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インパクトでボールに最高のパワーを伝えるコツは、腕の角度にあった!

ゴルフで美BODY|ゴルフピラティス/最終回 身体とクラブの一体化

2021/01/01 ゴルフサプリ編集部

スムーズでバランスいい効率的なスイングを手に入れるには、そのベースとなる身体作りや身体のメンテナンスが重要。そこで、おすすめしたいのが、ゴルフピラティスだ。
ゴルファーのために考案されたゴルフピラティスは、美的スイングの要となる身体作りに効果があることはもちろん、美しい姿勢作りやシェイプアップ効果、ケガの予防にもつながる。

最終回は、体とクラブの一体化について紹介する。

腕と身体の動きは分離せず“腕は背中から生えている”感覚を持つこと

突然ですが、たとえば映画のワンシーンのように目の前の壁が動いて、自分のほうにどんどん迫ってきたらどうしますか? 何か道具があればそれを利用するでしょうが、何もない場合は壁に正対して両手のひらを壁に当て、足を踏ん張って押し返そうとすると思います。

その時の腕の角度は、肩甲骨とほぼ同じ高さ。つまり、肩に対して直角になるはずです。なぜなら、この角度が一番力の発揮できる角度からです。
腕をななめ上や下に伸ばしたり、身体を右や左にずらしたりして壁は押しませんよね。それでは十分な力が入りませんし、無理に力を入れようとすると逆にケガをするかもしれません。

スイングの場合も、同じです。最大限のパワーを発揮したいインパクトでは、壁を押すたとえと同様、肩に対して腕は直角になっているのが理想です。

トッププロのインパクト時の写真を、ぜひチェックしてみてください。肩からほぼ90度の角度で腕が伸びて、ボールをヒットしているのが分かると思いますよ。

ところが、アマチュアの場合、遠心力に負けて身体と腕の動きがバラバラになっていたり、腕の角度が大きすぎたり浅すぎたり、手首やヒジを曲げて手打ちになっていたりするのをよく見かけます。身体と腕(クラブ)の一体感がないのです。そのため、一体感を出そうとしてヒジを脇に引っ付けたりします。これでは、十分なパワーをボールに伝えることはできません。

そこで行ってほしいのが、今回紹介するエクササイズです。

よく、「両肩を結んだラインと両腕でできる三角形をキープしましょう」といいますが、頭では分かっていても、実際に維持し続けるのはなかなか難しいもの。すぐに、形が崩れてしまいます。

その点、このエクササイズはセラバンドを引っ張りながら行うので、両手が常にお腹の前にあり、正しい三角形を維持したままスイングする感覚が習得できます。お腹にしっかりと力が入り、遠心力に負けない筋力の強化にもつながります。

さらに、「腕は肩甲骨につながっていて、背中から生えている感覚」――すなわち、身体と腕、身体とクラブの一体感、ヘッドが胸の正面にある感覚を養うこともできるのです。

お腹に力が入り三角形がキープできるよう、セラバンドを活用!

■【ハグアツリー・スイング①】
1.足を肩幅程度に開いて立つ。背骨をスッと伸ばし、おへそを背骨に引き込んでお腹を凹ませる。骨盤底筋も締めて引き上げ、お腹とお尻の筋肉で骨盤を支える。
2.セラバンドを背中にまわして、両端を持つ。その状態のまま上体を軽く前傾させ、ヒザを軽く曲げる。
3.胴体に対して腕が直角になるよう真っすぐ伸ばし、身体の中央で両手を合わせる。鼻から息を吸ってスタンバイ。
4.口から息を吐きながら、テークバックするように上体を右にひねる。
5.息を吸って正面に戻ったら、フォローを取るように上体を左にひねる。
6.左右交互に10回繰り返す。

両肩を結んだラインと両腕でできた三角形をキープしながら行うこと。ヒジを曲げてバンドがゆるまないよう注意。

■【ハグアツリー・スイング②】
1. 【ハグアツリー・スイング①】の「1~2」と同じ体勢をつくる。
2.両腕を肩の真下に真っすぐ伸ばし、身体の中央で両手を合わせる。鼻から息を吸ってスタンバイ。
3.口から息を吐きながら、パッティングでバックストロークするように両腕を右側に引く。この時、上体の側屈(第6回参照)をしっかり入れる。肩の縦回転を意識しながら左脇を縮め、右脇を伸ばす。
4.息を吸って正面に戻ったら、ダウンストロークするように両腕を左側に引く。この時も肩の縦回転を意識し、右脇を縮めて左脇を伸ばす。
5.左右交互に10回繰り返す。

腕は肩の真下に伸ばし、肩と両腕でできた三角形を崩さないように行う。

★共通POINT
・背中を真っすぐ伸ばして身体の軸を意識しながら、上体の側屈・肩の縦回転を意識して行うこと
・お腹やお尻の力が抜けないよう注意
・足裏の拇指球~小指球~かかとの3点で、しっかり地面を押すこと
・頭と足のレジスタンス(引っ張り合い/第18回参照)を忘れずに

