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ヤーデージを伸ばすのは必然なのか、無用なのか?

重箱の隅、つつかせていただきます|第5回

2020/12/11 ゴルフサプリ編集部

スイング、ゴルフギア、ルールなどなど……。ゴルフに関わるすべての事柄の“重箱の隅”をゴルフライター・戸川景が、独自の目線でつつかせていただくコラムです。

GOLF TODAY本誌 No.582/78ページより

戸川景
とがわ・ひかる。1965年3月12日生まれ。ゴルフ用具メーカー、ゴルフ誌編集部を経て㈱オオタタキ設立。現在、ライターとしてゴルフのテーマ全般を手掛けている。

ヤーデージを伸ばすのは必然なのか、無用なのか?

近年のプロツアーでのコースセッティングで驚くのは、そのヤーデージだ。たとえば9月の全米オープンは、全長7477ヤードでパー70。

長すぎる、と感じたが、コースセッティングの責任者はメジャーの舞台として、優勝スコアを8オーバーにしたかったらしい。つまりは世界一流のトッププレーヤーに、74平均ぐらいは打たせたかったわけだ。

それなら納得、と思っていたら、優勝したブライソン・デシャンボーのスコアは6アンダー。平均340ヤード超のドライバーショットで攻略してしまった。

こうなると、またぞろボールやクラブでの飛距離制限が必要だとか、もっとヤーデージを伸ばす必要があるのか、といった議論になりがちだが、私は少し違うと思っている。

今以上のギアによる飛距離制限は、スポーツの楽しみを減らすだけなのでナンセンス。この話は別の機会に譲るとして、ヤーデージはどうすべきか。私は伸ばす必要はなく、むしろ縮めてはどうかと考えている。

たとえばパー4の10ホールが380ヤード平均、パー3の4ホールが180ヤード平均、パー5の4ホールが500ヤード平均なら、全長は6520ヤード。

こう考えると、競技参加者の大半が220〜260ヤード(ドライバー)ヒッターならヤーデージは6500ヤード前後が妥当なはず。女子ツアーのセッティングとほぼマッチする。

同様に、男子ツアーの競技参加者の大半が260〜300ヤードヒッターなら、全長7000ヤード前後で十分だと思う。つまり、現状以上に伸ばす必要はない。

でも、米ツアーのように330ヤードヒッターがゴロゴロいるとなるとどうか、という意見もあると思う。ロングヒッター有利にはしたくない、パー4のセカンドでウェッジ、パー5をアイアンで2オンはさせたくない、と。

突き詰めると、プレーヤー全員に勝利のチャンスが巡るようにしたいのだろうが、まず忘れてはいけないのがロングヒッターも努力を重ねている、ということ。他のスポーツ同様、パワーアップはアドバンテージにつながらなければおかしい。特にゴルフの場合は、飛ぶほどにトラブルになりやすいリスクもある。飛ばして曲げない技術の研鑽が正当に評価されるコースセッティングでなければならない。

だから私は、逆に7000ヤード未満に縮めることを勧めたい。安易に、特にパー4ホールのヤーデージを伸ばすとロングヒッターが有利になり、アベレージヒッターのチャンスが減ってしまうことは、今回の全米オープンではっきりしたと思う。

さらに言えば、ツアーのコースセッティングは、ロングセカンドショット、アイアンショットの実力判定ができるようにするのが正しいと思う。

ツアー選手は飛ばせて当たり前、ショートゲームが上手くて当たり前。そうでなければメジャーの舞台に立てるはずがない。勝つ者は優れたショットメーカーであるべきだ。

ロングヒッターを牽制したければ、アイアンで狙うよりウェッジの距離で狙うほうが難しくなるような設定にすればいい。

たとえば、飛ばすほどにライの傾斜が強くなるとか、ラフが深くなるとか。ウェッジだとスピンが利きすぎて、戻ってこぼれるようなグリーンもいい。

そうすればコリン・モリカワやザック・ジョンソン、ジム・フューリックらが優勝した時のような、ショットメーカー有利の設定になると思う。


Text by Hikaru Togawa
Illustration by リサオ


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