ビジョン54で80台を出す|ラウンドを成功に導く3つのボックスで100%の力!
迷ったままボールを打つと十中八九ミスになる。攻め方もあやふやなうえに、どう振ろうかなどと考えスイングに集中できないからだ。ここでは「ゴルフスコア80台を出したい」「スコアに伸び悩んでいる」方へ向けて、宮里藍が実践して大成功を収めた「ビジョン54」をご紹介。頭や心を整えてスイングに集中し100%の力を出すメソッドを学ぼう。
【解説:渡邊正子】
埼玉県出身。1997年にOLからコース研修生となり2003年にLPGAティーチングプロ資格を取得。その後「ビジョン54」の創始者ピア・ニールソンとリン・マリオットから直接指導を受け、07~09年には韓国・洪珍珠のコーチとして07年の全米女子オープンに帯同。現在はジュニア、女子プロ、アマチュアの指導を行う。
ゴルフスコア80台を目指す!3つのボックス by ビジョン54
ゴルファーは、いろんなことを考えながらスイングしています。考えることと打つことが混同して しまうのがミスの原因で、2つをセパレートすることが重要、というのが「ビジョン54」の発想です。
54は18 ホールすべてバーディのスコア。もちろんこのメソッドを象徴する数字なので、人それぞれ の54があっていい。80 台が目標ならば 85でも88でもいいということです。
「ビジョン54」の根幹を成すのは、シンク・ボックスとプレー・ボックスの概念です。シンク・ボックスとは文字通り考える箱。ここではボールのライや風の見極め、気温や湿度などの分析、攻め方や球筋の決定といった左脳を使う作業を行って、来たるべきショットに備えます。
シンク・ボックスとプレー・ボックスの間にはディシジョン・ラインという仮想の線があり、そこを 越えたら何も考えない。プレー・ ボックスという箱に入り、ターゲットに集中して感性で打つとい う右脳の作業に徹します。こうすることで考えることと打つことがセパレートされ、ショットに集中できるというわけです。
もう1つ付け加えると、打ったあとにはヒーロー・ボックスに入りたい。これは打ったあとのルーティンとも言えるもので、例えば打ったあと結果に関係なく数秒静止し、ミスしてもネガティブな言 葉は吐かないようにする。事実を受け入れ平常心を維持することでミスを引きずらない効果が望める ので、アマチュアにはぜひ試していただきたいと思います。
<シンク・ボックス>
Think=考える。打つ準備と決断を行う箱がシンク・ボックス。打つ前はこの箱に入り、ボールを打つにあたって必要なことをやりきる。
<プレイ・ボックス>
Play=ボールを打つこと。シンク・ボックスで決断したことを実行する箱がプレー・ボックス。ここに入ったらターゲットに対して打つだけ。
<ヒーロー・ボックス>
打ち終わったあとのルーティンがとても大事。ヒーロー・ボックスではミスは引きずらない。
宮里藍の大活躍を支えた珠玉の教え「ビジョン54」とは?
スウェーデンの女子プロ、ピア・ニールソンとアメリカのコーチ、リン・マリオットが提唱。自分の可能性を信じることで、自らの中に壁を作ることなく、誰もが最大限の潜在能力を発揮できるという考え方と、それを実現するメソッドの総称。
打つ前の30秒弱でどう打つかを決断する
シンク・ボックスでは打つ前の準備を完璧にする。ここでやることを少なくするためにも、ボックスに入るまでに情報収集をしておこう。
シンク・ボックスにいるのは長くても20数秒
シンク・ボックスでは打つ前に必要な準備を完璧に整え、ショットに集中できる状態を作ります。 ただし、あまり長い時間シンク・ ボックスにいるのはよくありません。迷いが生じますしスロープレーにもなるからです。
時間にすると、 シンク・ボックスに入り、プレー・ ボックスに移ってクラブを振り切るまでは30秒が目安。アドレスしてから振り切るまでは数秒ですから、シンク・ボックスにいるのは長くても20数秒ということになります。
このわずかな時間で打つ前の準備を完璧にするのは無理なので、ボールのライや風のチェック、球筋の決定、クラブ選択まではシンク・ボックスに入る前にやっておく、あるいはボックスに入るまでの準備動作と考えましょう。
ここまでやっておけば、シンク・ ボックスでの作業がターゲットの設定や球筋のイメージなどに絞れます。リズムよくプレー・ボックスに移り、ショットに集中できる要素が揃いやすくなります。
シンク・ボックスに入ってから打ち終わるまで30秒以内で仕上げる
1.ボールのライチェック
フェアウェイでもボールが沈んでいることがある。ラフではいわずもがな。普通に打てる状態かを判断してクラブ選択や攻め方を決める。
2.風を読む
体で感じる風もだが、ターゲット方向の風にも注意を払う。フォローやアゲンストはクラブ選択、横風は狙い方に影響をおよぼす。
3.クラブを選ぶ
ボールのライと風を読み、打つ距離を決定する。そこではじめてクラブが決まる。最適なクラブ選択をするためには数本は持っていく必要がある。ボールの落としどころによっても、選択するクラブが違うので注意する。
4.球筋を決める
状況をジャッジして、どのような打ち出し方向で、どのような球筋にするかを決定する。アベレージゴルファーであっても球筋のイメージは絶対に省略しないこと。
5.素振りをする
素振りをする場合は、シンク・ボックスの中で行う。目安は2回。それ以上やると迷いが生じる可能性大。基本的にシンク・ボックスで全ての決断を終えること。
プロゴルファーのシンク・ボックスを覗いてみました!
