絶対的なモデルの「MB」が存在する以上「CB」というモデルは必要ない!?

アイアンの伝統的なラインナップを語る上で、タイトリストの「Tシリーズ」や「MB」(マッスルバック)、「CB」(キャビティバック)の棲み分けは、ギアマニアの間で常に議論の的となってきました。一般的なクラブのカタログや教科書的なチャートを見ると「MB」は最も難しく、「CB」はそれより少しヘッドを大きくしてキャビティ構造にしているため、「MB」よりもやさしいモデルと説明されています。

しかし、現代のタイトリストのアイアンの実際の数値を分析すると大いなる矛盾が露呈します。「CB」はヘッドサイズが小さく、ミスに対する寛容性、芯を食ったときのキャリーの距離も「MB」と大して変わらないのです。

ゴルファーがオートマチックなやさしさと、正確なタテ距離のピッチを求めるのであれば、最初から「T100」という完成されたツアーキャビティアイアンを使った方が何倍もメリットがあります。つまり、「MB」という絶対的なモデルがすでに存在しているのであれば、「CB」は必要ないはずなのです。

では、なぜタイトリストは、「CB」をラインナップに残してアップデートし続けるのでしょう。そして、「CB」をあえて選択してバッグに入れているゴルファーには、どんな意図があるのでしょうか。私はゴルフ場や練習場で最新の「CB」を使っている人を見かけると、心の中で「このゴルファーは、とてつもなくセンスが良いマニアだ」と最大級の敬意を表します。なぜなら、そこには他人が容易には到達できない超マニアックな弾道と打感の計算が隠されているからです。

タイトリストが作る伝統的なマッスルバックは、他社のモデルに比べて球が非常に上がりやすいという独自の特性を備えています。ヘッド自体が最初から球を上げてくれますから、弾道を高くするためのキャビティ構造は、救済という意味では必要ありません。

タイトリストの「CB」を選ぶゴルファーの驚異的なセンス

しかし、あえて「CB」を選択することにより、ゴルファーは「MB」と同等の引き締まった小ぶりな顔のまま、キャビティという構造上、ロフト角をコンマ数度立ててインパクトしても「MB」と同じだけの適切な高さを維持できる、という絶妙な恩恵を受けることができます。

さらに重要なのは、クラブと使用するボールとのコンビネーションです。タイトリストの「MB」は、純粋な一枚肉の軟鉄鍛造であるため、例えば「Pro V1x」のような、しっかりとした芯を感じられるボールを使っているゴルファーであれば、「MB」の材質とボールの弾きが絶妙に相殺されたショットが得られます。

ところが、もしそんなゴルファーがマイルドで軟らかい「Pro V1」や、キャロウェイの「クロムツアー」のようなツアーボールを好んで使っている場合、ヘッドとボールで軟らかさが重複します。そうなるとインパクト時にフェース面で球が潰れすぎ、弾き感が足りない事態に陥ります。ゴルファーの感覚としては、球がフェースに乗りすぎて、意図したより弾道が高く浮くという非常に嫌な形として現れます。

このヘッドとボールの組み合わせによる、わずかな打感のボヤけと弾道の浮き上がりを徹底して嫌う上級者が、「MB」の小ぶりな顔と距離感はそのままに、インパクトでのわずかな弾き感だけをプラスして球の浮き上がりを抑えたいと切望したとき、初めて「CB」がパズルの最後の1ピースのごとくピタリとハマるのです。

これはパワーゲームが主流の欧米より、極めて繊細なタッチを表現しようとする日本ぽい、マニアックな職人好みの領域の話です。もし、そんなゴルファーが目の前に現れたら、ギアオタクなら思わず「素晴らしいセッティングですね! なぜT100に行かなかったんですか?」と興奮して話しかけたくなるほどのセンスです。

ですが、悲しいかな実際に「CB」をバッグに入れている一般アマチュアゴルファーのほとんどは、そこまでこだわって「CB」を選んではいません。大抵は「タイトリストのシリーズは好きですが、MBはさすがに難しいと思って」とか「みんなが持っているT100は人と被って嫌だから、人と違うのがよくてこっちにしました」という、性能とは無関係な答えしか返ってきません。

なお、現在の「CB」は、ご年配のゴルファーが懐かしむ昔のタイトリスト「CB」(DCIシリーズや初期の700シリーズなど)とは全体の重心位置もソールの削り方も異なる全くの別物ですので、懐古主義で購入するのは避けるべきです。


浦 大輔
うら・だいすけ
1985年生まれ。関西ジュニアをはじめアマチュアタイトルを多数獲得。ゴルフ部特待生として松山英樹と同じ明徳義塾高→東北福祉大の道を歩み数々のアマチュアタイトルを獲得したが諸事情により大学を中退。サラリーマンをしながらゴルフの物理学、スポーツ力学、ゴルフクラブのメカニズム、人体構造などの研究を進めて独自のゴルフ理論を確立。2016年には「ゴルフダイジェストドラコン選手権」で優勝(399ヤード)した。「√d Golf Academy」代表取締役兼ヘッドコーチ。YouTube『かっ飛びゴルフ塾』塾長。


「多くのゴルファーは”上達のカギはスイングが9割、クラブ性能は1割程度”と思い込んでいますが、それは誤解。クラブの重要度は最低でも7割」と浦大輔。その理由と自分に合ったクラブの選び方を提示し、レッスンとは全く別角度で上達のロードマップを示した書籍『ゴルフはクラブが7割』が9月30日に発売。