スイングはシンプル・イズ・ザ・ベスト! 再現性もUPする‼

今回紹介した【ハグアツリー・スイング①】でセラバンドを使う代わりにクラブを握ると、連載1回目で紹介した『小文字の「y」』になります。
小文字の「y」とは、正面から見た時に腕とシャフトが「y」の字になった構え方です。大文字の「Y」になっている人が多いのですが、「Y」ではダメですよ。あくまでも「y」です。

【小文字の「y」のつくり方】

1.ヒジを曲げて両手を肩にそえ、肩甲骨から肩を1~2回後ろ回し。肩甲骨の位置を整える。
2.両腕を肩の高さに真っすぐ伸ばし、身体の中央で両手をつける。
3.その体勢のままクラブを握りアドレスを取ると、小文字の「y」が完成。

小文字の「y」ができたら、ホウキで地面を履くイメージでクラブを振りながら、ゆっくり前に歩いていきましょう。

クラブを振る際に注意したいのは、「y」が崩れないように手首の角度をキープすることと、肩甲骨の動き、胸椎の側屈=肩の縦回転です。

腕だけを振るのではなく、クラブの動きに合わせて肩甲骨を前に押し、引くようにしてください。イメージは、動物のヒョウ。ヒョウは4本足で歩く時、肩甲骨を大きく動かしているのが分かりますよね。体のうねりを感じられたら、バッチリです。まあ、そこまではいかずとも、肩甲骨を強く押す→引く動きを意識しましょう。

そして、地面を踏みしめる足の裏から脚、お尻、上体、肩、腕、クラブへと、力をつなげていくことも意識します。沈み込むように片方の足で地面を強く押したら、その力によって突き上げられるように足を伸ばし、もう片方の足を前に出す。この動きによって骨盤が回され、前に進みます。ゴルフでは腰の横回転、体重移動になるのです。歩くイメージだと体重移動はスムーズで、無理がありません。

この動きをさらに発展させていくと、シンプルで再現性が高く、効率のいいスイングになります。

腕はどう、体重移動はどう、足はどうなどと、難しく考えることはないのです。

ボールに合わせにいったり当てに行ったりするスイングでは、クラブを振り抜くことはできません。ここで紹介した“歩く”という簡単な動作のエクササイズで、足が地面を踏む→骨盤が回旋→肩の縦回転&腕と身体の一体化→そのパワーを増幅させてボールに伝える という流れをしっかり身につけましょう。

さて、最終回となりましたが、全19回にわたりお読みいただきありがとうございました。複雑なゴルフスイングをシンプルにするためには、まず身体の使い方を体感すること。そして、身体にやさしく効率の良いスイングを身に付けていってください。

ゴルフを生涯スポーツとして、ますます楽しんでいかれることを切に祈ります。

【おさらい】ゴルフピラティスって何?

健康的にゴルフを楽しむための体幹トレーニングで、効率的なスイングをマスター!

ゴルフピラティスとは、ネバダ州立大学のドリー・ケラベス教授と、私(竹内)が共同で開発したプログラムです。ゴルフピラティスのすべてのエクササイズはゴルフにつながっており、スイングを効率的に行うための身体作りを目的としています。

ゴルフピラティスの主な効果

体幹が鍛えられる

ゴルフピラティスは正しい姿勢や呼吸法をキープすることで身体のコアの筋肉に働きかけ、柔軟性が高く、ケガのリスクの少ない身体を作ります。

スイングを再現性の高い、シンプルなものに変える=安定感が増す

ゴルフピラティスを行うことで身体が正しく使えるようになると、余計に複雑になっていたスイングがシンプルで効率のいい動きになります。動きがシンプルであれば再現性が高くなり、スイングは安定します。これが、“効率のよい美しいスイング”です。

ケガを予防する=長くゴルフを楽しむことができる

ゴルフピラティスで骨格を本来あるべきポジションに戻し、正しい身体の使い方を習得しましょう。ケガのリスクが減り、長くゴルフが楽しめる身体になります。

PROFILE
竹内弓美子(たけうち・ゆみこ)
京都府出身。キャナリープランニング合同会社代表。日本女子プロゴルフ協会会員(ティーチングプロ資格A級)。アメリカLPGA T&CP クラスAメンバー。日本ピラティス指導者協会(JAPICA)ゴルフピラティス専門コース開発者。ネバダ州立大学公認ピラティス指導者。日本予防医学会会員。これまでに、のべ6万人以上のゴルファー指導に携わる。著書に、『もっと飛ばせる!ゴルフの体幹トレーニング~ゴルフピラティスでブレない軸をつくる』(スキージャーナル社)がある。ゴルフピラティスを活用した著書や講習等によってゴルフビジネスの地位を確立させ、2019年LPGAアワード「ゴルフビジネス賞」を受賞。
★現在、WEBレッスンの準備中(現在、スタジオは閉鎖中)。キャナリープランニング(https://www.canaryplan.co.jp/)のホームページでお知らせします。

MODEL PROFILE
宮谷優理(みやたに・ゆり)
京都府出身。職業は歯科医師。速水歯科医院(滋賀県)副院長。「竹内先生にご指導いただき、ゴルフ歴は半年ほど。まさに面白くなってきたところです」

写真/作田祥一
撮影協力/ロイ・マーケティングデザイン