メンバーやスタッフの方々は日本から一人できたビジターに温かく接してくれた
全英女子オープンの取材に合わせ、以前から気になっていたこのコースへ足を延ばした。海沿いのリンクスではない。内陸に広がるヒースランドコースである。ヘザーとバンカーが織りなす風景の中に、個性の異なるホールが続く。

何よりも心に残ったのは、バンカーでもグリーンでもなかった。そこにいた人たちだった。
全英オープン開催コースのように、世界中からゴルファーが集まる場所ではない。見渡す限り、ほとんどが地元のメンバーのようだった。ビジターらしき姿も、アジア人も、ほとんど見当たらない。
ところが、居心地の悪さはまったくない。
「楽しんでる?」
「何か困ったことはない?」
すれ違うゴルファーが、次々と声をかけてくる。初めて訪れたクラブなのにクラブハウスやコースにいる方々の方から僕との距離を縮めてくれた。

プレーヤー自身が攻め方を考える楽しさがある
一つひとつのホールに特色と戦略性があり、回っていて飽きることがない。
なかでも意表を突かれたのが、7番ホール(Par3)。ティーイングエリアに立つと、別の組が7番ホールを横切って行った。後で分かったのだが、7番ホールの途中は、13番ホール終了後に14番ホールに向かう通路を兼ねていたのだ。
「えっ、こんなところを別の組が歩くの?」。なかなか新鮮な体験だった。

初めて設計するなら、まずは手堅くまとめそうなものだ。ところが、このコースを歩いていると、そんな勝手な想像は裏切られた。マッケンジーの設計思想の原点には、プレーヤー自身が攻め方を考える楽しさがあると思う。オリジナルの地形を生かしながら、その起伏をどう攻略するか、想像力をかき立てる。自然に溶け込む景観の中に、設計の自由さと大胆さが息づいている。最初の一作目から、マッケンジーはマッケンジーだったのだ。
オーガスタ13番の原型と言われるホールもあり
10番ホール(Par5)は、オーガスタナショナルGCの13番の着想になったとも言われるホールだ。左へドッグレッグしていく景色を眺めながら、マスターズの舞台を思い浮かべる。
ただ、立った瞬間に「ああ、まさにオーガスタ!」と大感動したかといえば、正直そこまででもなかった(笑)。
それでも、目の前のホールと、後に生まれる名コースとのつながりを想像しながら回るのは楽しい。いつものラウンドに、この日は設計家の歩みをたどるという楽しさが加わった。

マッケンジーのオリジナルを守り続けるゴルフコースは日本のゴルファーも大歓迎
ラウンド後、クラブハウスの「マッケンジー・ルーム」を訪ねた。写真や絵、初期のコースが設計家とのつながりを大切にしていることが伝わってくる。
その思いは、訪問前から感じていた。日本から連絡した際、クラブの方が、近年のコース改修についての資料をわざわざ送ってくれた。マッケンジーが手がけた初期の姿に、より近づけるための取り組みを紹介するものだった。
長い年月の間に、ゴルフコースは少しずつ変わっていく。だからこそ原点を見つめ直し、その魅力が生きるように整えていく。古いものをそのまま残すのではない。設計家の意図を、次の時代へつなぐために努力をしていた。
当日は、クラブマネージャーのマイク・テーラー氏が時間を取り、僕の質問に答えてくれた。そして、日本のゴルファーにもぜひ訪れて、マッケンジーのコースを味わってほしいと言ってくれた。 マッケンジーの原点を大切に守るこのクラブには、遠い日本から訪れたゴルファーを温かく迎えてくれる人たちがいた。マッケンジーのコースに興味がある方は、ぜひ一度訪ねてみてはいかがだろうか。

(取材・文・写真/北村収)















