天然ゴムや合成ゴムがベースのグリップなら「黒」が一番硬くできる
手前味噌な話で恐縮ですが、人とクラブ、唯一のインターフェースであるグリップの重要性に鑑み、私は自ら最先端のハイパフォーマンスグリップを開発してしまいました。そのグリップは、右手部分と左手部分に異なる独立した構造(非対称設計)を採用しています。僭越ながら、このグリップの設計思想と開発した経緯を説明させていただきますが、その前にまず「なぜ世の中のゴム製品には黒色が多いのか?」という、ゴムの歴史と物理的特性に触れる必要があります。
世界の歴史において、最初に誕生した自動車用の天然ゴムタイヤは真っ白、あるいは薄いクリーム色でした。天然の樹液から作られるゴムは白い物質だからです。しかし、純粋な白いゴムは、熱や紫外線に極めて弱く、すぐドロドロに溶けたり、ひび割れて強度が急激に低下するという致命的な弱点がありました。そこで科学者たちは、ゴムの分子構造を強化する不純物(添加剤)として、炭素の微粒子であるカーボンブラック(カーボンの粉)をゴムに大量に混ぜ合わせる技術を発明しました。これによりタイヤの強度は何倍にも跳ね上がりましたが、それと引き換えにタイヤはすべて真っ黒になったのです。
ちなみに、その昔に大流行した高級アメ車の中には、タイヤの側面だけが白い「ホワイトリボンタイヤ」を履いた車種がありましたが、あれは当時、タイヤ全体をカーボンで黒く染めるとコストが高すぎたため、強度の必要な接地面だけを黒くし、側面を白いまま残したコスト削減の産物でした。
現代のゴルフグリップでもこの物理法則は完全に生きていて、天然ゴムや合成ゴムをベースに作られているグリップを硬度計で精密に計測すると、あらゆるカラーバリエーションの中ではカーボン粉が最も密に詰まっている黒色が一番硬く、強度も安定しています。色鮮やかなカラーグリップは、見た目に華やかでお洒落ですが、ゴムの中に着色料などの不純物を混ぜるため分子の結合が弱くなり、硬度が安定せずヘタりやすい弱点があります。
さて、そこでです。「ゴムは黒しか強くない」という物理的限界を打ち破るために、私は自身のグリップに高性能樹脂素材のエラストマーを採用しました。エラストマーなら不純物による分子結合の低下が起きないので、何色にカラーリングしても松山英樹プロと同じ、硬度57という均一な超高硬度をキープできます。また、通常のラバーのように水を吸い込まないため、表面の水滴を拭き取れば即ドライ状態になるメリットもあります。
何より最大の特徴は、冒頭でちょっと触れたように、左手部分の表面に従来のオーソドックスなパターンを施しているのに対し、右手部分の表面には正六角形のパターンを用いた点です。なぜ右手だけ六角形にしたのか? それは、いかなるスイング軌道においても、指の関節を“面と角”で引っ掛けて右手を押し込めるようにしたかったからです。
素材は何であれ、グリップは丸い棒。手のひらで包むように握った場合、インパクト時の強烈なねじれ(トルク)が加わると、右手の中でグリップがツルッと滑って空転するリスクがつきまといます。その点、右手部分に六角形のパターンを敷き詰めておけば、指の第二関節や第一関節の折れ曲がる部分に対して、パターンのエッジがカチッと噛み合います。これにより、手のひら全体を密着させなくても、指先だけでクラブの重量をコントロールし、目標方向にダイレクトにパワーを押し出すことができるのです。
チッパーのグリップを作るなら吊るして固定できる極太グリップにしたい
余談ですが、私がアプローチをさらにやさしくする革新的なチッパーを送り出すとしたら、ヘッド形状以上に専用の特殊な形状のグリップを開発して装着します。なぜなら、ボールを遠くへ飛ばす必要がない、むしろ飛ばしたくないチッパーにおいて、ショット用の丸くて細いグリップはミスマッチだからです。
パターやチッパーに求められる唯一の命題は、手首のリリースやコネる動きを100%排除して振り子運動の再現性を限界まで高めることです。この目的を達成するために専用グリップを作るのなら、指先に引っ掛けて空間を作るショット用グリップとは逆に、手のひらが四方八方から隙間なく密着し、かつグリップの裏側(下側)が強烈に角張った極太グリップにするのが正解です。
手元の裏側が角張っていることで、人間の手のひらは下からその角を持ち上げ、吊るすようにしてクラブを保持できます。指先に力を入れなくても、手元全体が一本の強固なボルトで固定されたかのようにロックされ、ストローク中にフェースの向きが1ミリたりともブレなくなります。ただ、ルール上チッパーはアイアンなので、断面を丸くしなければならないのですが……。いずれにしても、大事なのは当該クラブの目的に応じてグリップを最適化すること。それひとつでクラブは魔法の杖にもなれば、暴れん坊の凶器にもなってしまうのです。

浦 大輔
うら・だいすけ
1985年生まれ。関西ジュニアをはじめアマチュアタイトルを多数獲得。ゴルフ部特待生として松山英樹と同じ明徳義塾高→東北福祉大の道を歩み数々のアマチュアタイトルを獲得したが諸事情により大学を中退。サラリーマンをしながらゴルフの物理学、スポーツ力学、ゴルフクラブのメカニズム、人体構造などの研究を進めて独自のゴルフ理論を確立。2016年には「ゴルフダイジェストドラコン選手権」で優勝(399ヤード)した。「√d Golf Academy」代表取締役兼ヘッドコーチ。YouTube『かっ飛びゴルフ塾』塾長。
「多くのゴルファーは”上達のカギはスイングが9割、クラブ性能は1割程度”と思い込んでいますが、それは誤解。クラブの重要度は最低でも7割」と浦大輔。その理由と自分に合ったクラブの選び方を提示し、レッスンとは全く別角度で上達のロードマップを示した書籍『ゴルフはクラブが7割』が9月30日に発売。















