バンカー専用ウェッジはオープンに構えるのが苦手な人のためのウェッジ
アベレージゴルファーにとってバンカーは鬼門のひとつ。バンカーに入れただけでラウンドが暗転することもよくあります。そんな目に遭うたび気になるのがバンカー専用ウェッジ。「絶対出るなら1本持っておこうかなぁ」と食指が動きますよね。そこで今回はバンカー専用ウェッジおよびバンカーショットについて考えたいと思います。
まず、バンカー専用ウェッジとはどんなクラブなのでしょう? 結論から言うと、オープンに構えるのが苦手な人のためのウェッジです。
バンカーショットでは「バウンスを使う」といいますが、バウンスを使うには、それに応じた構えができないといけません。通常のショットでは飛球線に対してスクエアに立ち、フェース面もスクエアにセットして構えますが、バンカーショットでは、飛球線に対してフェース面をオープンにし、スタンスラインを左に向けて立ちます。こうしてスタンスラインに沿って左に振り抜きますが、フェース面は開いているので両者が相殺されボールは目標方向に飛びます。
サンドウェッジ(以下SW)はフェースを開くことでバウンスが出てきて「バンスが使える」状態になります。なぜバンカーでバウンスを出す必要があるかについては後述しますが、実はバンカーが苦手な方のほとんどは、この構えができていません。「フェースを開いて右に向ける/オープンに立って左を向く/ボール位置を決める」という3つの要素を整えなければならないのですが、この3つのハードルが思った以上に高いんです。
しかし、これらを整えないことにはバウンスが使えません。それを解決すべく出現したのがバンカー専用ウェッジというわけ。フェースを開かなくても、オープンに構えなくても、最初からロフトが60度くらいあり、なおかつバンスも出ています。打つ前に考えることはヘッドを落とす場所だけですから、正しく構えられない人には合うはず。アドレスできない人が、バウンスを使いやすくするための武器という感じでしょう。
ということで、それなりに武器になりそうなバンカー専用ウェッジですが、その割には普及していません。理由はカッコ悪いと思われるのがイヤという見栄の部分と、クラブによって構えの3要素はカバーできても、4つめの打つことができないため。それゆえ救世主になりきれないのです。
バンカーアレルギーの人は多かれ少なかれヘッドが刺さっている
アマチュアの方がうまく打てない一番の原因は、頭の中の切り替えができていないからです。フェアウェイからアイアンで打つように、ボールにクリーンに当てる思考が残ったままなのです。これはゴルファーの本能なので消し去るのかなかなか難しいですが、バンカーではこの概念を捨て去り、ボールの下にヘッドを潜らせる概念にガラッと変えないといけません。
これは指導する側の言葉足らずでもあるのですが、バンカーでは「打ち込め」とか「ダフらせる」とか言われます。それを聞いたアマチュアゴルファーのほとんどは、ヘッドを鋭角に入れてしまいます。そりゃ「ダフらせろ」と言われたら打ち込むし、「打ち込め」と言われたら鋭角になりますよね。ヘッドが砂に刺さって終わりになり、ボールが飛ばないのはそのため。バンカーアレルギーの人は、多かれ少なかれヘッドが刺さっているのです。
バンカーショットの基本は、直接ボールを打たずにボールの下にヘッドを潜らせて、ボールとフェース面の間に砂がある状態で打つこと。間に入る砂を増減させることがテクニックで、これが「砂を打った勢いでボールを飛ばすのがバンカーショット」とされる所以です。どちらかというと、通常のショットよりヘッドが低空飛行して、地面と平行に動く時間が長いイメージ。「打つ」というより「ソールを滑らせる」と言った方が近いと思います。
バンカーでこのように打つにはバウンスが不可欠ということ。これはバンカー専用ウェッジでも普通のSWでも、スイングが変わっても一緒。こういう打ち方をすればバンカー専用ウェッジも輝きを放つでしょう(逆に不要になるかもしれませんが)。
こんな打ち方はフェアウェイではあり得ないわけで、だから頭の中を180度切り替えないといけない。バウンスを使うという意味ではロブショットを打つ時も同じで、バンカーショットよりも浅くボールの下を潜らせるだけです。バウンスを使うショットはヘッドが刺さらず、フォローでサクッとヘッドが抜けます。このメカニズムがわかって、ある程度の練習量があれば意外と簡単なのですが、不幸にも日本にはバンカーで練習できる環境がありません。たぶん1時間バンカーで戯れたら、大体の人はバンカーショットが上手になると思います。戯れられないから、みんな苦手なままなんです。
バンカー専用ウェッジではなく普通のSWで何とかしたいなら、やはりロフトは寝ている方が出やすいでしょう。フェースを開く度合いを減らせるので56度よりは58度、58度よりは60度がいい。あとはバウンス角。12度が一般的ですが、それ以上あるものを使ってもいいです(通常は14度くらいまでかと思います)。ただ、ロフトとバンスがそこまでいくと、バンカーショットやロブショット専用と考えた方がいいでしょう。これをよりスペシャルな形にしたのが、キャスコのドルフィンやオノフのフロッグスといった、いわゆるバンカー専用のお助けウェッジです。
バンカー専用ウェッジを使い続けている人が少ないのは、やはり打ち方に原因があるのでしょう。もしかしたら専用ウェッジにもかかわらず、フェースを開いて使っている人がいるかもしれません。開くとロフトもバウンスも出ますから理論的には“だるま落とし”になりますが、この手のクラブはフェースが開きづらいようにできています。逆に普通のSWは開きやすいようにできている。地面に置いて手元をクルクル回してトンと置くと勝手に開きます。それが当該のSWの一番しっくりくるヘッドポジションなので、そこから開きはじめるのがいいと思います。
開き具合いはロフトによっても変わります。例えばロフト56度だと45度くらい開きます。ロフトは60度以上になりますから、そのままグリップして打つのもありですね。ただ、一般アマチュアの方がラウンドする場合、ロフトが56度以上あれば、よほどアゴが高かったり、近くない限りそれほどフェースは開かなくてもいい。ボールを上げるというより、少しバウンスを出すという発想で開いた方がいいでしょう。目安としてはフェース面が時計の1時の方向、スタンスラインが同様に11時の方向を向く。これでフェース、スタンスともに約30度開きます。大きく開いても40度程度。45度になると開きすぎだと思います。
吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・表参道の「表参道ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。







