ゴルフレッスン|スランプ時に基本を取り戻すハーフスイング練習方法
ゴルファー誰しも調子が悪い日があるものだが、ずっとスランプ気味だと悩みが尽きない。そんなときどうしたらいいかを谷将貴コーチに訊ねたところ、「フルスイングの練習で修正しようとしてもダメ。ハーフスイングの練習で基本をおさらいすることが大事です」との返答。昨年は米山剛の完全復活に貢献した谷コーチに、ハーフスイング練習法のハウツーを教えてもらった。
レッスン解説:谷 将貴(たに まさき)
1972年11月17日生まれ。かつては片山晋呉の3年連続賞金王獲得に貢献。現在は米山剛らのコーチをつとめる一方、主宰するTANI MASAKI GOLF ACADEMY 21で多くのアマチュアゴルファーを指導している。
「ハーフスイング」とは?
ハーフスイングとは、右腰くらいの高さまでバックスイングし、左腰くらいの高さまで振り抜くスイングのこと。時計盤でいえば9時から3時までの振り幅で、プロたちはこの扇のゾーンをインパクトゾーンと考えている。
《米山剛もハーフスイングの練習で一段とレベルアップ!》
谷将貴から勧められてハーフスイングの練習を徹底し、長かったスランプから脱して復調した米山剛。しかもレギュラーツアーで3勝した当時よりも、より精度の高いスイングをマスターできたという。
ハーフスイング習得 STEP1|始めに8時から4時までの振幅で準備練習
小さい振り幅でも胸をしっかり回す意識が大切
ハーフスイングに使うクラブは7番アイアンが最適です。ボールを低めにティアップし、フルショットと同じアドレス。ボールの位置はスタンスの中央より1個分左です。
9時から3時までの振り幅のハーフスイングで打つ練習を始める前に、それよりも小さい振り幅のショートスイングで準備練習をしましょう。
時計盤でいえば8時から4時までの振り幅ですが、手先の動きに頼ってはいけません。小さい振り幅でも体重移動と連動させて、体の回転主体でスイングすることが大切です。腕やクラブを胸の前にし、胸を左右に回すというイメージです。
ショートスイングの練習で、腕や手に無駄な動きをさせない感覚を先につかんでおきましょう。
ポイント1:フルショットと同じ構えで打とう
小さいスイングの練習はアプローチの上達にも役立ちますが、アプローチの練習が目的ではありません。正確なフルショットを構築するための練習ですから、フルショットと同じアドレスをしましょう。スタンスを狭くしたり、クラブを短く持ったりすると振り幅を大きくしたときに違和感が生じやすいのです。
《アドレスはフルショットと同じ》
フルショットと同じ長さにクラブを持つ(写真左)。スタンスは肩幅くらいまで広げよう(写真右)。
スタンスを狭くしたり、クラブを短く持ったりしては練習の効果が半減する。
ポイント2:スイング中は頭の位置を変えない
スイング中は頭を動かさないことと、アドレスの前傾角度を変えないことに気を配りましょう。頭の位置をキープし、アドレス時の両肩と両腕の三角形を崩さないようにスイングする基本練習を繰り返してください。小さい振り幅でフェースの芯に当てる感覚を養えば、インパクトの正確性が向上します。
《軸をしっかりキープ》
アドレスの前傾角度を変えないことが大切(写真左)。頭をスタンスの中央にキープする(写真右)。
スイング中に頭が左右に動くと、ボールを正確にヒットできない。
ポイント3:腕や手を使わないで胸を左右に回そう
小さいスイングだからといって、腕や手でクラブを操作したり、手首の角度が変わったりしてはいけません。腕とクラブを胸の前に固定し、胸を左右に回すだけの動きでスイングすることが重要です。フォロースルーではとくに両腕が縮みやすいので、真っすぐ伸ばした状態で振り抜くことを意識しましょう。
《体重移動と回転を連動》
クラブを肩に当てて体重を右足に乗せながら胸を右に回そう。ダウンスイング以降は体重を左足に移動して胸を左に回す。これが回転動作の基本となる。
体を回さず、手だけでクラブを操作すると手首をこねてしまう。
フォロースルーでヒジが曲がると両肩と両腕の三角形が崩れる。
ハーフスイング習得 STEP2|9時から3時までの振り幅のハーフスイングの練習
腕をねじらずに左右対称に振ってフェースターンを抑える
ショートスイングで腕や手に無駄な動きをさせない感覚をつかんだら、9時から3時までの振り幅のハーフスイングの練習に進みましょう。この場合もアドレスの姿勢は同じですし、スイングの感覚も変わりません。
ただしハーフスイングでは、フルショットと同じくらいに体重移動を積極的に使いましょう。両手にメディシンボールなど重いものを持ち、目標方向に放り投げるような感覚です。
基本的には腰よりも下の高さできれいな半円を描くイメージでスイングしますが、腕をねじらないようにしてフェースターンを抑えるのがポイントです。シャフトが9時と3時のポジションにきたときに、フェースの刃が背骨と平行になっているかをチェックしてください。
〜テークバックの注意点〜
自分から見て腕を右にねじるとフェースが開く(写真左)。フェースが下を向くのは腕を左にねじっている証拠(写真右)。
〜フォローの注意点〜
フェースが開くのは自分から見て腕を右にねじっているから(写真左)。腕を極端に左にねじるとフェースが下を向いてしまう(写真中央)。3時の位置でクラブヘッドのトゥが真上を向く程度までならOK(写真右)。
ポイント1:ティアップして打つのが大前提
