プロですら目をつぶれば軟鉄とステンレスの区別など1ミリもつかない

今回取り上げるのは、日本全国のゴルファーがレベルを問わず盲信している「アイアンの打感」という名の巨大な集団幻覚についてです。日本のゴルファーは、やれ「軟鉄鍛造の打感は絹のように軟らかい」だの「ステンレスヘッドの打感は硬くて弾くからダメだ」だの、まるで打感の良し悪しでスコアが変わるかのような寝ボケたことをドヤ顔で語っています。ハッキリ言わせてもらいますが、そんなものはただのオカルトであり幻覚。物理的な打感の違いなど人間の耳と手では100%わかりません。

これを証明する科学的実験データが、海外大手メーカーの研究所に存在します。この会社の開発チームは、ツアープロたちをテストセンターに集め、1つは最高級の軟鉄素材、もう1つは安価なステンレス素材で、完全に同じ形に削り出したアイアンの試打クラブを2本用意しました。そしてプロたちに目隠しをさせ、どちらで打っているかを完全に隠し、交互に何十球もボールを打たせるブラインドテストを行いました。結果は世界最高峰の繊細な感覚をもっているはずのツアープロ全員が、どちらが軟鉄でどちらがステンレスか100%わかりませんでした。

プロですら、目をつぶれば軟鉄とステンレスの区別など1ミリもつきません。それなのに、ショップの試打室でまともに芯に当たらない年季の入ったアベレージゴルファーが、フェースのトゥ側やヒール側で打ったミスショットの振動を感じつつ「やっぱりミズノの軟鉄の吸い付くような打感は最高。三浦技研のアイアンは本物の軟鉄だからミズノよりさらに打感が軟らかくて別次元だ」などと語っている姿は完全なお笑い草です。

私からすれば「三浦技研の軟鉄の方が、ミズノの軟鉄より明らかに軟らかい」などと聞いたら「あなた大丈夫ですか?」とマジで心配になります。なぜなら、両者の金属組成を分析すると、三浦の軟鉄の方が物理的な硬度が遥かに硬いからです。こうした打感オタクのおじさんたちを黙らせるべく、私は彼らが愛用するアイアンをガチガチに固定し、ロフト角とライ角を完全に同一に合わせた上で、一定の高さからゴルフボールを機械的に落下させ、そのインパクトの瞬間の音の波形と音圧を精密な計測器で測定するという“死刑宣告”のような実験を目の前で行いました。

打感は本人が打って気持ちよくなるだけの精神安定剤に過ぎない

データが弾き出したのは、彼らが「吸い付くように軟らかい」と絶賛していたアイアンの音が実際には最も高音で、最も金属的に激しく弾く硬い音であるという冷酷な科学的事実でした。数値の前で自分の感性のデタラメぶりを晒したおじさんたちは言い訳ができなくなり、次に私の前に現れた時には、あれほど執着していた軟鉄鍛造アイアンを中古屋に売り払い、ピンのステンレスアイアンに買い替えていました。

そもそも打感などというものは、スイングの物理特性にも、ボール初速にも、弾道の曲がり幅にも、スピン量にも、最終的なスコアにも、何の影響も及ぼさない、ただ本人が打って気持ちよくなるだけの精神安定剤に過ぎません。メーカーのカタログに“最高の軟鉄打感”などと書かれているのは、お金を払ってくれるユーザーに対するリップサービスで、打感に関しては完全に適当でありどうでもいい、というのがクラブの物理における最終結論です。

アマチュアゴルファーが本当にスコアを縮め、ギアの恩恵を受けたいなら、耳で感じる幻覚(打感)、ショップでの試打感、あるいはプロへの盲目的な憧れといった商業的ノイズを頭から排除しなければなりません。アイアンシャフトは100g以上の重量分布と自身のスイングテンポの相関関係だけで選び、ロングアイアンの代わりにピンの「Gシリーズ」やタイトリストの「U505」をハメ込み、ウェッジシャフトは黙ってダイナミックゴールドS200を使い、パットはアークタイプのウソに騙されずに自分が最も愛せるデザインのパターで強気に打つこと(いずれも機会があれば後日お話ししたいと思います)。アイアンやウッドに関しては、打感やブランドの虚像をすべて捨て去り、冷徹かつドライに数値を合わせることだけが現代ゴルフという暗黒の世界を生き抜く唯一の方法です。


浦 大輔
うら・だいすけ
1985年生まれ。関西ジュニアをはじめアマチュアタイトルを多数獲得。ゴルフ部特待生として松山英樹と同じ明徳義塾高→東北福祉大の道を歩み数々のアマチュアタイトルを獲得したが諸事情により大学を中退。サラリーマンをしながらゴルフの物理学、スポーツ力学、ゴルフクラブのメカニズム、人体構造などの研究を進めて独自のゴルフ理論を確立。2016年には「ゴルフダイジェストドラコン選手権」で優勝(399ヤード)した。「√d Golf Academy」代表取締役兼ヘッドコーチ。YouTube『かっ飛びゴルフ塾』塾長。


「多くのゴルファーは”上達のカギはスイングが9割、クラブ性能は1割程度”と思い込んでいますが、それは誤解。クラブの重要度は最低でも7割」と浦大輔。その理由と自分に合ったクラブの選び方を提示し、レッスンとは全く別角度で上達のロードマップを示した書籍『ゴルフはクラブが7割』が9月30日に発売。