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効率的なインパクトでフェードからドローへ|河本結は左手1本でアメリカ仕様にチェンジ

コーチ・目澤秀憲が長いオフで実践した修正ポイントを解説!

2020/09/30 ゴルフサプリ編集部

新型コロナウイルスの影響で7月の「アース・モンダミンカップ」が初戦となったJLPGA。そこでも堂々の活躍を魅せたのは、昨年の米ツアーQTを突破し、今季からアメリカが主戦場となる河本結。長い自粛期間の間、アメリカで戦うためにどんな準備をしたのか、コーチ目澤秀憲に聞いてみた。

解説目澤秀憲
めざわ・ひでのり 1991年生まれ。日大ゴルフ部で活躍後米国に留学しTPILevel2のライセンスを取得。16年には日本に数名しかいないLevel3を取得した。

河本 結(リコー)
かわもと・ゆい 1998年8月29日生まれ。愛媛県出身。1月の米LPGAツアー「ゲインブリッジLPGAatボカ・リオ」以来、約6ヶ月ぶりの公式戦となった2020JLPGA初戦「アース・モンダミンカップ」では、71・71・71・69と安定したプレーで17位タイにつけた。7月の中旬からは米LPGAツアーに本格参戦するため渡米。最高峰の舞台での活躍に期待がかかる。

アメリカ仕様への修正ポイント1|シンプルに左手首を伸ばし続けるイメージでドローボールを目指す

タフな米国のコースではフェード一辺倒でなくドローでの攻めも不可欠

左手首を曲げないようにして>右肩が前に突っ込んでカット軌道になるのを抑えた
2019年の河本結|左手首が内側に曲がることによって右肩が突っ込んでカット軌道になりやすい
2020年の進化|ここから手首を折り曲げずにインパクト

ドローの基本であるインサイドアウトの軌道に変化させる

正直、彼女のスイングは完成形に近いものがあり、どこを変化させるべきなのかコーチとしてとても悩みました。しかし、今季からアメリカでの挑戦が始まるので、アメリカのコースでも戦えるように、まずは彼女のフェードがキツくなりすぎてしまう時に、ドローを打てるスイングに変化させようと、この左手首を真っすぐするイメージを彼女に伝えました。

フェードを打つということは、ヘッドの軌道がアウトサイドインになっているということ。彼女のフェードがキツくなってミスが出てしまう時は、左手首が内側に折れてダウンスイングしていました。そうすると、ヘッドの抜け道がなくなってしまうので、右肩が前に突っ込むようなスイングになってしまいます。

左手首を真っすぐキープしたままインパクトを迎えることで、右肩の突っ込みを抑えて、ヘッドの抜け道をインサイドアウトへと変化させました。

ダウンスイングで左手首を意識することは、プロでもかなり難しいことです。そこで、このイメージを体に覚えさせるためにドリルで反復練習をくり返しました。そのドリルの詳細は64ページをご覧ください。

左手首が曲がるとヘッドが被る

左手首が曲がったままインパクトを迎えることで、右肩が前に突っ込んでしまう。左手首を真っすぐしたままインパクトすることで、肩は目標方向と並行を保ったままインパクトできる。

そのまま振り抜くとヘッドはインサイドに

右肩が前に突っ込んだままインパクトすると、ヘッドの抜け道はインサイドにしか振り抜けなくなるため、フェードの球筋になってしまう。

アメリカ仕様への修正ポイント2|左ツマ先を内側に体の回転力を抑えてドローボールを打つ

左ツマ先をボール2個分内側に向けて>体の回転力を抑えてヘッドをアウトサイドに振り抜けるようにした

米ツアーで大きなミスをしないためにはカラダの余計な挙動を抑え込む必要がある

2019年の河本結|体の回転が大きくなり体の突っ込みや、インパクトでのフェースの開きが生まれていた
2020年の進化|左ツマ先を内側に向けた

体を回転を抑えることでアウトサイドに左手を大きく伸ばせる

もう1つ彼女のフェードを修正するために、教えたことがあります。やはりフェードの原因はアウトサイドインへとヘッドを振り抜いてしまうこと。それでも彼女がスライスではなくフェードで抑えられていたのは体の回転を上手く使えていたから。しかし、体の回転はタイミングがとても大事になってきます。緊張する場面だったり、体に力が入ってしまうと、そのタイミングはあっけなくズレてしまい、大きなミスにつながるのです。

