タイトリスト U・510ユーティリティアイアン試打評価レビュー
試打のスペシャリスト・高橋良明の本気レビュー
中空ヘッドのアイアン型ユーティリティの兄弟モデルとして同時発売されたタイトリスト『U・510ユーティリティアイアン』(以下、U・510)と『U・500ユーティリティアイアン』(以下、U・510)。今回は両モデルのうち、ヘッドが大きく寛容性の高い『U・510』の飛びと使いやすさを「試打のスペシャリスト」高橋良明が検証します。
[目次]
タイトリスト U・510ユーティリティアイアンの総合評価
タイトリスト U・510ユーティリティアイアン
飛距離性能 | ★★★★★(5/5) |
---|---|
操作性 | ★★★☆☆(3/5) |
打球感 | ★★★☆☆(3/5) |
上がりやすさ | ★★★★☆(4/5) |
総合評価 | ★★★★☆(4/5) |
タイトリスト U・510ユーティリティアイアンの特徴
片や操作性がより高く弾道を自在に操れるモデル、片や寛容性がより高くストレートな弾道で飛ばせるモデル。タイトリストでは長年の慣例として、ドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティに性格の異なる兄弟モデルをラインナップしてきました。
そして後発のアイアン型ユーティリティにも『U・510』と『U・500』の2機種が揃って登場。
両モデルは同一素材・構造ながら形状が異なっていて、それがそのまま性格の違いを表しています。
コンパクトな『U・500』はアイアン並みの操作性。一方、ブレードが長くソール幅も広い『U・510』はアイアンタイプながら、ハイブリッド(ウッド型ユーティリティ)に近い打ち出しの高さとミスヒットに対する許容性を有しています。
- フェースの下部でも初速が出るL型フェースインサート
- ボールを拾いやすく高弾道で飛ばせるワイドソール設計
- タングステンウエイト内蔵でスイートエリアがさらに拡大
特徴1. フェースの下部でも初速が出るL型フェースインサート
『U・510』はフェース素材として高強度のばね鋼SUP10を採用。これを極薄に鍛造することでフェースの反発力をアップさせ、フェースセンターだけでなく周辺部でも高初速が出るようになっています。
また、一般的な板材のフェースではボディとの接合部分がほとんどたわまないのでフェース下部に当たったとき初速が出ません。
『U・510』ではフェースインサートをL型とし、フェースをソールまで回り込ませることで、フェース下部でヒットしたときにも十分なたわみが得られるようにしています。
そのため払い打ちなどアッパー軌道でトップ気味にヒットしたときも飛距離が落ちにくくなっています。
特徴2. ボールを拾いやすく高弾道で飛ばせるワイドソール設計
『U・510』の外観で特徴的なのは幅広なソールです。兄弟モデルの『U・500』と並べてみるとそのボディの厚みがさらに際立ちます。
また、フェースを正面から見比べると『U・510』はブレードが長く、フェース全体がシャローになっています。この形状が『U・510』の性格をよく表しています。
ワイドソールはヘッドが手前から入っても滑ってくれるので、うまくボールにコンタクトできます。そして低い重心によってラフやディボットなど悪いライでもボールが拾いやすく、『U・500』よりも高い弾道の大きなボールが打てます。
特徴3. タングステンウエイト内蔵でスイートエリアがさらに拡大
見るからに重心が低く深そうなワイド&シャローボディの『U・510』ですが、ヘッド内部には95グラムの高比重タングステンウエイトが最適な箇所に配置されているため、見た目の印象以上に高い慣性モーメントと広いスイートエリアを実現しています。
また、高初速で反発エリアの広いL型フェースインサートとの相乗効果により、芯を外したときも当たり負けしない力強い飛びを実現。アイアン型としては群を抜いてやさしく飛ばせるユーティリティになっています。
タイトリスト U・510ユーティリティアイアンのスペック
ロフトバリエーションは18度(#2)、20度(#3)、22度(#4)の3種類。日本向けの標準装着シャフトには球がつかまって上がりやすい先中調子のフジクラ製『タイトリストMCIマットブラック』が採用されています。
メーカー | タイトリスト |
---|---|
製品名 | U・510ユーティリティアイアン アイアン型ユーティリティ |
ヘッド素材 | ボディ:17-4ステンレス+高密度タングステン フェース:フォージドSUP-10 |
番手/ロフト角 | #2/18度 #3/20度 #4/22度 |
シャフト | カーボン:Titleist MCI Matte Black 70(S) |
長さ(#2) | 40.0インチ |
