フォーティーン PC-3アイアンを高橋良明が試打評価レビュー
ヘッドスピードが速くないゴルファーが使えるアイアンといえば、飛び系かシニア向けか。選択肢は限られていましたが、2021年の春、新しいカテゴリーのアイアンが登場しました。それが見た目は本格的でありながら、パワーがなくても打ちこなせるフォーティーン『PC-3』です。そのやさしさと使い勝手の良さを、アイアンを知り尽くしたプロゴルファー、高橋良明がレポートします。
[目次]
フォーティーン PC-3アイアン総合評価
飛距離性能 | ★★★★☆(4/5) |
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操作性 | ★★★☆☆(3/5) |
打球感 | ★★★☆☆(3/5) |
上がりやすさ | ★★★★★(5/5) |
総合評価 | ★★★★☆(4/5) |
フォーティーン PC-3アイアンの特徴
フォーティーンのロゴにあしらわれている鳥の羽は、重くて振りにくいクラブしかなかった40年前に、軽くて誰でも振りやすいクラブを作ろう、とフォーティーンを創業した竹林隆光氏の思いを表したものです。
そして、2021年に新たなラインとして立ち上げられた「フェザーライン」は創業の原点に立ち返り、ごくふつうのアマチュアに使いやすいクラブをコンセプトとしています。
その「フェザーライン」の第1号『PC-3』はヘッドスピード40m/s未満のゴルファーにフォーカスした軽くて振りやすく、打ちやすいアイアン。
極端なストロングロフトでもワイドボディでもなく、従来の飛び系やシニアモデルとは一線を画した本格派のキャビティアイアンです。
- ダフリに強いウェッジ譲りの「三日月リッジソール」を採用
- ヘッドスピード40m/s以下でも球が上がるロフト設定
- 女性、シニア、アベレージにも対応した3タイプのシャフトラインナップ
特徴1. ダフリに強いウェッジ譲りの「三日月リッジソール」を採用
リーディングエッジが地面に突っかかったとき、パワーがあればスピードを落とさずに振り抜けますが、パワーのない人は大幅な飛距離ダウンを免れられません。そこで『PC-3』に採用されたのが、ソール面のリーディングエッジ側を三日月型に削った「三日月リッジソール」。
ヘッドが上から入ったとき、リーディングエッジの削られた面がバンス効果を発揮してダフりを軽減。ヘッドの抜けがよくなり、スピン量も安定するため飛距離のバラつきが最小限に抑えられます。
特徴2. ヘッドスピード40m/s以下でも球が上がるロフト設定
最近の飛び系アイアンでは7番のロフト角が27〜28度という超ストロングロフトも珍しくありません。一方、平均的なヘッドスピードのアマチュアが球を上げられるロフト角は30度以上と言われています。
『PC-3』では極端なストロングロフトにならないよう7番のロフト角をちょうど30度に設定し、ヘッドスピード40m/s未満のゴルファーでも無理なく球を上げられるようにしています。
また、番手間の距離の差はヘッドスピードが遅いほど出にくくなります。そこで『PC-3』は7番以下のロフトの間隔を広げて、飛距離差をはっきり出せるようにしています。
特徴3. 女性、シニア、アベレージにちょうどいい3タイプのシャフト
いろいろなスペックのうち、振りやすさにもっとも大きく影響するのはクラブ重量です。一般的なアベレージアイアンは、ヘッドスピードに応じた硬さ(フレックス)のシャフトを選べるようになっていますが、フレックスによる重量の違いはほとんどありません。
『PC-3』ではフレックスではなく、40グラム台から60グラム台まで重量帯の異なる3種類のオリジナルシャフトを用意。ゴルファーひとり一人がもっとも振りやすく感じる重量を選べるようになっています。
フォーティーン PC-3アイアンのスペック
5番〜8番のソールにはタングステンのウエイトが装着され、低深重心で球が上がりやすい設計。シャフト毎の推奨ヘッドスピードはFT-40iが30〜34m/s、FT-50iが33〜37m/s、FT-60iは36〜40m/sとされています。
メーカー | フォーティーン |
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製品名 | PC-3 アイアン |
ヘッド素材 | #5〜8:C450+タングステン PW:SUP630 |
番手/ロフト角 | 5I/24度 6I/27度 7I/30度 8I/34度 9I/39度 PW/44度 |
シャフト | カーボン:FT-50i(55g)、FT-60i(60g)、FT-40i(45g) |
長さ(#7) | 37.5インチ |
