一人でゴルフ合宿|練習ラウンドをこなして「飛ばない・寄らない」原因を徹底改善
ラウンドを重ねていくと、誰にでも訪れるスコアの伸び悩み。「ミスをしたくない、という気持ちが打ち方を悪くするんです」と分析するのはゴルフドクター松吉信。そこで、悩めるアマチュア2人を「ゴルフ合宿」で“やり直し”レッスン。マンネリを解消して“伸びしろ”を見つけよう!
【ゴルフドクター 松吉信(まつよしまこと)】
学生ゴルフ、プロキャディを経て㈲エイジシューターを設立。プロ・アマ問わず確実に上達するための、常識を打ち破るレッスンを展開している。「ゴルフ人生が変わるグリップレッスン」(成美堂出版)など著書多数。http://www.progolfers.jp
ゴルフ合宿初日:ドライバーが飛ばない原因は「曲げたくない=足を使わない」だった!
「曲げないように当てよう、軽く振ろうと意識すると、下半身はどんどん動かなくなります。スタンス幅を狭めるのも、それを助長します」(松吉)
「スタンスを狭めて8割で振る」意識が足の動きを抑えた
鎌田和樹さんはラウンドを多くこなし、上達も早かった。ところが初めて90を切ってから、スコアが頭打ちに。
鎌田「ドライバーがだんだん飛ばなくなって、ミスも増えて。他の番手も曲がるようになって……。アプローチでしのいで、100を切っています」
「ゴルフ合宿」初日、まずハーフラウンドで鎌田さんのプレーぶりをチェックした松吉は、スイングの弱さを指摘。
松吉「下半身が使えていません。手首の強さだけで上手く当てていますが、これでは飛ばないし、ミート率も悪いはず」
鎌田「知り合いの上級者に、もっとスタンスを狭めて8割ぐらいで振ると曲がりが減る、と言われて。試したら、ミスが減って90が切れたんです」
松吉「それ、今直さないとますます飛ばなくなりますよ」
ゴルフ合宿初日:アプローチが寄らない原因は「きっちり当てたい=足を使わない」だった!
「40ヤード以上で足をそろえていたら、腕を振り回すことに。これではミスが増えます。右足カカトが上がらないのが、足を使えていない証拠です」(松吉)
「足をそろえたら体はブレない」が腕に頼る打ち方に
高山梨奈さんはシングルの腕前の父親に教わり、ショットだけ見るともっと良いスコアが出そうだが、アプローチが苦手で100切りができないという。
高山「特にラフが苦手で、ザックリとかトップが出ます」
こちらも松吉がハーフラウンドでチェック。
松吉「足がそろっているのがダメ。10ヤードぐらいなら構わないんですが、20ヤード以上だと、下半身を使えないぶん、腕に頼った“手打ち”になっています」
高山「アプローチはスタンスを狭く、体をブラさないように、と教わったんですが……」
松吉「足をそろえることで、足が使えていないんです。だから、左腰を引いて腕を突き出すように振ってしまう。腕の振りだけで届かせようとするから、手首も硬くなっています。これがミスの原因です」
右足が動かないから左腰が引ける手打ちに。
ゴルフ合宿初日:やり直し飛ばすレッスン『左足ドン!クルン! とにかく振り切る!』
①踏み込む。
ヒールアップすることで、ダウンで踏み込む体勢が作れる。左足の踏み込みでダウンを始動すると、体を強くターンできる。
「左のヒールアップで右に乗るから、左に強く踏み込める」(松吉)
学生時代、野球部だった鎌田さん。「踏み込んで振り抜くイメージ、わかります」(鎌田)
②回りきる。
クラブを振り切った後、右足を浮かして左足を軸にクルンとひと回り。「この素振りや実際のショットを練習で繰り返すと、足の動きが良くなります」(松吉)
③振り切る!
踏み込んで、回り切るイメージでショットを繰り返す鎌田さん。「腰や背中がジンジンしてきましたが、腕や肩は全然疲れない。こんな感じ、初めてです」(鎌田)
胸の面が目標より左を向くまで回しきる!