重量/バランス(#2) | 362g/D2 |
価格 | 40,000円+税 |
公式サイト | アクシネットジャパン公式サイト |
タイトリスト U・510ユーティリティアイアンを試打レビュー
アイアン型ユーティリティの兄弟モデルとして登場したタイトリスト「Uシリーズ」のうち、より寛容性の高い『U・510』はどんなゴルファーに適しているのか。
ギアに詳しいプロゴルファー高橋良明が『U・500』と比較を交えながら分析します。
- アイアン型UTとして球の上がりやすさは最高レベル
- ドライバーのような高初速、高弾道、低スピンで飛ぶ
- 高慣性モーメントと幅広ソールがミスをカバーしてくれる
アイアン型UTとして球の上がりやすさは最高レベル
『U・510』を初めて見たときは昔のタラコアイアンを思い浮かべました。ほぼアイアンのように見えるシャープな『U・500』と比べると、『U・510』からはかなりぼってりした印象を受けますが、大多数のアマチュアゴルファーにとってはむしろそれが安心感につながると思います。
重心が『U・500』より低い感じで、ふだん通りに振るだけで球がかんたんに浮いてくれます。アイアン型ユーティリティの中でもかなり球が上がって飛ぶ方です。
そもそもロングアイアンが苦手な人が求めているのは弾道の高さと飛距離。アマチュアにとって一番必要なところがきちんと抑えられているクラブです。
ドライバーのような高初速、高弾道、低スピンで飛ぶ
『U・510』を打ってみて一番印象に残ったのは初速の速さです。
当たった瞬間にボールがバーンと弾き出されて、顔を上げたときにはすでに自分がイメージしたよりもずっと遠くて高いところまでボールが到達しています。まるでドライバーのように高初速、低スピン、高弾道で飛んでくれます。
いままでに打ったことのあるアイアン型ユーティリティの中でこのモデルが一番飛んでいるといっても言い過ぎではありません。
同じシリーズの中でも『U・500』が操作性を優先しつつ弾きのよさで飛距離性能をプラスしているのに対し、『U・510』は操作性にこだわらず最初から飛距離に特化したモデルといっていいでしょう。
高慣性モーメントと幅広ソールがミスをカバーしてくれる
トップブレードの厚い『U・510』はミスヒットしても当たり負けしにくいイメージがあります。
実際、打点を左右にずらして打っても飛距離や方向のブレはアイアンと比べるとわずかで、慣性モーメントの高さが効いている感じです。また、幅広のソールが上下のミスもカバーしてくれます。
『U・500』は薄いソールが地面にもぐってから抜けていくタイプですが、『U・510』はバンスが地面にパーンと当たって滑りながらボールを拾ってくれるので、ヘッドがけっこう手前から入ってもダフリやトップが出にくくなっています。
ダウンブローにも打ちやすい『U・500』に対して、さらっと払い打つのに適しているのが『U・510』です。
タイトリスト U・510ユーティリティアイアンがおすすめの人
ハイブリッドやショートウッドよりもアイアンが好きな人、アイアンよりもっと高さと飛距離を出したい人にはぴったりです。
ハイブリッドで球が上がりすぎたり左に飛んだりしている人が使えっても、高さやつかまりを少し抑えることができるでしょう。
アイアン型ユーティリティというと少し難しいイメージもありますが、『U・510』はウッド型に近いくらいヘッドが大きくて安心感があるので、アベレージゴルファーでもある程度は使えると思います。
標準のカーボンシャフトは球が浮きやすいので、ヘッドスピードも40m/sくらいあれば問題なく打てるでしょう。
一方、しっかりしたシャフトを選べば、ヘッドスピードの速い人がティーショットを安全なところに置きに行くといった使い方ももちろんありです。標準シャフト以外にカスタムシャフトも豊富なので対象となるユーザーはかなり幅広いと思います。
タイトリスト U・510ユーティリティアイアンの評価
『U・510』と『U・500』の2機種は同じアイアン型ユーティリティのカテゴリーの中でもはっきりとした違いを出しています。
アイアン並みの操作性を『U・500』に任せたおかげで、『U・510』の方はハイブリッド並みのやさしいヘッドに性能を振ることができました。
『U・510』は低重心でしっかりと高さを出し、やさしく飛距離アップすることが可能。同時に広いスイートエリアとワイドなソールがミスの度合いを小さくしてくれるので、遠くのターゲットを安心してねらっていけるクラブになっています。
テスター/高橋良明(たかはし・よしあき)
1983年生まれ、東京都出身。2013年プロ入会。サザンヤードCC所属。ツアーに挑戦するかたわら、ゴルフ専門誌やウェブメディアでテスターを務める。毎年出る新製品をほぼ打ち尽くす試打のスペシャリスト。
協力/サザンヤードカントリークラブ