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adidas Golf CODECHAOS ゴルフシューズの常識を破壊できた秘密|ギアモノ語り

アディダス ゴルフ史上No.1の大ヒット!

2020/08/01 ゴルフサプリ編集部

今、一足のシューズがゴルフシューズの歴史を変えようとしている。一見、ゴルフシューズには見えない『コードカオス』は、今年2月に世界同時発売されると多くの国で大ヒットし、最も大成功をおさめている日本では売上シェアNo.1を独走。スパイクレスシューズでありながら、世界の一流プレーヤーが試合で使うようになったことも異例である。その開発背景には、どんな秘密があったのか?

ランニング、テニス、バスケットボールなどアディダスだから結集できた“カオス”の技術

不規則な突起(緑色部分)は計33個ある。それぞれ1個のラグには8つの角度がつけられており、1つ1つのラグが状況に応じて微動して連動することで全方向に対して高いグリップ力を生む。

アディダス ジャパン㈱
アディダスゴルフAPAC代表

陳 デイビッド氏
日本だけでなく、韓国、中国、シンガポールなどアジアおよびオセアニアのVP(ヴァイス・プレジデント)を務める陳氏。

アディダス ジャパン㈱
アディダスゴルフ
プロダクトマーチャンダイジング
スペシャリスト-フットウェア

森 悠馬氏

「アディダスゴルフのスパイクレスで、史上最高のグリップ性能を実現させた」

ゴルフシューズっぽくないと感じたのは当然かも知れない。アディダスジャパンのゴルフ部門でトップとして指揮をする陳デイビッド氏に話を聞くと、英語でのインタビュー中に何度も出てきたのがDISRUPT(破壊する)というフレーズだった。

「今回の『コードカオス』のコンセプトは、2017年にテーラーメイドと分離したときからはじまっています。そのときに、もう一度、アディダスらしいゴルフシューズを考え直そうと新しいチームが発足して、今までのゴルフシューズの常識を破壊するようなものを作ろうというプロジェクトがスタートしました」

アディダスらしいゴルフシューズ。それは、よりスポーティなゴルフシューズへの変貌だった。

「ゴルフは伝統のあるスポーツなので、ゴルフシューズにも伝統の素材やテクノロジー、デザインがありました。ただし、デザインだけを奇抜にしても意味がありません。アディダスはパフォーマンスブランドであり、革新的な性能がないとアディダスらしいとは言えません。そういう意味で追求したのが常識を破壊するテクノロジーです」

テクノロジーにおいて、そこにはアディダスらしい多様な技術が盛り込まれている。アディダスは、ゴルフシューズだけのブランドではない。『コードカオス』にはゴルフ分野以外からカオス的にテクノロジーが結集しているのも革新的だった。フットウェアを担当する森氏に話を聞くと、

「ゴルフは歩いている時間も長いスポーツです。だから、快適性やクッション性も大切になるのですが、『コードカオス』にはツマ先からカカトまで全面でブーストのクッショニング素材を採用しています。これはアディダスがランニングシューズに採用している技術です」

またアッパー部分の表面部分をよく見ると、斜めにギザギザのラインが入っているように見えるが、ここにも意外なスポーツの技術が応用されていた。

「アッパー部分はニット素材にフィルムを貼った二層構造になっています。一層目のニット全体にこの凹凸が施されており、これによってアッパーが横には伸びづらい(スイング時)ですが、縦の方向(歩行時など)は伸びやすく曲がりやすいという性能です。それに加えて、表層のPUフィルムでニットの軽量性や通気性を維持しながらゴルフに必要な防水性はもちろん安定性を最終調整しています。このテクノロジーは様々なスポーツから応用したアディダス独自の技術です」

そして『コードカオス』の最大の特徴が、スパイクレスとは思えないグリップ性能だ。陳氏は、「昨年の秋にはじめてダスティン・ジョンソン選手などにテストしてもらったときも斬新なデザインを見て驚いていましたが、実際に履いてみたときのグリップ力にびっくりしていて「これなら試合で使える!」とゴーサインが出ました。アディダスのスパイクレスで史上最高のグリップ力がありますし、ツアープロでも問題ないことを証明してくれています」

すでにPGAツアーでは今年1月から多くの選手が使用していて、6月に再開されたPGAツアー「チャールズ・シュワブチャレンジ」で優勝したダニエル・バーガーも『コードカオス』を着用していた。そのグリップ力について森氏は、

