タイトリスト U・500ユーティリティアイアン試打評価レビュー
試打のスペシャリスト・高橋良明の本気レビュー
『U・500ユーティリティアイアン』(以下、U・500)と『U・510ユーティリティアイアン』(以下、U510)は大勢のタイトリストファンやアスリートゴルファーが待ち望んでいた中空構造のアイアン型ユーティリティです。今回は両モデルのうち、よりアスリート指向の強い『U・500』の性能や使い勝手について「試打のスペシャリスト」高橋良明が検証します。
[目次]
タイトリスト U・500ユーティリティアイアンの総合評価
タイトリスト U・500ユーティリティアイアン
飛距離性能 | ★★★★☆(4/5) |
---|---|
操作性 | ★★★★☆(4/5) |
打球感 | ★★★☆☆(3/5) |
上がりやすさ | ★★★☆☆(3/5) |
総合評価 | ★★★★☆(4/5) |
タイトリスト U・500ユーティリティアイアンの特徴
タイトリストはドライバーとアイアンだけでなくフェアウェイウッドやハイブリッド(ウッド型ユーティリティ)においても従来から複数の選択肢を用意してきました。
新しいUシリーズにおいてもその哲学は受け継がれ、『U・500』と『U・510』の2機種をラインナップさせることで幅広いユーザーニーズに応えています。
コンパクトサイズでトップブレードが薄くオフセットも小さい『U・500』はアイアン並みのかまえやすさと操作性を実現。
その一方で、反発力に優れたL型フェースや効果的に配置されたタングステンウエイトによって高い初速性能と許容性も兼ね備えています。
- 反発力の高いL型フェースがボール初速を最大化
- 高比重タングステンの効果でスイートエリアが広い
- かまえやすく操作しやすいコンパクトなヘッド形状
特徴1. 反発力の高いL型フェースがボール初速を最大化
『U・500』のフェースインサートにはSUP10という素材が採用されています。コイルスプリングなどに使われるばね鋼の一種で、強度と粘りがあるためゴルフクラブのフェースにも適した素材です。『U・500』はSUP10を鍛造製法で極薄に成型して反発力を上げ、ボールスピードを最大化しています。
また、インサートの形状をソールまで回り込んだL型とすることでフェース下部でも十分なたわみを確保。悪いライから打つときやハーフトップしたときでも強い球で飛ばせます。
特徴2. 高比重タングステンの効果でスイートエリアが広い
ミスヒットに強い中空ヘッドのメリットをさらに広げるため、『U・500』では100グラム近い高比重タングステンウエイトがトゥやソールなどに効果的に配分されています。
その結果、コンパクトなヘッドサイズながら低い重心位置と高い慣性モーメント、広いスイートエリアを実現しています。
低スピン高打ち出しの大きなキャリーで飛ばすことができるほか、ミスヒットしたときの飛距離ロスや曲がりも少なく、より安定したショットが打てるようになっています。
特徴3. かまえやすく操作しやすいコンパクトなヘッド形状
中空のアイアン型ユーティリティとしては『U・500』のヘッドシェイプはかなりコンパクトにまとめられています。短いブレード、薄いトップブレード、広すぎないソール幅などアスリート系アイアンの『620CB』や『620MB』などと組み合わせても違和感がありません。
見た目の印象通り操作性も高く、技術のあるプレーヤーにとっては左右高低の弾道の打ち分けがしやすく、より小さなターゲットをねらっていけるクラブに仕上げられています。
タイトリスト U・500ユーティリティアイアンのスペック
ロフトバリエーションは17度(#2)、20度(#3)、23度(#4)の3種類で、5Wとロングアイアンの飛距離レンジをカバーしています。日本仕様の標準装着シャフトは球の上がりやすい先中調子のカーボン。このほかカスタムオーダーで多様なアイアン用シャフトが選べます。
メーカー | タイトリスト |
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製品名 | U・500ユーティリティアイアン アイアン型ユーティリティ |
ヘッド素材 | ボディ:17-4ステンレス+高密度タングステン フェース:フォージドSUP-10 |
番手/ロフト角 | #2/17度 #3/20度 #4/23度 |
シャフト | カーボン:Titleist MCI Matte Black 70(S) |
長さ(#2) | 40.0インチ |
重量/バランス(#2) | 361g/D1.5 |
価格 | 40,000円+税 |
公式サイト | アクシネットジャパン公式サイト |
タイトリスト U・500ユーティリティアイアンを試打レビュー
見た目がかなりアイアンに近く、PGAツアープロも使っているとあってアマチュアには少々手強い印象のある『U・500』。使用することでどんなメリットが得られ、どんなゴルファーにマッチするのか。ギア分析のエキスパートでもあるプロゴルファー高橋良明が明らかにします。
