ゴルフクラブ「PING G410」開発ストーリー秘話(1/2)|ギアモノ語り
話題の新作開発ストーリー秘話「PING G410」前編
~親子3代にわたる不変の哲学~
今年で創業60年目を迎えたPING(ピン)。新モデルには『G410プラス』という名称がつけられているが、親子3代にわたる家族経営を続け、“前作を超えない限り発売しない”という哲学を継承してきたピンは、常に何かを“プラス”して60年の歩みを続けてきた。
「PING G410」60年の継承とプラス。
1959年に創業者カーステン・ソルハイム氏(写真左)が世界初のトゥ・ヒールバランスのパター「1-A」を完成させてはじまったピンの歴史。写真右が現会長であり息子のジョン・A・ソルハイム氏。
変化をプラスとは言わない。今年で10代目となるGシリーズでは一貫して深・低重心、高慣性モーメントにこだわり、やさしいクラブであり続けた。
7代目『G30』から空気抵抗を軽減するタービュレーターを、『G410』ではピン史上初の弾道調整ウェイトをプラス。ピンはやさしいクラブを進化させている。
慣性モーメントを犠牲にしない調整機能に。
ピンは流行を追いかけるメーカーではない。2004年のGシリーズ誕生以降も浅重心、カーボンコンポジットなど多くのトレンドが生まれてきたが、ピンは深・低重心と高慣性モーメントを追い続けてきた。だからこそ『G410』に他メーカーで主流になっている弾道調整ウェイト機能が追加されたことには驚きがあったが、そこには、もう1つのピンの哲学があった。
今回、ピンゴルフの本社で開発部門のディレクターであるライアン・ストーキー氏に話を聞くと、
「前作『G400』では3つのヘッドタイプを用意することで最高レベルのフィッティングを可能にしたと思っていましたが、我々はさらに上のレベルでフィッティングのリーダーであり続けたいと思いました。だから今回は『G410プラス』という1つのヘッドでドロー、フェード、スタンダードの3つの重心を選べる調整機能をプラスしたのです」
ライアン・ストーキー(ピン 製品開発責任者)
今でこそ、フィッティングという言葉はゴルファーに広く浸透してきたが、元々は約年前にピンがパイオニアとして始めたのがフィッテイングだった。さらにライアン氏は、この調整機能が変化ではなくプラスであることを語ってくれた。
「調整機能をつける上で最も大きかったのは、高い慣性モーメントを犠牲にしなかったことです。『G410プラス』では上下左右で9000g・㎠を超える慣性モーメントを実現し、調整機能をプラスしています」
なぜ、高慣性モーメントを継承しながら調整機能を追加できたのか。それはウェイトをつけるポジションにピン独自のアイデアがあった。
「慣性モーメントへの影響は、フェースに近い場所に何かをつけるほど大きくなります。逆にヘッド後方に行くほど影響は小さい。『G410プラス』のウェイト調整機能は最後方も最後方で、クラウンとソールのつなぎの部分にあります。ここに調整機能をつけたことでパフォーマンスを犠牲にしないで実現できました」
ヘッド最後方に調整ウェイトを!
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ライアン氏が説明してくれた解析データでは赤い部分が最も慣性モーメントへの影響が大きく、緑色の部分が最も影響が少ない部分。
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ピンではアリゾナ州立大学など、米国の空洞実験ができる大学と共同研究をして空気抵抗を研究してきた。
確かに他社のウェイト調整機能はソール後方部であったり、ソール中央のモデルが多い。さらに、もう1つの違いが他社ではウェイトを移動させるタイプが主流だが、『G410プラス』は3つのポジションを選ぶ脱着式になっている。
「その理由はシンプルな内部構造にしたかったことと、移動式だと理想ではない重心ポジションになった場合にベストパフォーマンスが出せなくなるからです。実は開発段階ではフィッティングデータやプレーヤーズテストを繰り返してきましたが、微妙な重心移動ではあまり結果が変わりませんでした。だからはっきりと違いが出る3箇所にしました」
さらに、『G410プラス』で進化したのがタービュレーターだった。
「これは前作『G400』と比べても明らかなのですが、歴代のタービュレーターで最も高さがあり、角度がついています。触ってもらうとわかるのですが、突起物と言えるくらい高さがあります。今までは、タービュレーターをつけることでゴルファーが“構えにくい”と思われたら意味はないと思っていましたが、歴代の『G30』『G』そして『G400』と続けてきたことで、慣れてきた部分もあり、違和感をもたれないようになった。だから今回は最も“攻めた設計”で、空気抵抗を最大限に削減しています」
G400よりも高いタービュレーター
『G400』の大ヒットもあり、日本市場でのピンの売上げは10年連続増収を続けている。それは変化ではなく、継承しながらプラスすることでゴルファーから信頼されている証ではないだろうか。
GOLF TODAY本誌 No.563 113〜116ページより
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