ゴルフも離れていても繋がろうNew Normal ―新常識―へ
佐渡充高のテレビでは語れなかったPGAツアー
来日して茂原カントリー倶楽部でいっしょにラウンドした頃は親密距離にあったトランプ大統領と安倍晋三首相だが、新型コロナウイルスが蔓延した今はちょっと距離が離れた感じか。
文/佐渡充高
さど・みつたか
上智大学法学部卒業。1985年に渡米し、USPGAツアーを中心に世界のゴルフを取材。NHKゴルフ解説者。
新型コロナウイルスは世界のゴルフを激変させた。欧州のゴルフ場は70%が閉場、豪州も全土に営業自粛要請があり少数が条件つきで営業。
主要プロツアーも男女ともに3月中旬に全て中断し、4月初旬段階で開催しているのはアリゾナ州のカクタスツアー(女子ミニツアー)のみだ。4月2日にPGAツアーの役員ロス・ハーリンの陽性が判明し、さらなる注意喚起が必要になった。
選手たちの生活も激変。世界を転戦する多忙な生活から自宅待機。家族と過ごしながらリフレッシュするかたわらツアー再開に備えトレーニング練習に励んでいる。
フロリダ州在住のジャスティン・トーマスらは練習の合間に魚釣りやハンティングに出かけるなど自由に行動する選手がいる一方、なかには不調を訴える選手も。
ザンダー・シュウフェレは初優勝後に故郷カリフォルニア州サンディエゴに購入した高級コンドミニアムで自宅待機命令に従いゴルフはおろか外出は愛犬の散歩程度。長期間屋内に留まることが原因とされるキャビンフィーバー(閉所性発熱)の症状を経験。感染だけでなく、さまざまな影響があることを心に留めねばならない。
米国は50州中12州でゴルフ場の営業が中止されているが、驚いたことに全米74%は開場。徹底した感染対策と新マナー&ルール厳守ならゴルフは「マーケットの買い物より安全で散歩に準ずる」位置づけのようだ。
3密回避でレストラン、ロッカールーム、プロショップ、売店は閉鎖。プレーヤー同士はドライバーを持ち腕を伸ばした程度のソーシャルディスタンスを維持。手の接触対策は自分以外のクラブ等に触れない。ハグや握手、ハイタッチをやめ、互いのヒジや靴でバンプ、クラブでタップなど工夫を求めている。
コース内はバンカーにレーキを置かず足などで砂をならす。ホールカップ内部の筒を数センチ浮き上がらせ球が入らないように、旗を逆に差し込みボールが底まで落ちない工夫等。
カートは1人1台推奨、もしくは歩く。これら“離れていても繋がろう!”というゴルフのニューノーマルは感染対策で考案され、米国人に“気づき”も与えているようだ。
トランプ大統領は会見で相手との距離を置く日本の“おじぎ”に「先見の明があった」と発言。密着しなくても相手を敬う気持ちを伝えることができる、しかも安全に!
日本のマスク習慣のみならず、靴を外履き、室内履き、トイレ履きまで分けるライフスタイルにも注目。日本ゴルフが9ホール後に食事も高温多湿の夏季や高齢者の健康維持に有効等、日本ノーマルがニューノーマルに加わっていくかもしれない。
写真/Getty Images
GOLF TODAY本誌 No.576 123ページより