大里桃子も実践中! ゴルフ上達に役立つ食事の摂り方
プレー前後に何を食べるかも、意外と重要なのです
食事に気を使うことで、ゴルファー自身が持つパフォーマンスを最大限に引き出せる。そのアシストをしてくれるのが、アスリートフードマイスター。
今回は大里桃子プロの食事アドバイスを担当する最高レベルのマイスターに、ゴルファー向けの食事について教えてもらった。
大里桃子 (伊藤園)
(おおさと・ももこ)1998年8月10日生まれ。熊本県出身。2018年プロテストに合格後、入会からわずか23日で『CAT Ladies』で初優勝。史上最短記録の快挙を成し遂げた。2019年秋からアスリートフードマイスターに食事指導を仰ぎ、技術面と食事面の双方から自身のレベルアップに励んでいる。
石村智子さん
管理栄養士とアスリートフードマイスター1級の資格を持つ。2013年『Team for J.A.』を設立。ジュニアアスリートのサポートを開始。アスリートフードマイスター養成講座の認定講師も務め、小学生からプロアスリートまでのチームやパーソナルサポートを行う。また、セミナーやスポーツ栄養サイトのコラムやレシピを発信。ゴルフ場のランチメニュー開発協力の実績もある。2019年10月から大里桃子の食事サポートを担当している。
アスリートフードマイスターとは?
アスリートフードマイスターは、一般社団法人日本アスリートフード協会が認定する民間の資格。スポーツ選手をはじめとするアスリートたちのパフォーマンスを最大限引き出すために、年齢別や種目別はもちろん、摂取するタイミングにも合わせて最適な食事プログラムを提案できる知識を身につけている。2019年賞金女王・鈴木愛も、この資格取得を目指しているという。
食事内容でゴルフが変わる!? ゴルファー向けレシピ4選
直接的には関係がないように思われる食事とゴルフ。でも、栄養バランスの良い食事を摂り続けることで、体調が良くなって、いつもより長い時間、練習できるようになったり、脳の働きが良くなって効率的なマネジメントができるようになるなど、結果としてスコアアップにつながることも多い。では、どのような食事がプラスになるのか、誰でも簡単に作れるゴルファーにオススメのレシピを状況別に教えてもらった。
■①自家製サラダチキンのパワーサラダ
【材料】
サラダチキン(鶏むね肉 1枚・砂糖 小さじ1・塩 小さじ1/2・コショウ・タイム・オレガノなどお好みのスパイス類)、野菜、ゆで卵、好みのフルーツ、大豆の水煮、チーズ、ナッツなど
【作り方】
1 鶏むね肉は皮を取り除き、砂糖・塩・スパイス類を揉み込み、1時間以上置く。
2 鍋に湯を沸かし、中火で5〜6分ボイルし、火を止めそのまま冷ます。下味付けに砂糖を使ったことにより保水効果があり、そのまま冷ますことにより食感がパサパサにならない。
3 出来上がったサラダチキンを好みの大きさにカットし、ほかの食材とともに彩りよく盛り付ける。
残念ながら、コレを食べたからすぐに飛距離アップするという食べ物はありません。ただし、必要な栄養素を取り入れた食事を続けていくことで、筋力アップにつながり、最終的に飛距離が伸びる可能性は高くなります。こちらは筋力・瞬発力アップを図れるメニューで、ポイントは鶏肉のほか、卵やチーズ、大豆など2種類以上の食品からタンパク質を摂っている点。また、アミノ酸の代謝や神経伝達物質の生成に関与するビタミンB6を多く含む食品の摂取も大事です。鶏肉は低脂肪高タンパク質で、ビタミンB6も多く含まれています。市販のものでも良いのですが、簡単に作れるのでぜひトライしてみましょう。食事はトレーニング後、なるべく早いタイミング摂るほうが効果的です。
大里桃子の感想
サラダチキンは大好きです! 食事が直接的な要因ではありませんが、このオフにスイング改造に取り組んだこととの相乗効果で、飛距離が伸びました。疲れにくくなったので、長時間トレーニングができます。
■②ニラ入り納豆キムチ炒飯
【材料(1人分)】
ご飯 大茶碗1杯分・納豆 1パック・白菜キムチ 50g・ニラ 1/4束・ゴマ油 適量・しょうゆ 少々(キムチの塩分濃度によって量を調節)
【作り方】
1 フライパンにゴマ油を熱し、納豆を炒め、白菜キムチを加えさらに炒める
2 温めたご飯を加え、強火でパラパラになるように炒め、2㎝くらいに切ったニラを加え、しょうゆを鍋肌に落とし、混ぜ合わせる。しょうゆは必ず少量を入れて味見をしながら、調整すること。