ほとんどのプロゴルファーは打つ前に「ビジョン54」で言うところのシンク・ボックスに入っている。その代表例と役割を探ってみよう。
プレショットルーティンが「ビジョン54」のシンク・ボックス
プロは必ずと言っていいほど、毎回同じ動作でショットに入ります。プレショットルーティンと呼 ばれるものですが、これが「ビジョン54 」で言うところのシンク・ボックスにあたります。
やり方はもちろん、シンク・ボックスとプレー・ボックスの境界線を示すディシジョン・ラインも人 それぞれですが、ショットに移る前に準備万端の状態にすることは同じ。毎回同じ動きを同じリズム で行うことで、ショットに対する集中力を高めているのです。
畑岡奈紗のぴょんぴょんアドレス
畑岡奈紗はアドレス前にその場で真上に数回ジャンプする。
アドレス前に数回ジャンプすると2つのメリットがあります。1つは上体から力が抜けること。2つめは重心が下がって下半身がどっしりすること。アマチュアにも効果的な方法です。
肩から力が抜けて重心が下がり、理想的なアドレスになる。
タイガー・ウッズのショットイメージング
一流選手や調子がいいプレーヤーほど、シンク・ボックスで細部までイメージしている。
ショットからパットまで、球筋や転がり方を完璧にイメージしてから動くのがプロの流儀。これはシンク・ボックスでやるべき大切な仕事の1つですが、アマチュアもこれをやると結果が違ってきます。
グリーンに向かって球筋をイメージしたら、素振りで疑似体験する。
西山ゆかりのショルダータッチ
アドレス前のシンク・ボックスで右肩を左手でさわり、右肩を意識する西山。
アドレスでは右手が下になるので右肩が前に出やすくなります。西山プロのように右肩のポジションを意識するとこれが防げ、アドレスで肩のラインが左を向いたり、外からクラブが下りなくなります。
アドレスで肩のラインをスクエアにしたり、クラブが外から下りるのを防げる。
ジャック・ニクラスのチンバック
始動前に小さくアゴを右に動かすチンバックが名手二クラスのルーティン動作。
シンク・ボックスかプレー・ボックスか微妙なところですが、二クラスのチンバックもスムーズな肩のターンを促すルーティン。レジェンドともなると、完璧に無意識下の動きだと思います。
アゴの動きをきっかけに肩をターンさせてテークバック。
石川遼のシャドウスイング
素振りは打つ前のリハーサル。石川遼のシャドウスイングを見ると、どんな球を打とうとしているかがわかる。特にアプローチでは顕著。
素振りはシンク・ボックスでの大事な動作。プロの素振りを見ると、どんな球を打つかが一目瞭然です。ただ振るだけではもったいないので、必ず打つボールを意識したリハーサルとして行いましょう。
上げるのかコロがすのか、明確なイメージをもってこそ素振りをする意味がある。
片山晋呉のアンダースロー
アマチュアにもわかりやすい片山の距離感出し。アンダースローでボールを投げる感覚を体に残しておく。
ボールを投げるイメージで距離感を出している時の片山プロは、シンク・ボックスに入っていると言えます。体で感覚を出し、それを残しておくこともシンク・ボックスで行うべき作業の1つです。
距離感を出すのもシンク・ボックスで行うべき大事な仕事。
プレー・ボックスで迷わなくなる5つのドリル
プレー・ボックスでは余計なことを考えずスイングに集中するのみ。ここではスイング力を上げる「ビジョン54」流の5つのドリルを紹介する。
すべてのショットでスイングを始動するまでのルーティンを実行
プレー・ボックスでは何も考えずにスイングすることが大事。そうなるにはシンク・ボックスの習 得とスキルアップが欠かせません。ここで紹介するドリルは後者を成し遂げるためのものです。
課題は、すべてのメニューでスイングを始動するまでのルーティンを実行し(シンク・ボックスを 経てプレー・ボックスに入る)、すべてのショットで目標を定めること。打ったショットは5段階で 評価します。
例えば、意図した飛球線にボー ルを飛ばせたか、プレー・ボックスで集中できたか、などが評価の 基準になり、満足のいくショットが打てたら5点ということ。やろうとしていることを言葉にして発し、仲間にそのとおりできたかジャッジしてもらうのもいいでしょう。
ドリル1:5本で5つの球筋を打つ
ドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティ、アイアンから5種類の番手を選び、それぞれのクラブでショットごとにターゲットを変え、高い球、低い球、右に曲がる球、左に曲がる球、ハーフショットを打ちます。
結果もだが、まずは1ショットごとにルーティンを踏むことが大事。
ドリル2:5本のクラブで同距離を打つ
9番アイアンでしっかり振り抜いて打った時のボールの着地点を確認。同じ地点に向かって8番、7番、6番、フェアウェイウッド、ドライバーで打つ。番手は替えてもいいですが、必ずユーティリティとウッド系を入れます。
9番もしくは8番アイアンでしっかり振り抜いた時の着地点をチェック。
ウッドもアイアンと同じ着地点に落ちるように打つ。
ドリル3:両足→左足→目つぶり打ち
7番アイアンを用意。シンク・ボックスからプレー・ボックスに移って普通に打ちます。次に同じ手順で、左足で立って打ちます。右ツマ先はついてもOK。さらに同じ手順を踏んで目を閉じて打つ。練習場では周囲に注意して!
