1. TOP メニュー
  2. コラム
  3. ドライバーは育てて飛ばす時代? 全米プロの高反発テストを考察すると見えるものとは

ドライバーは育てて飛ばす時代? 全米プロの高反発テストを考察すると見えるものとは

ロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が現場で感じたゴルフエッセイ【毒ゴルフ・薬ゴルフ】第124回

2025/05/27 ゴルフサプリ編集部 篠原嗣典

シェフラー,Qi10

今年の全米プロはシェフラーが初優勝、メジャー通算3勝目を挙げました。そして、そのシェフラーは優勝会見の席で、不定期に実施される高反発違反検査が行われたことを明かしています。この話題から、ドライバーは使えば使うほど飛ぶようになるのではなかろうか? ということについて考察しました。

2025年全米プロで論争が再燃した高反発テスト問題

2025年の全米プロは、4月のマスターズでキャリアグランドスラムを達成したマキロイにメジャーに二連勝する期待が高まりました。そして、不調が心配されていた世界ランキング1位のシェフラーは、直前の試合で今季初優勝をして、その勢いのまま全米プロを獲るのではと注目されていました。

その全米プロの練習日の火曜日。出場選手をランダムに選出して、使用ドライバーの高反発違反検査が行われました。詳細は非公開ですが、出場選手の3分の1の選手をランダムに選出して検査をするのは、メジャーだけではなく、通常のトーナメントでも行われています。
その結果、話題だったマキロイと注目のシェフラーの使用ドライバーが違反判定を受けた可能性があり、使用できくなったのではと報道がありました。

こういうことが起きるたびに、熱心なゴルフファンの間で、高反発のテストはランダムな抜き打ちという現在の方法はアンフェアなので、毎試合全選手対象というフェアな方法に変更するべきだという意見が出て、論争になります。

マキロイ,Qi10

トッププロでもドライバーは目に見えない相性が影響する!

全米プロが木曜日に始まると、心配されていたように2人のドライバーは乱調気味で、出だしから調子が上がらず、特にマキロイは初日を3オーバーで終えています。

全く同じスペックのドライバーがあるのに、どうして同じように打ちこなせないのか?
不思議な話ですが、これが俗に言う“ドライバーは相性がある”という現象なのです。
アマチュアも経験することがあります。試打したドライバーの当たりが絶好調で、同じスペックのものを購入したのに、実際にコースに持ち込んだら、全く当たらないとか。練習場ではビンビンに打てるのに、コースでは全然ダメ、とか。
スペックや腕前、調子だけでは説明が出来ない相性があるのです。

結果として、マキロイはスコアを落としたままでしたが、シェフラーは彼の専売特許とも言える状況にアジャストしたら、一気にトップギアまで上げる能力を発動して、初日の後半から立ち直って、先行したライバルに追い着き、最終日には突き放して2025年の全米プロの勝者となりました。

マキロイは、サブドライバーにしたことが不調の原因ではないか? という周囲の疑問にノーコメントを貫きましたが、シェフラーは、自らのドライバーが違反になったことを認めた上、予備のドライバーの調整には苦労したけれど、どうにか間に合った、とコメントしたのです。
2人が使用していたドライバーは、共にテーラーメイドの『Qi10』でした。

ドライバーは使えば使うほど劣化して飛ぶようになる?

「そろそろ使用して1年になるから、検査になるだろうという予感があって、少し前からサブドライバーを練習で使って準備をしていた」
公式会見で、シェフラーはそう言いました。違和感がありました。

少し前から、噂はあったのです。最新のドライバーは、打ち込みをして劣化させたほうが明らかに飛ぶようになる、と。

今回注目を集めたテーラーメイドを始めとして、大手のメーカーの最新のドライバーは、高反発のフェースでヘッドを作り、最後の仕上げで、フェースの裏に樹脂を当てたり、支えで押したりして違反にならない数値まで落とすというテクノロジーで、ギリギリの数値の高反発適合ヘッドにしているのです。
噂は、樹脂は使用するほど劣化するので、抑える効力を失って、高反発係数が上がった飛距離アップドライバーが出来上がる、というものです。

ちなみに、メーカーが想定する耐久打数は、工業製品としての基準に合わせて2000回です。ちょっと多くボールを打つ人なら、数回の練習で2000球を打てます。
また、試打クラブも数週間で2000球オーバーになります。先程の“相性”を科学的に証明できるかもしれません。

あくまでも、個人的な推測で、ある意味、大人のお伽噺です。
高反発フェースを作って、裏側から樹脂などで加工することで数値を抑えるテクノロジーを採用している最新のドライバーは、打てば打つほど劣化して飛距離が出るようになるのです。

調整している数値は非公開で、これも噂ですが、理論値の最大差は約7ヤードになるそうです。
たかが7ヤード、されど7ヤード。ドライバーは育てて飛ばす時代になのかもしれません。

篠原嗣典。ロマン派ゴルフ作家。1965年生まれ。東京都文京区生まれ。板橋区在住。中一でコースデビュー、以後、競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れる青春を過ごして、ゴルフショップのバイヤー、広告代理店を経て、2000年にメルマガ【Golf Planet】を発行し、ゴルフエッセイストとしてデビュー。試打インプレッションなどでも活躍中。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

「全米プロ」優勝のシェフラーは“タイガー・スラム”の再現をできるか

男子ゴルフのメジャー「全米プロ」最終日(18日=日本時間19日)はスコッティ・シェフラーが2位に5打差をつけて優勝。2022&2...

あわせて読みたい