルカリで買い物をする以上の恐怖
さらに恐ろしいのは、近年のアイアンヘッドの進化が、7番による試打を無意味なものにしているという事実です。今のアイアンは番手ごとにヘッドの内部構造が異なるケースも珍しくありません。ピンのアイアンセットには、長い番手(4~6番)のヘッドは球を浮かせるために中空構造やポケットキャビティを採用、さらにヘッドの先端やソール側に超高比重金属のタングステンウェイトを埋め込み、強引に重心を下げて球を上げる設計にし、下位番手(8番以下)は余計なギミックを一切排除して、打感とスピン性能を担保するシンプルな1ピース構造にするといったように姿を変えているモデルもあります。
当然、それぞれの物理的な挙動も変わりますが、メーカーやショップはコスト削減を最優先しますから、全番手の試打クラブなど作りません。かといって直営店に行けば全番手の試打シャフトがあるのかと思いきや、組み換えて打てるようなシステムはどこにも用意されていません。結局ユーザーは、見たことも打ったこともないシャフトを装着したアイアンを、カタログの数値と7番の予測値だけで注文せざるをえません。フリマアプリの「メルカリ」で、動くかどうかわからない中古のゲーム機をノーリターンで買うより恐ろしい博打です。
この傲慢なシステムのおかげで、皮肉にも私のYouTubeチャンネルのギア解説動画は、迷えるアマチュアの方たちによって爆発的に再生され、救いの手として機能しています。今のところ、実際の番手ごとの予測値と闇の真実を包み隠さず発信することだけが、商業主義に洗脳されたゴルフ界に対する唯一の抵抗です。
現実問題として、7番まではきれいに同じヤードピッチで距離が刻めたとしても、ヘッドとシャフトの連動が崩壊しているせいで「6番の飛距離が7番と1ヤードも変わらない」、「5番が6番より飛ばない上に右へスッポ抜ける」、「4番なんて球に当たりすらしない」などというアマチュアが全国に溢れかえっています。思考停止した状態で5番からPWまでのフルセットを律儀に買い続ける必要などありません。長いアイアンは見向きもせずユーティリティの聖域に足を踏み入れることをおすすめします。

浦 大輔
うら・だいすけ
1985年生まれ。関西ジュニアをはじめアマチュアタイトルを多数獲得。ゴルフ部特待生として松山英樹と同じ明徳義塾高→東北福祉大の道を歩み数々のアマチュアタイトルを獲得したが諸事情により大学を中退。サラリーマンをしながらゴルフの物理学、スポーツ力学、ゴルフクラブのメカニズム、人体構造などの研究を進めて独自のゴルフ理論を確立。2016年には「ゴルフダイジェストドラコン選手権」で優勝(399ヤード)した。「√d Golf Academy」代表取締役兼ヘッドコーチ。YouTube『かっ飛びゴルフ塾』塾長。
「多くのゴルファーは”上達のカギはスイングが9割、クラブ性能は1割程度”と思い込んでいますが、それは誤解。クラブの重要度は最低でも7割」と浦大輔。その理由と自分に合ったクラブの選び方を提示し、レッスンとは全く別角度で上達のロードマップを示した書籍『ゴルフはクラブが7割』が9月30日に発売。
















