2024年に9勝! シェフラーの気になる右足の動きはアドレスから「引く力」を入れている!?
一流プロのドライバーのマネどころ

2024年もスコッティ・シェフラーの年だった。PGAツアーでは7勝、パリ五輪では金メダルを獲得し12月の「ヒーローワールドチャレンジ」を含めると年間9勝を挙げている。世界ランキング1位を独走するシェフラーのスイングを分析する。
GOLF TODAY本誌 No.632 12~15ぺージより
2024年に9勝! 世界最強ゴルファーに学ぶこと気になる右足の動きはアドレスから「引く力」を入れている
右サイドを高くキープして理想のフェード軌道に

グレッグ・ノーマンも右足を引いていた
シェフラーのスイングと言えば、インパクトからフォローにかけて右足を後ろに引く動きが最大の特徴です(写真05写真06)。これは意識的に「右足を引こう」と思ってやっているわけではなくて、スイング中に起こる受動的な動きといえます。このポイントだけをマネするのはオススメしません。
シェフラーは典型的なフェードヒッターです。フェードヒッターはダウンスイングでアウトサイド・イン軌道でクラブを動かしたい。そのとき気をつけないといけないのが、右腰・右足が前に出ること。右サイドが前に出ると、クラブの通り道がなくなるので窮屈なスイングになってしまいます。
シェフラーのアドレスを見ると、アドレスのときから右足を絶対に前に出さないように、右足を後ろに引く方向に力を入れています。だから右足を蹴るタイミングでも右足が全く前に出ません。ダウンスイングで左足を踏み込んだ反動によって、最後に右足が後ろに動くというのがシェフラーならではのスイングメカニズムです。
個性的なスイングですが、かつて世界ランキング1位だったグレッグ・ノーマンも同じように右足を少し引いていました。

右足を引く方向に力を入れることによって、右足を蹴るタイミングでも右ヒザが前に出ない。

右足を引くことによってインサイド・アウト軌道にはならないので、フェードヒッターにとっての逆球(ドローボール)が出ない。
上半身が傾いてもダフらず、高打ち出しの理由は? 左軸スイングの“完成形 ”切り返しから“左足体重”
タテではなく、ヨコの動きを極めて世界No.1になった

左ヒザの動きでタイミングを合わせる
数年前に米国でも左軸スイングの理論が流行しましたが、シェフラーは左軸スイングの完成形とも言える選手です。 フェードヒッターは、左足を軸にした方がアウトサイド・イン軌道で上からヘッドを入れやすくなります。アドレスではすでに左足6:右足4くらいの体重配分になっています(写真01)。バックスイングの途中から少しずつ左足を踏み込みながら、切り返し直後では完全に左足に体重を乗せています(写真05)。
左ヒザの動きに注目するとトップでは少し内側に入っていたのが、切り返し直後は左側に動いています。左ヒザの動きによってシェフラーはヨコ方向に力を入れるタイミングをとっていると思います。インパクト以降では左足がめくれるような動きになっていますが、これがヨコ方向に力を使う選手の特徴です(写真06写真07)。タテ方向の力を使うタイプの選手だと左足がツマ先立ちになっていたり、ジャンプしているような姿勢になります。
インパクト以降は上半身がやや右に傾いていますが、右に傾くことによって打ち出し角を高くしています。アマチュアは上半身が傾くとダフリのミスが出やすいのですが、それは右足に体重が残っているからです。シェフラーのように早いタイミングで左足体重になれば、高弾道のフェードボールが打てます。
最近は地面反力という言葉が広まり、タテ方向の地面反力を使って飛ばす選手が増えていますが、シェフラーはヨコ方向の体重移動を利用した王道のスイングで世界ナンバー1プレーヤーとして活躍しています。

ワイドスタンスで軸をズラさない
スタンス幅をやや広めにすることでヨコ方向に体重移動しても軸がズレない。回転系のスイングタイプはスタンスを狭くする。

フィニッシュでも左足がめくれたまま
ヨコ方向の力を使って飛ばすタイプの特徴として、左足がヨコ方向にめくれる。シェフラーの場合、フィニッシュでも左足がめくれたまま。


スコッティ・シェフラー
1996年6月21日生まれ。190cm。PGAツアー通算14勝、メジャー2勝を挙げており、2024年は自身初の年間王者にも輝いた。PGAツアーでの3年連続MVPはタイガー・ウッズ以来の快挙。

解説:石井 忍
1974年8月27日生まれ。98年にプロ転向し、現在はツアープロからジュニアゴルファーまで幅広く指導。自身が主宰する「エースゴルフクラブ」を千葉、神保町に展開する。