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ゴルフクラブ「ヤマハ インプレスUD+2」の開発ストーリー秘話|ギアモノ語り

2019/02/17 ゴルフトゥデイ 編集部

今、アイアン市場では“飛び系アイアン”が人気になっているが、その発端が2014年発売の初代『インプレスRMX UD+2』だった。“+2”とは2番手の飛距離アップという意味で、『UD+2』は初代も2代目も人気モデルとなった。しかし、実はヤマハが“+2番手”を追求したのは5年前からではない。『UD+2』シリーズの誕生前からヤマハには“+2番手の伝統”があったのだ。

ヤマハの音と重心。3代目は飛距離だけじゃない。

「他社の飛び系アイアンより低い重心。だから、アイアン弾道で飛ぶ!」

山内 勇樹(ヤマハ株式会社 ゴルフHS事業推進部 商品開発グループ アイアン担当)

入社7年目の山内はアイアンの開発担当になって6年。初代から『UD+2』の開発に携わってきて社内では“ヒットメーカー”とも言われている。

そんな山内は今年発売の3代目について、「まず、前作より絶対に飛ぶことが開発のテーマでした。他社からも飛び系アイアンが続々と発売されているので、飛距離で負けるわけにはいきません」

山内が改良したのが重心だった。3代目『UD+2』アイアンのヘッドパーツを見ると、ヒール内部が大きく削られていた。

「実は当社契約の藤田寛之プロのアイアンの打球痕を調べると、打点は少しヒール側にあるんです。 それは理に叶っていて、一般的なアイアンのヘッドはネックの重さによって重心がヒール側になります。だから、本当は少しヒール側で打ったときに最も飛距離が出せるんです。しかし、『UD+2』のターゲットであるアベレージゴルファーは、センターで打つ人が多い。だから、今回はヘッド内部のヒール側を大きく削って、重心をセンターに近づけました」

さらに重心の高さについても、『UD+2』が他社の飛び系アイアンと違う点があると言う。

「他社製品の飛び系アイアンの重心の高さを調べると地面から20㎜から25㎜ですが、『UD+2』は19 ㎜で最も低い。よく、飛び系アイアンは“5番アイアンに7番と書いているだけじゃない”という声もあるのですが、私は7番アイアンの定義として“グリーンを狙う番手”だと考えています。だから、『UD+2』は低重心によって打ち出しも高くて、スピンが効く。アイアンらしい弾道で飛ぶだけでなく、狙えるのです」

重心を前作より4㎜センター側に

ヤマハ インプレスUD+2 アイアン

アイアンのヘッド内部を見ると、ヒール側だけが大きな空洞になっている。山内に聞くと、「ネックに近いヒール側を削ることで、前作に比べて重心は約4㎜センターに近くなりました。またL字フェースは前作でも採用していましたがソール部分を長くしたことで、高反発エリアもより広くなっています」

「RMXの技術も融合。ヤマハだからこそ打球音は譲れない。」

竹園 拓也(ヤマハ株式会社 ゴルフHS事業推進部 商品開発グループ ウッド担当)

この『UD+2』は異色のブランドでもある。RMXの名を冠した初代はアイアンのみで、2016年発売の2代目からドライバーがラインナップ。

その理由をウッド担当の竹園は、「実は2014年の初代に向けて、ドライバーなどのウッド類も開発していたのですが、+2番手の飛距離を実現するモデルが完成しなかった。だから断念しました」

“+2”が名前だけになっては意味がない。ドライバーで言うと、それは20ヤードアップを意味するが、竹園はターゲット層を限定した20ヤードアップに道を探した。

「初代はRMXブランドだったので調整機能をつける必要があった。それが20ヤードアップの壁でした。しかし、2016年に発売した2代目からインプレスになったことで、調整機能に使っていたウェイトをヘッドに集中することができ、より理想的な重心バランスを追求できました。それと、ターゲット層をアベレージゴルファーとすることで、重心角の大きい大胆な設計に挑戦できたのです」

上級者ゴルファーの飛距離を20 ヤード伸ばすことは難しいが、スライスに悩むゴルファーであればスライスを解消することで実現できる。今年発売された3代目の『UD+2』でも重心角は33 度あり、ヘッド重量の約 20%にあたる37グラムのウェイトをヘッド後方に配置して、つかまりを良くしているのだ。

また竹園はドライバーにおいては、打球音にこだわったと語る。

「今回は打球音が開発の命題でした。何度も金型を修正して、量産に入るギリギリの段階まで、コンマ数ミリ単位でヘッドを削って最高の打球音を追求しました。ヤマハは楽器メーカーでもあり、打球音にはこだわりがあります」

今、多くのドライバーのヘッドにはサウンドリブが導入されているが、実はヤマハは1996年の『パワーマジック』で、それを先駆けてとりいれていて、そのスピリッツは今も継承されているのだ。

最後は人間の感性で打球音の良いヘッドを

ヤマハ インプレスUD+2 ドライバー

ヤマハには社内にデザイン部門があり、竹園氏は「今回も3人のデザイナーから3タイプのソール形状が候補に上がりましたが、飛距離はもちろん、打球音の良さを考慮してソールを選びました。今はCADのシミュレーション段階でも音を確認できますが最後は人間が打って、感性で聞いた打球音で最終的に決めています」と語る。

ヤマハでは楽器のテストも行う半無響音室でゴルフクラブの打球音を検証。

10年、20年前から続く“+2番手”の伝統。

実は『UD+2』には原点がある。それが2010年に発売されたシニア向けの『インプレスX クラシック』だ。

アイアン担当の山内は、「あのモデルはシニア層のゴルファーが“番手以上の飛距離”を飛ばせるコンセプトで購入者からも『飛ぶ!』と評判でした。それをアベレージ向きにしたのが『UD+2』です」

さらに、時代を遡ると2004年 の『インプレスD』ドライバーでも“20ヤードの飛距離アップ”が開発テーマになっていた。

かつては開発チームでアイアンを担当し、現在はマーケティンググループのリーダーを務める柴氏は、「ヤマハの製品には楽器でもゴルフクラブでも本質、卓越、革新という哲学が継承されていて、それはゴルフクラブで言うと打感であり、形状であり、飛距離です。だから、私がまだ開発にいた頃の2000年モデル『グランディス602』アイアンでも、当時から“+2番手の飛距離”を追求していました」

なぜ、ヤマハの飛び系はロングセラーになったのか?実は“+2番手の飛距離”は『UD+2』からはじまったことではなく、ヤマハの伝統として正統に進化してきた本質だったのだ。

ドライバー、アイアンともにシャフトがしなる部分にタングステンパウダーを内蔵したチップウェイトテクノロジーを採用。当たり負けを防ぐことでエネルギーロスを抑えている。

浜松にある天竜工場のゴルフ棟の玄関前は芝生になっていて、開発段階でも芝の上で“クラブの顔”を構えてチェックするのもヤマハの伝統になっている。

■ヤマハ インプレスUD+2 アイアン/ドライバーのスペック

《インプレスUD+2 アイアン》

  • ロフト角(7I):26度
  • シャフト:N.S.PRO ゼロス7(S)、オリジナルカーボン MX-519(i SR/R)
  • 価格:96,000円+税(4本セット・#7~PW)

《インプレスUD+2 ドライバー》

  • ヘッド体積:460㎤
  • ロフト角:9.5、10.5度
  • クラブ総重量:286グラム(オリジナルカーボンTMX-419D)
  • 価格:80,000+税

GOLF TODAY本誌 No.559 105〜108ページより

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