重量/バランス(#7) | 353g/C8(FT-50i)、358g/C8.5(FT-60i)、347g/C7.5(FT-40i) |
価格 | 4本セット(#7〜9、PW):96,800円(税込) 単品(#5、6):24,200円(税込) |
公式サイト | フォーティーン公式サイト |
フォーティーン PC-3アイアンを試打レビュー
飛び系アイアンでもシニアモデルでもない新しいカテゴリーの軽量アイアン『PC-3』はどれくらい振りやすいのか。そしてどんなゴルファーにマッチするのか。クラブ試打のスペシャリスト高橋良明が試打で確かめました。
- やさしいアイアンなのにシャープにかまえられる
- ゆっくり振っても球の高さがしっかり出る
- キャリーで飛ばせるからグリーンもねらいやすい
やさしいアイアンなのにシャープにかまえられる
アベレージ向けのアイアンというと、ソールが分厚くてぼってりした見た目になるのは仕方がないのかなと思っていました。ですが、『PC-3』はソールにタングステンが入っているおかげか低重心モデルにもかかわらず、ソール幅がとても薄いことに驚きです。
ヘッドは少し大きめですが、フェースの輪郭はアスリートアイアンと変わらずグースもそれほど強くないので、シャープなイメージで構えられます。昔からゴルフをしていて、最近の分厚いアイアンはどうも苦手という人にぴったりです。
また、「三日月リッジソール」はウェッジのバンスのように働いてダフリを防いでくれます。
ゆっくり振っても球の高さがしっかり出る
飛び系アイアンの5番や6番のロフト角は実質3番や4番くらい立っているのである程度ヘッドスピードがないと球が上がりにくく感じます。
しかし、『PC-3』の5番と6番はヘッドスピードをけっこう落として振っても球が上がってくれて、その番手本来の高さの球がかんたんに打てます。
また、ソール幅が薄い割には重心が低いところにあって、スコアラインの1本目とか2本目あたりの薄い当りでもボールを拾って浮かせてくれます。リーディングエッジが地面に刺さりにくくインパクトロフトが立ちすぎないのも上がりやすい理由かもしれません。
キャリーで飛ばせるからグリーンもねらいやすい
ロフト角は7番で30度。プロモデルと比べると1番手ストロングロフトですが、いまどきの基準で言えば飛び系というほどではなく“気の利いたアベレージモデル”といえます。
フェースの弾き加減はパーンと強く弾くわけではないし、軟鉄鍛造モデルのようにボールが潰れるような感じでもなく、ほどよい弾きと軟らかさです。しかし、5番や6番を打つと球が上がりやすくキャリーが出ます。
最近の飛び系アイアンはユーティリティのようですが、『PC-3』はアイアン本来の飛び方でグリーンにも止めやすくなっています。
また、ソールの滑りがよくヘッドが手前から入ってもミスになりにくく距離のバラつきも抑えられています。
フォーティーン PC-3アイアンがおすすめの人
男性アマチュアゴルファーの平均ヘッドスピードが40m/s前後なので、『PC-3』は単純にアマチュアの半数が使えるアイアンです。一番軽いシャフトは45グラムしかないのでシニアや女性ゴルファーでも楽に振れます。
ソール幅が広すぎずシャープなので、いままでアスリート系のフォージドアイアンを使っていたゴルファーでも違和感なく使えるでしょう。力を入れずにサラッと振っても、球上がって番手なりの距離が出ます。
球のつかまりもいいので自分でフェースを返すタイプより、クラブに仕事を任せる人に合いそうです。
とくに飛び系アイアンを使っているのに5番、6番、7番では高さが出せず、思ったようにキャリーで飛ばない人、10ヤード以上の飛距離差が出ない人は『PC-3』を試す価値があります。
フォーティーン PC-3アイアンの評価
今までありそうでなかったオーソドックスな形状で、ヘッドスピード30m/s台のゴルファーにちょうどいいアイアンです。ソール幅が狭くて見た目はかなりシャープですが、クラブ重量が軽いのでパワーがなくても楽に振り切ることができて、ボールはしっかりつかまって上がります。
また、ダフリに強いソール形状のおかげで、入射角が安定しない人でも距離のバラつきが小さくなります。
ストロングロフトで打ち出し角とスピン量が低すぎて球が失速気味だった人も、高さの出る『PC-3』ならロフトなりの高さと距離が出せます。
テスター/高橋良明(たかはし・よしあき)
1983年生まれ、東京都出身。2013年プロ入会。サザンヤードCC所属。ツアーに挑戦するかたわら、ゴルフ専門誌やウェブメディアでテスターを務める。毎年出る新製品をほぼ打ち尽くす試打のスペシャリスト。
協力/サザンヤードカントリークラブ