
往年のデービス・ラブⅢも「ダブルキック」だった。
トータルドライビングは飛距離とフェアウェイキープ率を総合した評価であり、トータルドライビング1位の桑木選手は女子ツアーで最も「飛んで曲がらない」選手です。
桑木選手のスイングで注目されるのはベタ足ですが、ただのベタ足ではありません。桑木選手はダウンスイングからインパクトにかけて2回踏んでいるのが1番の特徴です。1回目の踏み込みはダウンスイングで切り返した直後(写真03)。右足で地面をしっかり踏み込みながらクラブを下ろしています。その後は一瞬ですが、右足の力を抜いています(写真04)。専門用語で「抜重(ばつじゅう)」というのですが、力を抜くことによって、もう1度踏み込める状態を作っています。
2回目の踏み込みはインパクト直前からインパクトにかけてのタイミングです(写真05)。ここで最大限のパワーを発揮できるように強く踏み込んでいます。
ベタ足のスイングは曲がらないショットにつながりますが、桑木選手は「ベタ足」と「2回の踏み込み」によって、飛んで曲がらないショットを生み出しているのです。PGAツアーだと往年のデービス・ラブⅢも米国で「ダブルキック」と言われるスイングで飛ばしていました。
カカト側を踏むことで肩がタテに回転
もう一つ、桑木選手の踏み込みで素晴らしいのはカカト側を踏み込んでいることです。アマチュアゴルフファーはツマ先側で踏み込みがちです。そのため体が前に突っ込みやすい。一方、桑木選手はカカト側で踏み込むことで体が前に流れず、肩がタテに回転するスイングになっています(写真06)。
肩をタテに回すことでフェースローテーションが抑えられ、インパクト時のフェース面が安定します。それがフェアウェイキープ率の高さにつながっています。
右腰の位置は高くキープ

右軸のまま体を回す


高いトップから一気に下げる! 引っ張る力でクラブに最大限の仕事をさせる


引っ張り続けることで手元が体から離れない
プロ入り当初の桑木選手は典型的なドローヒッターでしたが、今は完全にフェードヒッターになりました。高いトップから、フォローでは低く左に振り抜きながらフェード回転をかけています(写真09)。
桑木選手のスイングで特徴的なのが常にクラブを引っ張りつづけていることです。わかりやすいのがトップからダウンスイングにかけての軌道です。トップからクラブを真下に引っ張ることでヘッドが自然に遅れ、無理のないタメが生まれています(写真06)。インパクトからフォローにかけてもグリップを引っ張り続けることで手元が体から離れることなく効率的にクラブヘッドが加速しています。
クラブを引っ張り続けることによって、手首を返したり、アーリーリリースになることもありません。体のアクションは大きいタイプですが、ヘッドの動きはシンプルで教科書通り。クラブを引っ張る動きと「2回踏む」フットワークによってヘッドスピードを上げています。
ハイトップのレイドハイトップのレイドオフから、手元先行でヘッドが加速する安定フェード


フェースが開かない方向にテンションをかけている
桑木選手はフェースコントロールがすごく上手い。それが75%を超えるフェアウェイキープ率につながっています。フェースをコントロールできるのは常にフェースが開かない方向にテンションをかけ続けているからです。ハーフウェイバック(写真02)ではフェースがかなりシャットになっていて、トップでも全く開いていません(写真05)。ハーフウェイダウン(写真06)ではフェースがほぼスクエアになっていて、インパクト(写真07)ではわずかにクローズドの角度でヒット。その結果として出球が左に行き、フェード回転でセンターに戻ってくる打球が打てます。
ゴルフクラブはヘッドの重心設計上、何も力をかけないとフェースは開く方向に動きます。桑木選手はそれを抑えるためにフェースを閉じる方向にテンションをかけ続けている。それが安定感抜群のフェードボールにつながっています。
Q.ドローからフェードに変えた理由は?
A. 曲がり幅を小さくしたかった

2023年からフェードに変えた理由について、本誌の取材で「ドローを打っていたときは左方向の曲がり幅が計算しにくかったのですが、その幅を少しずつ小さくしようとしていったら、フェードになっていきました」と語っていた。

桑木志帆
くわき・しほ/2003年1月29日生まれ。岡山県出身。2024年、2025年と2年連続でトータルドライビングが1位、2026年も2位。今季は「Sky RKB レディス」と「宮里藍サントリーレディス」で優勝。海外メジャー「全米女子オープン」でも14位タイと好成績を残した。日本ツアー通算5勝。

解説:石井 忍
1974年8月27日生まれ。98年にプロ転向し、現在はツアープロからジュニアゴルファーまで幅広く指導。自身が主宰する「エースゴルフクラブ」を千葉、神保町に展開する。



