「ゴルフ合宿」初日の後半は、練習場でみっちりレッスン。鎌田さんは飛ばしのポテンシャルを取り戻すため、まずFWのフルスイングを中心にスタート。
松吉「スタンス幅を少し広げて、バックスイングでヒールアップし、ドンと踏み込んでクルンと回り切る。チョロでもいいので、思い切って振り回してください。フィニッシュでは目標を向くのではなく、その左、背中側に胸が向くまで回るんです」
鎌田さんは元々FWが得意ということもあり、バランスを崩しながらも、素振りの直後から結構ミート率は高め。方向性はともかく、徐々に力強い当たりが混じってきた。ドライバーに持ち替えると、チョロ、プッシュを連発。だが、これも伸びのあるナイスショットが出始めた。
松吉「問題は、これをコースでもできるかどうか。これが2日目の課題です」
ゴルフ合宿初日:やり直し寄せるレッスン『踏み替えキュッキュでやわらかく振れる!』
①踏み替えで振る。
両脇を締めたまま、両ヒザを交互に内側に売れるように踏み替えることで体をターンさせ、クラブを振る。腕の力は抜く。
両脇が開かないよう、タオルを挟む。
足の内側を踏み込むと、ヒザが内側に動き、体のターンを促す。
②ヒジをゆるめる。
両脇は締めるがヒジを張ると力みが生じ、手首も硬くなってミスにつながる。クラブの重さを生かすようにゆるめるのが正解。
「右ヒジを張ると、腕全体が硬くなってザックリする」(松吉)
右ヒジはクラブの慣性にまかせて、やわらかく曲げていい。
ダウンで右手を離せるほど脱力したほうがクラブは正しく動く。
③右ヒジと左ヒジがしなやか!
足を積極的に動かすことで、ヒザの動き、体のターンがスムーズになり、腕も力が抜けてやわらかく使えるようになった。
足を踏み替えたら右手首と右ヒジがやわらかくなった!
高山さんは、SWとAWで20〜60ヤードのアプローチを集中レッスン。まず両脇にタオルをはさみ、体のターンで振る練習。ターンは両足の踏み替えで行う。
松吉「左ヒザを内側に入れて右にターン、右ヒザを内側に入れて左にターン。これで腕に頼らず、体のターンでクラブが振れる感覚を覚えます」
適度にスタンス幅を取り、足の踏み替えで振るコツをつかんだ高山さん。だが、まだザックリやトップが出る。
松吉「手打ちが長かったので、右手首と右ヒジがガチガチ。右ヒジが軽く曲げるように振り上げ、ダウンで右手を離すドリルを繰り返してください」
すると、ダウンで手を離してもソールが滑り、ザックリしないでナイスショットに。
高山「右手を離してもきちんと当たる感じがわかりました。これなら右手の力を抜けます」
なぜ練習の成果をコースで出せないの?スコアアップのヒントは“打つ前”にあった!
スコアの伸び悩みの原因は、打ち方の技術だけではない。練習場では出ないようなミスがなぜか突発的に起こるからだ。その理由を考えるために、「ゴルフ合宿」初日のラストに“座学”の時間を設けてみた。
コースに出るのは“景観に騙される”心の準備が必要
松吉:コースに出ると、練習してきたことが上手くできなくなる大きな要因は、アドレスの向きが狂ったり、リズムが乱れたりするためです。
それは、コースの景観に騙されるんですね。たとえば、左にOBが迫っていると、無意識に右を向いてしまう。そのまま振ると気持ち悪いから、体の向きより左に振って、ヒールに当たってスライスする。
これはプロや上級者にも起こることなんですが、アベレージとの違いは、その景観からこんなことが起こるぞ、と認識しているかどうか。アベレージはその点を想定していないから、ミスが突発したと慌ててしまい、スコアを崩してしまう。
一方、上級者はスライスする可能性を認識しつつ、それが“最悪”の事態にならないように準備し、対処するんです。
ライの判断なども同様で、地面がぬかるんでザックリしそうだな、と感じたらザックリするんです。それをしないように打っていくことが大事。
鎌田:でも、それって難しいですよね……。
松吉:そこでナイスショットしよう、と考えるからです。できるわけがない(笑)。コロガシでもいいから“最悪”を回避すればいいんです。“最悪”を避ければ、プレーやスイングのリズムもキープできます。
正しいアドレスを“視界の映像”で保存していく
松吉:“最悪”の事態は、少しの振動で破裂する“時限爆弾”みたいなもの。これを慎重に、ゆっくり運んでコースを回り切るのがプロ。慌てて走って、途中で破裂させるのがアベレージなんです(笑)。
まずはOBを打たないこと。それには正しいアドレスの向きを覚えることが大切なんです。
高山:私も今日、コースで右を向いていると注意されました。どうすれば直りますか?
