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ゴルフクラブ「本間ゴルフ TW747」開発ストーリー秘話(1/3)|ギアモノ語り

世界のHONMAになれた分岐点。〜酒田工場で感じた新しい進化〜 前編

2019/06/24 ゴルフサプリ編集部

そのニュースは日本だけでなく米国や欧州のゴルフ界でも話題になった。世界ランク1位のジャスティン・ローズがHONMAと契約。なぜ、世界のトップ選手がメイド イン ジャパンのHONMAを選んだのか?

今回、酒田工場を取材するとそこには匠の技だけでなく最先端の進化があった。

世界のHONMAになれた分岐点。〜酒田工場で感じた新しい進化〜
前編:ジャスティン・ローズが選んだのもSAKATAのシャフト。
中編:世界で最も薄く軽いカーボンにリブがある理由。
後編:酒田工場はみんなのツアーバン。

ジャスティン・ローズが選んだのもSAKATAのシャフト。

HONMAはシャフト契約を結んではいない。それでも日本ツアーのトップ選手をはじめ、ジャスティン・ローズが選んだのも酒田工場で製造する純正シャフトだった。

(株)本間ゴルフ 製品開発本部 製品開発部 部長 佐藤 巧

ジャスティン・ローズに 帯同するHONMAのUSチームのスタッフはドライバーのシャフトまでHONMAを使うとは思っていなかったようだ。

事実、大手メーカーとクラブ契約を結んでいるトップ選手でも、シャフトはカスタムメーカーを使用。

しかし、ローズはテストの段階で「これでOK!この1本は触らないで」とエースドライバーにする予定のヘッドとシャフトの組み合わせを選んだ。

そのシャフトは酒田工場で開発・製造された『VIZARDFD』。世界のトップ選手がHONMAを選ぶ。それは10年前には想像できなかったことだ。

私がはじめて酒田工場を訪れたのは2010年の冬だった。当時は匠と呼ばれる職人がドライバーヘッドの原型となる“モック”を手で削り、シャフト部門ではカーボンシートを手で巻く職人にメイドインジャパンのモノ作りを感じたが、2019年に訪れた酒田工場には匠の技だけでなく最先端のテクノロジーが感じられた。

そんな印象を開発部の部長を務める佐藤に話すと、
「2012年からはじまった“熱意系戦略”の影響が大きかったと思います。それ以前のHONMAは年配の方が使う“オジサンのクラブ”という認識も強かったですからね」

1959年に創業し、パーシモン時代からクラブを作り続けてきたHONMAは老舗という印象が強く、確かに年配向きのモデルが主役だった。その分岐点となったのが2012年だ。

“熱意系”というキャッチフレーズで、国内のツアープロと積極的にクラブ契約を進めて、その年にヘッドでは『TWシリーズ』、そしてシャフトでは『VIZARD』が誕生し、今につながっている。

ツアープロと契約してからの変化について佐藤は、
「現役ツアープロのフィードバックは酒田工場の開発レベルを格段に上げたと思います。それ以前は開発部門に入ってくるのは、直営店の営業担当がアマチュアゴルファーから聞いた意見のみだったので、開発チームもそれを次のモデルに反映していました。それがツアープロからは“戦うレベル”で精度の高いフィードバックが毎週のように入ってきて、それにスピーディに対応しないといけないし、次の新モデルではさらに進化していないといけないですからね」

オーソドックスな中調子で先端と手元がマイルドな『VIZARD For TW747』。
弾き系の『FD』は先端にニッケルクロムシートを使い、重量バランスを先端側にしたことで振りやすさが向上。
粘り系の『FP』は、やさしくするためにしなり戻りのタイミングを少し早くしている。

今年1月の「ファーマーズインシュランスオープン」で優勝したローズが使用していたのは『TW747 460 』のヘッドと『VIZARD FD』のシャフト。同一メーカーのヘッドとシャフトで優勝するのはPGAツアーでも異例。

酒田工場の進化はジャスティン・ローズとのテストでも発揮された。ローズが愛用するシャフト企画の中心人物はクラブ企画チームのマネージャー竹田である。

『VIZARD』の生みの親でもある竹田は、
「まず、試合中継やスイング動画を見ながら、どういうポイントでしならせているかを分析してシャフトを企画しました。これは熱意系で『VIZARD』をはじめてから、毎週のようにプロからのフィードバックをもらい、急ぐときは次の週には新しいシャフトをプロに渡していた。その積み重ねが生きたと思います。ローズ選手とのシャフトテストは、意外とスムーズでしたよ」

もう一つ、シャフトにはHONMA独自の特徴がある。それはシャフトを回さないでライ角やロフト角を調整できることだ。それについて佐藤は、
「最初に海外メーカーから調整式ドライバーが発売されたときに“シャフトを回すのは、ありえない”と思いました。自社製造しているHONMAのシャフトはスパインの管理やシャフトの均一性で完成度を高めていますからね」

実は私が2010年に酒田工場を訪れたときに取材したのが、「パーフェクトスイッチ」だった。それは世界初のシャフトを回さない調角式ドライバーであり、あまり知られていないが欧州では「GOLF EUROPE PRODUCT AWARD」を受賞。そのシステムがさらに軽量化されて復活し、『TW747』に採用されたのだ。

HONMA独自のシャフトを回転しない調整式

今、多くのメーカーが採用している調整式はシャフトが回転するタイプだが、HONMAは唯一、シャフトが回転も脱着もしないでライ角、ロフト角、フェースアングルを調整できる「ノン・ローテーティング・システム」を採用。

約5万坪の敷地に開発・製造の拠点と370ヤードのテストフィールド。

今年で創業61年を迎えた本間ゴルフは、 1982年から山形県酒田工場に開発・製造の拠点を置き、正真正銘のメイド イン ジャパンのモノづくりを続けている。2007年には370ヤードのテストフィールドが完成し、ロボットマシンやトラックマンなどによる分析テストも可能になった。その敷地は約5万坪!

シャフトも全て自社製造でスパインを管理!

酒田工場では約350名が働いていて、シャフトの開発・製造・生産はすべて自社で行なっている。特にシャフト部門においては最先端の機械を導入し、人員を増員することで、拡大を続けていた。

GOLF TODAY本誌 No.564 105〜109ページより

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