そこで、ヘッド軌道をインサイドではなく、真っすぐ振り抜くことをイメージするために、彼女の開いていた左ツマ先をカカトの位置は変えずにボール2個分内側に移動しました。この時、ツマ先が内側になる分ボールの位置を少し右にズラしましょう。ツマ先を内側に向けることで体の回転が抑えられるので、ヘッドがインサイドへと振り抜くことがなくなります。そして、体の回転力が抑えられるということは、上半身も前のめりになることがなくなるので、より真っすぐ振り抜くことができるようになるのです。

体の回転=良いとは限らない

体が回転することで、インパクトで体が「逆くの字」になってしまう。するとフェースは開いたままインパクトを迎えてしまうからドローボールは打てなくなってしまう。

「アドレスを変えるだけ」の意識を持とう

アドレスだけ変えたら、スイングのことは何も考えずに振り抜けるのがベスト。ツマ先を内側にズラすだけで体の回転は勝手に抑えられる。

体の回転力が強く、上半身が前のめりになる傾向があった

左足のツマ先を内側に2個分移動することにより、体の回転を抑えてアウトサイドにヘッドを振り抜けるようにした。

アメリカ仕様への修正ドリル|ダウンスイングで右足を下げる「カウンター」ドリル

左手首を真っすぐ伸ばす、体の回転の抑制、どちらも修正可能な一石二鳥ドリル

有効なドリルは1つで色々な修正ができる

前のページでお話しさせていただいた、「左手首を真っすぐ伸ばす」「体の回転の抑制」。この2つの修正ポイントを1つのドリルをすることによって、河本選手の体に覚え込ませました。

そのドリルは、左手一本でクラブを持ち、ダウンスイングで右足を後ろに下げるだけ。特徴的なのはダウンスイングで右足を下げることですが、右足を下げることによって、左サイドが軸となり、左腕が大きく伸びるので、手首の屈曲がなくなります。逆に右足に重心を残してしまうと、体の開きが早くなる上に、フォローで腕が全く伸びない状態になってしまうと言えるでしょう。

このドリルは球を飛ばそうとしないでください。キャリーで10ヤードくらい飛べばOKです。しっかりと右足を下げて左腕を伸ばすことができれば、球は10ヤードでもドローボールになります。

このドリルは、インパクトで右足重心になってしまい、体が開いてヘッドを左に振り抜いてしまう人に対してのドリルなので、逆に上半身の突っ込みがあり、フックばかり出てしまう人には、逆に右足を引いてスイングしてみることをオススメします。

河本選手は、今年の3月からアース・モンダミンカップまで練習を続けました。彼女はプロなので、マスターするもとても早かったですが、皆さんも練習場や素振りなどで体にこの動きを染みつけてドローボールを目指してください。

左足重心で振り抜くのがポイント

トップから、左足へとしっかり重心が移動できているか確認するには、左肩と左ズボンのポケットが垂直になるように意識する。

片手が難しい場合は両手でもOK

両手でクラブを持ち、ダウンスイングで右足を下げる。片手でなくともフォローで腕がしっかりと前へ伸びていく感じを体感できる。

~コーチ・目澤秀憲は旅立つ教え子に何を想うのか~

1月のフロリダ合宿でアメリカ特有の芝に対応できるよう、アプローチのバリエーションも増やした。

「ゴルフを楽しむ気持ちを忘れないで頑張ってほしい」

コーチ目線から彼女をみることがほとんどですが、言ってしまえば僕も彼女のファンなんです。なので、もちろん優勝もして欲しいし活躍して欲しいという気持ちを純粋に持っていますね。彼女自身がステップアップしていく中の成長曲線で考えると、今年から世界で1番レベルの高い舞台に飛び込むことになります。そこで彼女自身のゴルフを楽しむ気持ちや、もっと上手くなりたいという気持ちが消えずに戦い抜いてくれればと思います。

初参戦なので、スタート時間にも最初は恵まれないでしょうし、色々な悩みも出てくるでしょう。だから最初は経験を積み重ねていく方が大事になってくるのではと思います。技術的なところで言ったらアイアンとかもどうなんだろうってなりますし、不安はつきません。僕はかなりネガティブで、常に最悪を考えなければならない仕事をしています。しかし、そんな僕のネガティブを吹き飛ばしてくれるほどの彼女のポジティブさがあれば、環境が変わっても、いつも通りに戦って、活躍してくれると信じています。

英語はまだまだだけど、常に笑顔で話すことは忘れない。

撮影協力/ドゥワンゴルフアカデミー 
撮影トーナメント/ヤマハレディースオープン葛城、資生堂 アネッサ レディスオープン(2019)

GOLF TODAY本誌 No.579 58〜65ページより