デシャンボーのメジャー初Vを支えたのは“小技”の成長!
「いまどきツアーをデータ斬り!」国内外のゴルフツアーをあらゆるデータで一刀両断 Vol.46
全米オープンでブライゾン・デシャンボーがメジャー初優勝を飾った。飛距離やパワーばかりがクローズアップされるデシャンボーだが、データを分析すると違う部分の成長が難コース攻略につながったことがわかった。
デシャンボーのメジャー初Vを支えたのは“小技”の成長!
平均ストローク74.018、1日あたり約4オーバーの難コースで一度もオーバーパーを叩かずに初メジャータイトルを獲得したデシャンボー。2位に6打差をつける圧巻のプレーだった。
このコラムでも取り上げたがデシャンボーは昨シーズン、米ツアーのドライビングディスタンス歴代最高記録(322.1ヤード)をマークするなど肉体改造で一気に飛距離を伸ばした。全米オープン開幕前には「力でコースをねじ伏せる」とコメントし、ティショットでドライバーを多用することを示唆していたようだ。
その言葉どおりにドライバーでぶっ飛ばして、ラフに入ってもパワーでボールを運ぶシーンが何度も見られた。フェアウェイをキープしたのはパー3以外の56ホール中23ホールで、確率は41.07%。1981年以降の全米オープン優勝者では最も少ないフェアウェイキープ数だったらしい。
この数字だけを切り取れば、デシャンボーのフェアウェイキープがものすごく少なかったように映るが、そうではない。そもそも、今回はフェアウェイキープが非常に難しく、決勝ラウンドに進んだ61人中、デシャンボーの部門順位は26位。つまり、平均的だったのである。同部門の順位で比較すると2015年優勝のジョーダン・スピースは68位、2018年優勝のブルックス・ケプカが55位など、今回のデシャンボーより低い選手はいた。
さて、ここからが本題だが注目したいのはボギーの少なさである。オーバーパーホール数は11で最少。アンダーパーホール数の15は最多ではあるがマシュー・ウルフとジャスティン・トーマスも同数だった。ボギーの少なさを可能にしたのは小技の進化である。デシャンボーの大会スクランブリング(パーオンしなかったホールでパー以内の確率)は65.38%で3位だったのだ。つまり、ガンガン攻めてバーディをたくさん奪ったというよりは、グリーンを外してもしっかりとパーセーブしていたことが圧勝につながったのである。
デシャンボーのスクランブリングは米ツアーに本格参戦した2016〜17シーズンは57.32%で部門127位にすぎなかったが昨シーズンは63.92%で部門17位と急成長。そしてグリーン回りが非常に難しい全米オープンで昨シーズン平均よりいい数字をマークしたのだ。この小技の進化が根底にあったから積極的にドライバーで攻めて結果につながったのだと結論づけたい。
ちなみに、全米オープン終了時のデシャンボーの今季スクランブリング順位は58位であるが、これは開幕戦のセーフウェイオープンだけプレーした選手が軒並み上位にいるから。それだけ全米オープンでの“寄せワン”が難しいことを物語っている。
デシャンボーのシーズン別スクランブリング
シーズン | スクランブリング | 順位 |
---|---|---|
2016〜17 | 57.32% | 127位 |
2017〜18 | 59.84% | 63位 |
2018〜19 | 62.33% | 40位 |
2019〜20 | 63.92% | 17位 |
2020〜21 | 65.38% | 58位 |
※2020〜21シーズンは全米オープン終了時
文・宮井善一
1965年生まれ。和歌山県出身。スポーツニッポン新聞社でゴルフ記者を8年間務め、2004年にフリーのゴルフライターとして独立。ゴルフ誌などに執筆のほか日本プロゴルフ殿堂オフィシャルライターとして活動している。元世界ゴルフ殿堂選考委員。
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