ハーフスイングの練習は、体の無駄な動きを省くことに主眼を置いています。そのポイントに特化する ために、一貫してボールをティアップして打ちましょう。練習場のゴムティなら低めのSが最適です。ボールをマットの上に置くと、うまく当てようとして無駄な動きが生じやすく、効果が半減します。
《必ず低めにティアップする》
指1本くらいの高さにティアップ。高すぎるティアップはNGだ。
マットの上にボールを置くと、当てにいくことに気を奪われやすい。
ポイント2:体重移動を積極的に使おう
ハーフスイングの練習でも、フルショットと同じくらいに体重移動を使います。重いボールを目標方向に投げるイメージで、胸を左右に回転させて振りましょう。重いボールを投げるときのように両ヒザの角度をしっかりキープし、下半身を安定させてスイングすることも大切なポイントです。
《重いボールを放り投げるイメージ》
1. 右ヒザの位置をキープし、右足に体重をしっかり乗せる。(写真左)
2. 腰を左にスライドし、体重を左足に移動させる。(写真中央)
3. 左ヒザを伸ばさずに左足をしっかり踏ん張ってボールを投げる感覚だ。(写真右)
ポイント3:ダウンスイングで「たわみ」を感じよう
8時から4時までのスイングと違うのは、ダウンスイングでクラブを「少したわませる」感じを出すこと。8時から4時までのスイングでは手首をしっかり固定させておくため、5割の力加減で握りますが、この場合はクラブの重さを利用しやすくするために3割くらいに柔らかめに握るのがコツです。
《たわみを体感しよう》
左手首を右手で握り、左手主導で素振りするとクラブのたわみを感じやすい。
《3割の力加減で握る》
クラブの重さを利用しやすいように3割くらいの握り圧でグリップする。
手に力を入れて意識的にタメをつくろうとするのは逆効果。
ハーフスイング習得 STEP3|左足体重のインパクトと仕上げのスリークォータースイング
パワーを生み出す力強いインパクトは「左足体重」が絶対条件
ハーフスイングの練習の一番の目的は、インパクトゾーンを安定させて、ボールを目標方向に真っすぐ押し込めるような左足体重の「ぶ厚いインパクト」をつくることです。ハーフスイングでボールを正確にヒットできなければ、フルショットでうまく打てるはずがありません。
インパクトの打感が良くなくて、ショットが安定しないという人ほどフルショットの練習ばかりしています。ハーフスイングの練習を反復すれば、パワーのベクトルを目標方向に真っすぐ向けられるようなインパクトのイメージが明確となります。
一般のアマチュアなら7番アイアンのハーフスイングで70~80ヤード飛べば十分。少しくらい右に飛んでもミスではありませんから誤解のないように。
《腰を左にスライド》
重いものにフェースを当てて真っすぐ押してみよう。腰を少し左に移動させながら回す動きが自然に生じるはずだ。
《お尻を平行移動》
お尻の位置をキープしつつ、左にスライドさせるイメージを持とう。
《ボールが右に出るのはOK》
フェースターンを抑えて打つので目標よりもやや右に飛びやすいが、これはミスではないので気にしなくてもいい。
パワーのベクトルをボールに向けると腰が前に出やすい(右)。パワーを目標よりも左に向ければ上体が突っ込んでしまう(左)。
最後はスリークォータースイングで仕上げよう!
フルスイングはスリークォーターの振り幅のイメージ
ハーフスイングの練習の成果が表われたら、今度はスリークォータースイングの練習に進みましょう。振り幅はトップで左腕が10時、フィニッシュで右腕が2時くらいが目安です。
実をいえばプロたちのフルショットは、スリークォータースイングのイメージなのです。それはアイアンに限らず、ドライバーも同様です。フルショットしようとすると10割の力を出し切ろうとか、大きく振ろうとしがちですが、それが無駄な動きを誘発し、インパクトゾーンを壊してしまう要因となります。
ハーフスイングやスリークォータースイングの徹底練習で、グッドショットの確率の高いスイングの完成を目指しましょう。
米山剛は「1年間フルショット禁止」でスイングをパーフェクトに仕上げた!
米山剛のスイングをチェックし、アドバイスを送る谷将貴。
無駄な動きを排除し、良いイメージを筋肉にインプット
「以前の米山剛プロはトップがオーバースイングになっていて、シャフトが目標より右を指していました。そのため切り返しで右肩が前に突っ込み、さらにインパクトで手を返しすぎていた。それが不調の始まりでした。そこで6年前にスイングをイチから作り直すことにしたのです」と谷将貴。
谷が米山に出した条件は「一年間のフルスイング禁止」で、その間はハーフスイングの練習を中心にしてインパクトゾーンの安定化に努めたという。トーナメントプロにとっては「ビジネスゾーンの強化」だ。
「結果としてオーバースイングのクセが解消されて、スイングがシンプルになりました。昔とはイメージが全然違いますね」と米山も満足顔だ。
●米山剛は1年計画でスイングを大改造
アマチュアはそこまでいかなくても3日間フルショットしないで100球ずつ打つとか、7番アイアンの後に米山のようにドライバーのハーフスイング練習を取り入れるなどして調子を立て直そう!
GOLF TODAY本誌 No.559 58〜65ページより
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