蒸し暑い日本の夏、食欲も減退して夏バテを起こしやすい季節でもあります。食欲がないからと言って、素麺などサッパリしたものばかりを食べていると、パワーも落ちてしまいます。また、ゴルフのプレー時間は長いので、バテやすい身体では、好スコアどころか、18ホールのプレーすら、危うくなります。そんなときは、効率よくエネルギーとなる炭水化物と、代謝のビタミンと言われるビタミンB群が含まれるものを積極的に摂りたいものです。こちらの炒飯の材料になっている納豆やキムチには、ビタミンB群が多く含まれています。さらにニラをプラスすることで、抗酸化作用のあるビタミンAとCも摂取できます。キムチのピリっとした辛さが食欲を刺激して、パワーの
源を作り出します。
大里桃子の感想
疲れにくい身体を作る栄養素をたっぷり含んだものを食べるように心がけています。最終日のラウンド後半でも、全力でプレーに望める体力をつけておくために、日々の食事を大切に考えるようになりました。
■③温玉ぶたしゃぶうどん
【材料(1人分】
冷凍うどん1玉・豚もも薄切り肉 80g・ベビーリーフ 1/2袋・温泉たまご1個・プチトマト 2個・ゴマだれ(市販) 適量・おろしニンニク 少々・白ゴマ 少々
【作り方】
1 鍋に湯を沸かし、冷凍うどんを1分くらい(袋の表示に合わせる)茹で、麺のみザルにあげ冷水で冷やし、器に盛る
2 ①の鍋に豚肉を一枚ずつ入れ、火が通ったら氷水で冷やし、水気を切り、ベビーリーフ・温泉たまご・プチトマトとともに麺にのせ、おろしニンニクと白ゴマを加えたゴマだれをかける。お好みでラー油をプラスしても良い。
勝負がかかったラウンドの前日、「勝つ」のゲンを担いで「カツ」を食べるという人も多いかもしれませんが、揚げ物はあまりオススメできません。揚げ物のほか、油を多く使った炒め物は胃がもたれやすくなりますし、お刺身などの生物も食べないように選手にも指導しています。ポイントは、炭水化物を多めに摂り、消化の良い食品を選ぶこと。また、炭水化物をエネルギーに変換するビタミンB1と、ビタミンB1の吸収率を上げるアリシンを一緒に摂りましょう。豚肉は肉類で最も多くビタミンB1を含んでおり、アリシンはニンニク、タマネギ、ネギ、ニラなどに多く含まれる栄養素。ベビーリーフやプチトマトは、洗うだけで食べられて栄養価が高いオススメ野菜なので、このメニューにも取り入れました。
大里桃子の感想
以前は試合中でも焼肉などを食べていましたが、アドバイスを受けるようになってからは、消化の良いものを食べるようになりました。きちんと3食をバランスよく摂るようにしたら、身体のキレも変わってきた気がします。
■④マグロとタコの韓国風ちらし寿司
【材料(1人分)】
ご飯 大茶碗1杯分・すし酢(市販) 大さじ1・マグロ赤身 50g・茹でタコ 50g・枝豆(冷凍可) 適量・プチトマト 2個・レタス 2枚・A(ゴマ油 小さじ1・しょうゆ 小さじ1・コチジャン 小さじ1・白ゴマ 少々)
【作り方】
1 ぶつ切りにしたマグロとタコ、鞘から出した枝豆、1/4に切ったプチトマトをボールに入れ、Aの調味料を加え混ぜ合わせ、30分くらい漬けておく
2 ご飯にすし酢を加え、切るように混ぜ、器に盛り、レタスと①を盛り付ける
ゴルフの疲れはその日のうちに解消したいもの。疲れを翌日に持ちこさないために、ラウンド後の疲れを一気に吹き飛ばせるメニューが食べたいですよね。運動後の疲労回復のための食事のポイントは、①失ったエネルギーを補給する、②筋肉修復のためのタンパク質を2種類以上の食品から摂ること(このメニューではマグロ赤身・タコ・枝豆が入っています)、③疲労回復を促すタウリンやクエン酸などを含む食品を摂ることです。マグロの赤身は低脂肪高タンパク質で鉄分も多く含まれますし、タコは低脂肪高タンパク質でタウリンを含んでいます。酢はクエン酸を含み、酢飯にすると食欲がないときも食べやすいと思います。火を使わずにササっと作れて、疲れも取れるので、ぜひ試してください。
大里桃子の感想
試合が終わったら、好きなものを食べても良いと言われています。お肉も好きですが、新鮮なお魚も好きなので、北海道の試合では海鮮丼を食べに行きたいです(笑) 規則正しい食事で疲れがとれるのも早くなったみたいです。
とにかく手軽にバランス良く! 最強のコンビニフードが知りたい!