- 球のつかまりが適度だから球筋をコントロールしやすい
- 初速が出てスピンも入る、飛距離性能と操作性が好バランス
- フェースの下側に当たっても球を拾って上がりやすい
球のつかまりが適度だから球筋をコントロールしやすい
中空ヘッドの中でもっともブレードが薄い部類に入り、ヘッド形状はアイアンそのものです。見た目からちょっと球がつかまりにくそうな印象を受けますが、実際に打ってみてもつかまり感は少なめです。
でもアイアン型ユーティリティを選ぶ人にとっては、つかまらないイコール悪いことではありません。
つかまりにくいクラブを自分でつかまえるのは技術があれば比較的かんたんですが、逆につかまってしまうクラブはフェード系の球筋が打ちにくいし、左に飛び出る不安もあるからです。
その点、『U・500』はきれいな球筋のスライスが打てます。自分で球筋を操作したい人、あるいは操作できる人のことを考えて上手く作られていると思います。
初速が出てスピンも入る、飛距離性能と操作性が好バランス
形状はアイアンでも、フェースの弾きがよく、同じロフトのアイアンよりもシャフトが少し長いので初速は出ます。
飛び方を比較すると『U・510』はドライバーのような低スピンの高い弾道でキャリーを稼ぐ感じですが、『U・500』は飛び出しが速いけれどスピンが入って、スピンコントロールもしやすくなっています。
単純に飛距離を比べれば『U・510』の方が飛びます。『U・500』はある程度飛距離を求めつつ操作性はしっかり残している感じです。弾き感あるので打感は少し硬めですが、アイアンではなくユーティリティとして考えたら仕方のないところでしょう。
フェースの下側に当たっても球を拾って上がりやすい
このカテゴリーのクラブはアイアン型といってもアイアンと比べればそこまでスピンが入りません。打ち出し角を上げて球の高さでボールを止めたいところですが、『U・500』は重心が低くフェースの下の方でもボールを拾ってくれるから楽に球を上げられます。
長いクラブではどうしてもリリースポイントが早くなって下からあおりやすくなりますが、『U・500』はスコアラインの下から1本目や2本目に当たったときにも浮いてくれるのでトップのミスが出にくくなっています。ロングアイアンを難なく打てるような上級者やプロにとってもこういうやさしさは必要です。
タイトリスト U・500ユーティリティアイアンがおすすめの人
『U・500』はアイアンよりも球が上がりますが、ショートウッドやハイブリッドのように下から強烈に拾ってくれるわけではありません。
いまアイアンの3番や4番を入れているけれどちょっときつくなってきて、そこをクラブで何とかしたいという人にはぴったりです。スピンコントロールもいままで通りできるし、上がりきらなかった球が上がるようになり飛距離も楽に出せるようになるでしょう。
ウッドよりもアイアンが好きだけど、ミスヒットに対して少しやさしいクラブを使いたい人にもおすすめです。芯を外したときでも当たり負けしにくいし、とくに当たりが薄いときに球を浮かせてくれるので、ミスの度合いが小さくなり距離が安定します。飛距離最優先の人は素直に同じタイトリストの『TSユーティリティメタル』などウッド型のユーティリティにするか、アイアン好きなら『U・510』を選んだ方が間違いありません。
こんなデータがあります。タイトリストによれば『U・500』は『U・510』に比べてツアープロの使用率がとても高いとのこと。PGAツアーにおいては、23名の選手が『U・500』を使用しているのに対して、『U・510』では2名に留まっています。このことからも、『U・500』のほうがプロ・上級者がパフォーマンスを発揮するにふさわしいモデルだということがわかると思います。
タイトリスト U・500ユーティリティアイアンの評価
アイアン型ユーティリティは、アイアンとハイブリッドの間を埋めるクラブです。しかし、アイアンに寄せすぎると難しくなるし、ハイブリッドに寄せすぎると飛び過ぎたり操作がしづらかったりして、設計のさじ加減が難しいところです。
タイトリストはアイアンに近い『U・500』とハイブリッドに近い『U・510』の2機種を作り分けることで問題を解決しました。『U・500』はアイアンよりは飛びますが、1番手も2番手も飛ぶわけではありません。よけいに飛ばすというよりもスイートエリアの広さや上がりやすさでロングショットの精度を上げるためのクラブと考えるべきでしょう。
テスター/高橋良明(たかはし・よしあき)
1983年生まれ、東京都出身。2013年プロ入会。サザンヤードCC所属。ツアーに挑戦するかたわら、ゴルフ専門誌やウェブメディアでテスターを務める。毎年出る新製品をほぼ打ち尽くす試打のスペシャリスト。
協力/サザンヤードカントリークラブ