「まず、この不規則な突起に秘密があります」と語りはじめた。

『コードカオス』のソールには、一定方向ではなく、まさにカオスと言うべき不規則な突起(ラグ)があるが、これには1つ1つ意味があると森氏は語る。

「不規則な配置は、芝を噛むためです。ゴルフ場の芝には規則性があって、ほぼ上を向いています。それに対して不規則なラグを噛ませることで、芝と絡んでグリップ力を高めているのです。ゴルフスイングではバックスイング、ダウンスイング、フォローと色んな方向に力が入りますが、このラグの高さ、角度、配置は天文学的なパターンをシミュレーションしていて、その中からベストなものを選択しています。決して、ただのデザインではありません」

ツイストグリップと名付けられたこのテクノロジーにはさらに秘密があった。それは、突起のラグ同士が連動していることだ。

「よく見ると突起の下には線が入っていて、それぞれが繋がっていることで、ラグが連動しながらグリップ力を高めています」

様々なスポーツから応用した特殊な形

シューズの甲側(アッパー部分)のラインは一直線ではなく、ギザギザになっていることでスイング中に横方向にズレにくい。BOAのレースも内部に炭素繊維を入れて、外側を繊維素材にすることで理想のフィット感を実現。

快適なクッション性はランニングシューズから

フルレングスで採用されたクッショニング素材BOOST(TM)だけでなく、インソールの素材も圧力を分散してくれる構造になっている。また左右4箇所のコントロールラップによって、安定性を高めている。

「ソールにある不規則なラグは、連動しながら芝を噛んでいる」

「ミドルカットタイプの特徴はゴルフシューズとしては初めて足首まで横方向の安定性を高めながら、軽量化された上で通気性の良さがあり、様々な足型に対応できることです」

ツイストグリップに3年、テストは1000時間以上、ベルリンの壁からアイデア

アディダス ジャパン㈱
アディダスゴルフ ブランドディレクター

木戸脇 美輝成氏

「ゴルファーのライフスタイルを変えるところまで追求しました」

アディダスゴルフの開発本部は、ゴルフメーカーの聖地でもある米国サンディエゴのカールスバッドにある。このツイストグリップには約3年の開発期間があり、1000時間以上のテストを重ねたそうだ。ブランドディレクターの木戸脇氏はカールスバッドを訪れることも多い。

「すごく仲が良い社風で、コミュニケーションが積極的です。今回の『コードカオス』のような挑戦的なアイテムでも、開発チームだけでなくPRチームやセールスチームまで「面白そうだね!」とノッてくれて、お互いを信じている。それはアディダスが社風にしている3つのCであるコラボレーション、コンフィデンス、クリエイティビティという文化が根付いているからだと思います」

その文化はゴルフシューズの開発でも、他のスポーツから良い影響があると木戸脇氏は語る。

「今回のプロジェクト前には、カールスバッドの開発チームはアディダス本社があるドイツを訪れて、ベルリンの壁からもインスピレーションを受けたようです。またデザイナーに話を聞くと『コードカオス』のデザインは90年代に活躍したテニスプレーヤーのアンドレ・アガシのファッションを参考にしたそうです。当時のテニス界はウェアと言えば白と黒という伝統がありましたが、それを斬新なカラーで席巻したのがアガシでしたからね」

ファッションアイテムとしても魅力的なデザイン

『コードカオス』シリーズは大きくわけてメンズ3タイプ、レディス2タイプ、ジュニア1タイプがある。メンズにはミドルカット、ローカット、紐タイプがあり、レディスはローカットと紐タイプ、ジュニアモデルはローカットのBOAタイプ。

開発背景を知る木戸脇氏はさらに、今までのシューズと『コードカオス』の開発の違いについて、

「過去の『ツアー360』なども当時の最先端テクノロジーを結集させていましたが、『コードカオス』では性能だけではなくゴルファーのライフスタイルやカルチャーまで想定しながら開発したのが、大きな違いです。アディダスではサッカーやランニングのようなスポーツのファッションがライフスタイルのファッションとして定着している。それをゴルフでも実現していきたいと思っています」

2月に発売された『コードカオス』は、6月になっても大ヒットを続けている。それはゴルフシューズの常識だけでなく、ゴルファーの常識を破壊する大ヒットになるかもしれない。

7月に追加発売された新デザインは『SUMMEROFGOLF』のロゴがレゲエテイストで米国のヒッピーカルチャーを取り入れた夏バージョンになっている。
地球の環境問題に取り組むサステナブルなシリーズとして、5月にはリサイクル素材プライムブルーを使用した『コードカオスプライムブルー』を発売。

GOLF TODAY本誌 No.578 105〜109ページより

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