ゴルファーにとって、コンビニご飯は切っても切れないと言っても過言ではない。そこで今回はセブンーイレブンの種類豊富な商品群から、石村さんオススメのフードを教えてもらった。
■ラウンド前の朝食として選ぶなら
炭水化物をエネルギーに換える働きがあるビタミンB1を含むタラコ、鮭、納豆などの具を使用したものや、エネルギー源となる炭水化物を多く含み、腹持ちも良い赤飯のおにぎりや、いなり寿司。パン食の人は、ビタミンB1を多く含むハムを使ったサンドイッチを選ぶと良い。ただし、ハムカツやカツサンドなどの揚げ物はNG。さらに、デニッシュ系や、カレーパンも油脂を多く含むため、オススメできない。飲み物は、野菜ジュースやヨーグルトドリンクなどを選ぼう。
■ラウンド後の空腹をうめるなら
肉まん、あんまん、あんパン、カステラ、バナナ、枝豆、サラダチキン、ちくわ、魚肉ソーセージ、など。失ったエネルギー補給のための炭水化物、筋肉を修復するためのたんぱく質をラウンド後なるべく早いタイミングで摂ると疲労回復に役立つ。飲み物は良質なたんぱく質を多く含む牛乳や、疲労回復効果が期待できるクエン酸を多く含むオレンジジュースを選ぼう。ただし、夕食に影響しないよう、食べ過ぎと消化に時間がかかる油の多いものはNG。
■バナナはマルチプレーヤー
コンビニフードではないけれど、ゴルファーならバナナを用意しておくと良い。エネルギー補給にもなり、様々な種類のビタミン・ミネラルを含んでいる万能フルーツだ。さらに夏のラウンド時、脚がつりやすい人にもオススメ。
■マイリセットフードも決めておこう!!
朝、コンビニに寄るのなら、ラウンド中に食べるものも購入しておくと良い。噛むという行為は、脳に刺激を与えてくれるのでプラスになり、ゴルフはプレー時間が長いこともあり、エネルギー切れを防ぐ効果も得られる。大里プロはラウンド中にはサラダチキンやチクワなどを食べているとのこと。実は、何かを噛むという行為は、気持ちが落ち着く効果も得られるという。渋野日向子プロがラウンド中の待ち時間に駄菓子を食べているのも理にかなっているのだ。さらにゴルフではミスを引きずらないことも大切。食べることで気持ちをリフレッシュできる食べ物を一つ決めておくようにしたい。
■アスリートにとっての基本の食事の形を覚えよう
常に6品揃えなければダメなのかと思われがちだが、1食の中にこの要素が入っていれば大丈夫。例えば「カレーライス」。肉類を使用したものや、シーフード、または豆のカレーなど、いろいろな種類があるが、それらの材料を使用することで「主菜」と考えられる。そこに入っているタマネギ、ニンジン、ジャガイモなどの野菜は「副菜」に。さらにご飯は「主食」。つまり、一皿で3つの要素を満たせる。これに、サラダとスープ、フルーツをのせたヨーグルトを加えれば、「基本の食事の形」に整えることができる。レトルトカレーでも、レンジでチンした野菜をプラスしたり、たっぷりの野菜サラダを添えれば、条件を満たせる。難しく考えすぎないでも、6品目は実現するのだ。食事の改善で健康な身体が手に入れば、結果的にゴルフの成績アップにもつながる。
ゴルフ場のランチは何を食べるべきか?
新型コロナの影響で、スループレーで営業を再開したゴルフ場も多いようだが、一般的には日本のゴルフ場はお昼休憩をはさむスタイル。そこで何を食べるかで、午後のプレーに影響する。石村さんは2017・18年に北海道ブルックスカントリークラブの昼食メニュー監修を担当。そのメニューを参考にランチに何を食べるべきか考えてみよう。
■疲労回復に効果大! 豚肉とカラフル野菜の温玉丼
アスパラガスにはアスパラギン酸、小鉢の梅干しにはクエン酸がそれぞれ含まれ、疲労回復効果が期待できます。豚肉のビタミンB1が糖質をエネルギーに変換、タウリンやオルニチンを含んだしじみ汁が疲労&内臓の機能回復効果をもたらします。さらに、パプリカで抗酸化作用のあるビタミンC、ゴマのセサミン・ビタミンEが錆びない身体をもたらす。
■効率的にエネルギーチャージ 野菜たっぷりガパオライス
にんにく、たまねぎ、ねぎに含まれるアリシンが豚肉のビタミンB1の吸収を高めてエネルギーに変換。ごはん、春雨などのエネルギー源と一緒に摂ることで効率的にパワーアップのためのエナジーチャージを可能にする。キウイフルーツでビタミンCを摂取、ヨーグルトでイライラ鎮静効果のあるカルシウムを補給し、すっきりして午後のラウンドへ!
メニューを見ながら栄養素を考えることも楽しく思えてくる!
訪れたゴルフ場で、これと似たメニューがあれば、ランチとしてチョイス。他にも、夏らしいメニューの代表でもある冷やし中華などは多くのゴルフ場で季節限定メニューとして、ラインナップされているが、いろいろな食材が摂れるのでオススメ。デザートにフルーツがセットされていればなおいい。また、ゴルフ場のド定番ともいえそうな「豚肉の生姜焼き」も、豚肉のビタミンB1がゴルファーのプラスになり、キャベツの千切りなどの野菜が添えられていることも多いのでオススメ。これらがない場合でも、前ページで挙げた6品目を満たしているかに注目して、揚げ物や油っぽいものを除外して選ぶようにしたい。