ヤマハ RMX 120/220|世界に勝てる本物の技術を(2/2)
見せかけではない最高初速の答えが小さいリング。
それは小さな変化ではなく、改革というべき変貌ぶりだった。約1年ぶりに訪れた浜松にあるヤマハのゴルフ部門は、企画や開発の担当者、開発スタイルや開発コンセプトも前作とはすべてが変わっていた。そして最も変わったのは、RMXの新しいヘッドだった。
●YAMAHA RMX 120/220|世界に 勝てる 本物の技術を
(1/2): RMXシリーズ史上、最大の大変革
(2/2):見せかけではない最高初速の答えが小さいリング
「派手なテクノロジーではなく、
本当に結果が出る技術を」
ヤマハ株式会社
ゴルフHS事業推進部
商品開発グループ
米山 太基
Taiki Yoneyama
見せかけではない最高初速の答えが小さいリング。
RMX 120Driver
●SPEC
ヘッド体積/455㎤
ロフト角/9.5度(±1)、10.5度(±1)
慣性モーメント/5180g・㎠
価格(ヘッド単体)/4万3000円+税
RMX 220Driver
●SPEC
ヘッド体積/460㎤
ロフト角/9.5度(±1)、10.5度(±1)
慣性モーメント/5760g・㎠
価格(ヘッド単体)/4万3000円+税
慣性モーメントが大きくなったことは、前作と今作の計4モデルを並べてみると、大きさやソールが長くなったことが見た目の違いにも現れている。しかし、もう1つの“飛んで、曲がらない”ための進化はヘッド内部に隠されている。開発の米山に話を聞くと、
「今までの『RMX』は打ち出し角、スピン量で飛距離を伸ばそうとしましたが、今回は明確にボール初速を上げるというコンセプトでした。そのテクノロジーがブーストリングという新技術で、フェースの裏側にリブとホーゼルをリングのように1周させることで、ボール初速を最大化しました」
なぜ、このブーストリングのリブがあることで初速が上がるのか?
「初速を上げる方法は2つあって、ここにも時代の変化があります。1つはインパクトの瞬間にヘッド全体をたわませることで、たわみの復元力によって、ボール初速を上げるという方法です。こちらは前作までの『RMX』の発想でした。しかし、今、海外メーカーではインパクトのエネルギーをヘッド前方で食い止めて、その充填したエネルギーをボールに伝えるテクノロジーが最先端です。ブーストリングも発想は似ていて、リブがあることでヘッドの膨らみ、たわみを抑え、フェース付近に蓄積したエネルギーをボールに伝えるテクノロジーになっています」
フェースの上下を一周するリング
「ヘッド内部のリブは派手に大きくすると、リブの重さによって初速が落ちたり、慣性モーメントが最大化できないので、小さくしています。ソールにある凹凸も、決してデザインやハッタリではなく、この溝があることで剛性が高くなっています」(米山)
取材時にヘッド内部のリブを見せてもらった印象としては、想像していたより小さいリブだった。それについて梶山は、
「確かに地味に見えるかも知れませんし、プロモーションを優先するなら、もっと派手に大きくした方が効果的です。でも、今回はとにかくハッタリとかではなく、本当のテクノロジーにこだわりました。このリブの幅や高さは、何度もツアープロへのテストを重ねて、最高の結果が出た形状になっています」
今回はツアープロへのテストも、異例のスケジュールだった。過去のRMXでは発売の2、3カ月前からテストがはじまったが、このモデルは1年前からスタートしていたと梶山は語る。
「初めてプロトタイプを持ち込んだのは、昨年8月の試合会場でした。その後は慣性モーメントにおいても、ブーストリングの大きさについても、何度もトライ&エラーを重ねて完成度を高めていきました」
飛距離と慣性モーメントを最優先に開発しながらも、米山は「フェース裏の肉厚分布や打球音の工夫など、過去のヤマハの技術も生かされています」と語る。
そして約1年後となる今年8月の新製品発表会で藤田寛之は「テストの期間も3倍くらいに増えて、ある意味で僕達プロはモルモットのようになっていた」と語っていた。この「モルモット」という言葉も昨年の秋に梶山が藤田寛之に挨拶に行った際に使ったフレーズだった。
「言葉は悪いですけど、藤田プロには『もっとヤマハが良いクラブを作るために、モルモットのような実験台として使わせてください』とお願いしました」
そんな藤田寛之は「今回のモデルもすごく楽しみですが、今後はもっとヤマハに期待できます」とも語っていた。ヤマハと契約して約25年の藤田。数年前には「ポテンシャルを感じない」と語っていた男は、ヤマハの劇的な変化を最も敏感に感じているようだ。
最後に2人は「入社9年になりますが、入社以来、最もクラブが変わった年だと思います」(米山)「元々、ヤマハは音楽の分野では斬新なイノベーションを起こす会社です。だから今回の変化も“ヤマハらしい変化”だと思います」(梶山)
YAMAHA RMX 120/220|世界に 勝てる 本物の技術を(2/2)終
GOLF TODAY本誌 No.568 108〜108ページより