松吉:最初のうちは、足元にクラブを置いてスタンスの向きを確認するといいです。そのクラブなりに正しい向きでアドレスし、頭を回して目標を見る。
今まで右を向くクセがあった人は、左を向いている感じがして違和感があると思いますが、その“視界の映像”に慣れることが大切。これを繰り返して記憶に保存していくと、正しく立てるようになります。
あ、足元のガイドのクラブは、打つ前に外せばルール違反になりませんよ(笑)。それと、リズムを崩さないためには番手選びも大切。向かい風では上級者は2〜3番手上げて力まないようにしますが、アベレージは1番手しか上げない。それでも届かないと感じていて、力む。これがスイングのリズムを乱して、それ以降のショットをダメにするんです。
“軽く振ってスコアをまとめる”が上達ストップの原因
鎌田:ボクの場合、力みではなく、軽く振るようにしたのがダメ、と指摘されましたよね。
松吉:スコア作りで“最悪”を避けるのはいいんですが、そのために曲げたくない、合わせて振ろう、というのはダメなんです。合わせる打ち方だと、どんどん下半身が動かなくなる。鎌田さんの場合は、野球経験があって手首が強いから、それでもそこそこは飛んでいました。
でも、それに甘んじていると、飛ばないし、曲がるようにもなる。結局、たまたま曲がらなかったときに、ショートゲームが良ければやっと90が切れるかな、といったゴルフで頭打ちになってしまうんです。
鎌田:それで、今日は振り回すドリルだったんですね。
松吉:“振り感”を取り戻せれば、まだまだ飛びます。それに、強く振れるようになったら曲がり方も決まってくるし、その対処も決まってくるんです。ボールに合わせてスイングをしていたら、さまざまなミスが出ます。
鎌田さん、ボール位置が悪いことにも気づきましたよね。
鎌田:左寄りに置いて、当てに行っていました…
松吉:本来は強く振って、勝手に当たる位置にボールを置くべきなんです。すると、コースで曲がっても、対処できる方法がわかり、すぐに立て直せるんです。まずは“振り感”を取り戻してください。
ゴルフ合宿2日目:やり直し飛ばすラウンド『恐れず“振り切り”続けたら270ヤード弾が出た!』
【チェック①】頭も振る。
スイング軸から見て、頭も左右にターンするのが正解。バックスイングで頭を右にターンすると、トップが深くなり、ダウンのターンもより力強くなる。
「左に強く振るには、まず右にしっかり回ることです」(松吉)
【チェック②】左手をかぶせる。
手首に頼った振り方の影響で、インパクトで左ヒジが引けていた鎌田さん。「左手のかぶせ方を調整して、強く引ける体勢を作れれば直ります」(松吉)
<BEFORE>
<AFTER>
左手を少しかぶせることで左ヒジが引けなくなった。
【チェック③】とにかく振り切る!
スタート前の練習場から一貫してフルスイングを続けた鎌田さん。ミスの不安から合わせて置きに行きたい気持ちを、当たったときの快感が上回り始めた。
「OBなどを恐れずに振り切り続けることが必要です」(松吉)
▼フットワークが変わった!
9番ホールで「少しだけ抑えて」という松吉の指示に従ったスイングで、270ヤード越え。下半身の躍動感は、昨日とは別人のよう。
スコア度外視の“課題ラウンド”で苦手を克服!
「ゴルフ合宿」2日目は、スタート前の練習でラウンドの“課題”を設定。鎌田さんは、とにかくドライバーを“振り切る”ことに専念。スコアは気にせず、OBやチョロが出てもフルスイングし続けることにした。
松吉「打つ前に整えるのは、アドレスの向きだけでOK。それも第三者がチェックしないと、ついOBや池を避けて“歪み”が出やすい。そのまま打つと、アドレスが悪いのかスイングのせいかがわからなくなり、改善できないんです。アドレスが正しい状態で振り続ければ、ナイススイング時の成功体験が正しく蓄積されて、上達へと向かうんです」
鎌田さんは、1ホール目はフルスイングでナイスショットだったが、続くホールはミスショット。それでもフルスイングを続けた結果、9ホール目のパー5で、270ヤード越えのロングドライブが出た。
ゴルフ合宿2日目:やり直し寄せるラウンド『胸の面を目標に向けたら寄せワンが取れた!』
【チェック①】腕を張らない。
「両脇が開くと、体のターンで打てず、手打ちになる」(松吉)
きっちり当てようと、両腕と肩の三角形を意識すると腕が張り、ボールから離れて立ちやすい。両ヒジをゆるめて両脇を締め、近づいて立つように心がける。
【チェック②】腕をターン。
アプローチでは、フィニッシュで目標に胸の面を向けるようにすると、手や腕の力で届かせようとしたり、上から打ち込みすぎる動きがなくなる。
「胸の面を目標まで回すと、ラフでも突っかからない」(松吉)
「ラフでもこんなにラクにヘッドが抜けるんですね!」(高山)
▼ヒザが動けばすべてOK!
短い距離でも足の踏み替え、ヒザの動きを積極的に使うことで手首やヒジをやわらかく使い、距離感を合わせることができた。
ゴルフ合宿を終えて…。
鎌田「知らないうちにスコアを守ろうと、振り方が萎縮していたんですね。もっと足で振る感覚、意識してみます」
高山「今まで正しいと思い込んできたことが、逆効果にもなるんですね。もっと足を動かす練習、続けてみます」
GOLF TODAY本誌 No.547 26〜39ページより