同じ手順でプレー・ボックスに入り普通に打ったら、同様のルーティンを踏み左足一本で打つ。
ドリル4:5つの方向を向いて打つ
アイアン、フェアウェイウッド、ユーティリティ、ドライバーから5種類のクラブをピックアップ。それぞれの番手で右、やや右、真ん中、やや左、左にターゲットを設け、そこを目がけて打ちましょう(順不同)。
「5本のクラブを選びましょう」
左狙い
右狙い
ドリル5:4つのスピードで振り分ける
これまでと同様に5本のクラブを選択し、スイングスピードを変えて打ちます。通常のスイングを100%とし、75%、50%、25%と速度を変えること。振り幅が小さくならないよう気をつけて速度をコントロール。
飛距離は気にせずスピードをコントロールしてフェースの芯に当てる。
プレー・ボックスとヒーロー・ボックスが完成する30球プラクティス
練習の成果を実戦に結びつけるには、実戦を想定した練習が必要。実戦でのプレッシャーに負けなくなる練習が30球プラクティスだ。
ターゲットに全エネルギーをつぎ込んで打てるようになる
スキルアップのための練習は、実戦を想定してやってこそ意味があります。打ちやすいライから同じ目標に向かって同じショットを打つのは練習のための練習。言い換えれば、理想のゴルフをするための準備にすぎません。
実戦で強くなるには、様々なショットを経験しなければなりませんが、それを実行するのが30球プラクティス。“練習のための練習”になるのを避け、ター ゲットに全エネルギーをつぎ込んでプレッシャーのかかったショットやパットを打てるようになる練習法です。
ドリル同様この練習も、シンク・ボックスからプレー・ボッ クスへの過程を経て行います。練習を積むことで、プレー・ボックスから自然にヒーロー・ボックスに移れるようになります。
プラクティス1.3つの距離をいろんな方向からパッティング
3球連続のカップインにチャレンジする
2メートルのパットを3球。9メートルを2パットで入れる練習を3球。18メートルを2パットで入れる練習を3球。この3つを行ってから、それぞれの距離から3回連続でカップインさせることに挑戦します。これができたら、ラインを変えていろんな方向から繰り返します。
プラクティス2:ショート&ロングアプローチでベストの位置に寄せる
寄せ方や距離を変えてトライ
短い距離のグッドチップショットを3回。長い距離のグッドチップショットを3回打ちます。この場合のグッドは各自の判断でOKですが、ワンパット圏内に寄せるのが理想です。できたらランニングアプローチやロブショットなど寄せ方や距離も変えてみましょう。
ショート
ロング
プラクティス3:同じルーティンで6種のクラブを打つ
一球一球シンク・ボックス→プレー・ボックス→ヒーロー・ボックスの過程を大事に打つ。
結果でなくグッドな過程を求める
SW→PW→9番アイアン→8〜4Iから1本→3I~3Wから1本、の順にグッドショットを1回打ち、最後にドライバーでグッドショットを2回打ちます。結果だけでなく、シンク・ボックス、プレー・ボックス、ヒーロー・ボックスでやるべきことができたかも“グッドショット”の条件になります。
アイアンおよびウッドを1本選ぶ場合、最初は得意なクラブでいいが、苦手なクラブにもトライする。
「30球を目安にすべての練習をしましょう!」
打つボールを30球に限定し、1打1打を手順を踏んで打ち切ることが重要。結果よりも過程を重視することが、本番に役立ちます。
GOLF TODAY本誌 No.550 32〜41ページより