キャロウェイ|4代目「クロム ソフト」ゴルフボールのビッグチェンジ
追求したのは、圧倒的なボール初速
「新しいゴルフボールができたから、ぜひ取材をしてほしい」
そう、今年は4代目となる「クロム ソフト」が発売される年、キャロウェイからの提案は、こちらとしても渡りに船だった。アメリカ・カリフォルニア州、カールスバッドにある本社にボール開発責任者のデイブ・バーテルズを訪ねた。
新しいクロム ソフトはすべての面においてイノベーティブ。このボールがNo.1だよ
ビデイブ・バーテルズ
R&D ボール担当シニアディレクター
スピード、スピード、とにかくスピード。プロたちは、初速が欲しかったんだ
ニック・ヨンツ
ゴルフボール プロダクトパフォーマンス マネージャー
明らかな違いを出すために⾏き着いたのは|シングルコアという選択
新しいクロムソフトの開発過程において、どのようなイノベーションが⽣まれ、どんなボールへと進化したのか。ボール開発責任者のデイブ⽒とプロと開発の橋渡し的役割を担うニック⽒に話を聞かせてもらった。
新しいクロムソフトとクロムソフトXには明らかな違いが必要だった
クロムソフトXに求められていたのは初速とスピンの向上
2018年に発売された3代目「クロムソフト」は、ゴルフ業界で初めてグラフェンというナノテク炭素素材がアウターコアに採用されたことで話題をさらった。
新素材の採用によって、「クロムソフト」は革新的な進化を遂げたが、4代目ではどんなイノベーションが生まれたのだろうか。
「新しいクロムソフトとクロムソフトXは、そのどちらも性能は大きく進化しました。そして、Xはその構造が大きく変わりました。その背景としては、ツアープロや上級者を完全に満足させることができていなかったということがあります。もちろん、我々は前作のXのフィーリング、スピン、初速といった各性能は、彼らにとって最良だと考えていました。ですが、実際にはそうではありませんでした」
そう話すのは、ボール開発責任者のデイブ・バーテルズ氏。
そこで、改めてプロや上級者のニーズをヒアリングすると、彼らはロースピンを求めていなかったということがわかったという。
その点について、ツアープロたちの声を吸い上げ、開発チームに伝える役割を担うニック・ヨンツ氏に説明してもらった。
「フィルもザンダーも、前作の総合的なパフォーマンスには満足してくれていました。ですが、彼らプロや上級者は、球筋や弾道の高さをコントロールしたがります。そのためには、もう少しスピンが必要だったんです」とニック氏。
これを受けて、開発陣が新しいクロムソフトXに対して、掲げた命題が、初速の向上とコントロールショットにおいて必要なスピン量の確保だった。
初速を“プラスオン”させるためにシングルコアを選択
総合的に前作を上回る性能を持たせつつ、初速においては他モデルよりも一歩先んじたものとする。言葉で言えば簡単だが、かなりの無理難題を命題に掲げて開発は進められていった。
「フィーリングやスピン量のことも考慮しつつ、初速を向上させるために色々な構造を試作しました。そうして行き着いたのが、シングルコアです。試行錯誤した結果、Xにはグラフェンを採用しないことにしました。コアの硬度は前作のインナーコアが10、アウターコアが100だとしたら、シングルコアの硬度は70くらいなので、そこまで硬くないですね。こうした硬さにしたのは、中間層の内側を軟らかく、中間層の外側は硬くするという組み合わせにすることで、その硬度のシングルコアと大きな相乗効果を生じさせたからです」(デイブ氏)
その相乗効果は、アイアンショット時のスピン量を確保しながら、ドライバーショット時の衝撃に対して最大限の初速性能を発揮する構造になったという。
これが現時点でのベスト|最も成功したボールを凌駕する品質と⾰新的性能
イノベーティブな構造を見出してベストな回答を導き出し、初速という命題をクリアしたクロムソフトX。デイブ・バーテルズ氏は、「このボールでNo.1を狙える」とその性能と品質に絶対の自信を見せていた。
新しいクロムソフトとクロムソフトXは、その関係性もビッグチェンジをさせているという。「前作では、Xは少し打感が硬めで、クロムソフトは軟らかめというふうに、両者は兄弟のような関係としていました。ですが、新しいクロムソフトは、打点にばらつきがあり、やさしさを求めている人が遠くへ真っすぐ、楽に飛ばせるボール。そして、クロムソフトXは、常に打点が安定していて、先述したとおりボールをインテンショナルにコントロールしたい人にフィットするボールです。それぞれのゴルファーが求めるニーズに対して、最大限応える性能を持たせることで、明確な差別化を図っています」(デイブ氏)単純にヘッドスピードが速い人はこっち、という分け方をしているわけではなく、あくまでもニーズに対してわかりやすく差別化されている。これなら、ゴルファーは迷わずお目当の性能を備えたボールを選択することができる。
現時点においては、このボールがキャロウェイにおけるベストだと言う、デイブ氏はこう続けた。
「我々は常に研究・開発を続け、イノベーションを追求し続けていきます。それはボールの性能だけでなく、品質においても同様です。いずれ近いうちに、ボールでもナンバーワンになることでしょう」
クロムソフトXの新しいエアロネットワークについて説明するデイブ氏。「空力に関しては新しい設計手法のほか、CFD(数値流体力学=Computational Fluid Dynamics)もよく使われます。AIは構造に対して、何度か研究を試みましたが、開発に生かされるのはまだ先の話ですね」
※クロムソフトXはトリプル・トラックバージョンが2020年4月中旬発売を予定。トリプル・トラックバージョン以外の発売は未定。
NEW クロム ソフトX
プロや上級者のニーズに応える高初速、インテンショナルなショットとコントロールされたアプローチショットを可能にするスピン性能を備えたベスト・オブ・ベスト。
※クロムソフトはトリプル・トラックバージョン(ホワイト/イエロー)に加えてトゥルービス(ホワイト×レッド)が2020年4月中旬発売を予定。
NEW クロム ソフト
打点が安定しないゴルファーがやさしく真っすぐ飛ばせる飛距離性能とソフトなフィーリングが持ち味だが、そのフィーリングと性能は上級者にもフィットする。
クロムソフトとクロムソフトXには明確な違いを持たせた
難しかった初速の向上とインテンショナルなショットを可能にするスピン量の確保という命題をクリアしたクロムソフトX。それはイノベーティブな構造を生み出した開発努力だけによるものではなかった。より緻密かつ高品質なコアやカバー、エアロネットワークといった各パーツを作り出すために、製造設備等に対して多額の投資と改善を実施したことも大きいとデイブ氏は言う。また、クロムソフトXにおいては、エアロネットワークもビッグチェンジがなされているという。
「エアロネットワークパターンはCADで設計をしますが、従来の設計方法だと表面の滑らかさを理想に近づけることが難しかった。ですが、マサチューセッツ工科大学などで空力を専門に学んできた開発スタッフのアイデアによって、その問題をクリアできたのです」(デイブ氏)
その開発スタッフは、表面を設計する際に『ヒートディフュージョン(熱方程式)』の公式を当てはめることを思いついた。その公式を当てはめることで算出された数値を使うことで、理想的な滑らかさの表面設計が可能になったのだ。これにより、空力性能やスピン性能が大幅に安定したという。
まさに革新的な発想による設計で、エアロネットワークの凹みからエッジへの傾斜の表面がより滑らかになったクロムソフトX。
協力/キャロウェイゴルフ
GOLF TODAY本誌 No.574 66〜71ページより
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