テーラーメイド SIM2 レスキューを高橋良明が試打評価レビュー
ヘッドサイズがコンパクトでアイアンのような雰囲気で構えられる『SIM2レスキュー』。ダスティン・ジョンソンはじめトッププロの使用率が高かった前作『SIM MAXレスキュー』からどのように進化したのか。また、兄弟モデルの『SIM2 MAX レスキュー』と何が違うのか。「試打のスペシャリスト」高橋良明が検証します。
[目次]
テーラーメイド SIM2 レスキューの総合評価
飛距離性能 | ★★★★☆(4/5) |
---|---|
打球感 | ★★★★☆(4/5) |
操作性 | ★★★★☆(4/5) |
上がりやすさ | ★★★☆☆(3/5) |
総合評価 | ★★★★☆(4/5) |
テーラーメイド SIM2 レスキューの特徴
前作「SIMシリーズ」ではユーティリティのラインナップが『SIM MAXレスキュー』1機種のみでしたが、「SIM2シリーズ」では『SIM2レスキュー』と『SIM2 MAX レスキュー』の2本立てとなりました。そのうち『SIM2レスキュー』はトゥが高くてスクエア感のあるフェースなどよりアイアンに近いプロファイルが与えられています。
また、ソールは低重心で抜けのいい「Vスチールソール」、フェースは直進性の高い「ツイストフェース」を採用。アイアンの操作性に飛距離と寛容性を高めた作りになっています。
- アイアン感覚で打ちやすい「ハイトゥプロファイル」を採用
- 振り抜きがよく出球が安定する「Vスチールソール」
- 曲がりにくい「ツイストフェース」で飛距離も安定
特徴1. アイアン感覚で打ちやすい「ハイトゥプロファイル」を採用
『SIM2レスキュー』のヘッドサイズはかなりコンパクトにまとまっています。クラウンのセンターが高い『SIM2 MAX レスキュー』や『SIM MAX レスキュー』と違ってトゥ側が一番高く、ソールもトゥ・ヒール方向にフラット。スクエア感のある形状はまさにアメリカンハイブリッドといった面持ちです。
また、フェースプログレッションが小さく構えたときの感じはかなりアイアンに近くなっています。リーディングエッジが出ていないのでダウンブローをイメージしやすく、アイアンと同じように扱うことができます。
特徴2. 振り抜きがよく出球が安定する「Vスチールソール」
フェアウェイウッドの名器『Vスチール』譲りの「Vスチールソール」は『SIM2レスキュー』にも採用されています。
形状は前作『SIM MAX レスキュー』から改良が加えられ、ソールと地面の接触面積がさらに小さくなりました。その結果、難しいライでも振り抜きがよく、出球が安定して距離のバラつきが小さくなっています。
また、ソールにはテーラーメイドお得意の「貫通型スピードポケット」も搭載。フェースの下側に当たったときでも高初速をキープすると同時に無駄なスピンを抑えています。
特徴3. 曲がりにくい「ツイストフェース」で飛距離も安定
『SIM2レスキュー』は高強度マレージング鋼C300の鍛造フェースを採用。素材自体の反発性能とソールに搭載された「貫通型スピードポケット」との相乗効果により広い高初速エリアを実現しています。
また、一般的に飛ぶクラブほど曲がり幅は大きくなりますが、テーラーメイド独自の「ツイストフェース」は、フェースが開いて当たったり閉じて当たったりしたときの出球を直進方向に補正、曲がりによる飛距離ロスを抑えて安定した飛びをもたらしてくれます。
テーラーメイド SIM2 レスキューのスペック
『SIM2レスキュー』のロフトバリエーションはロングアイアン替わりに使える#2から#4まで3種類が用意されています。標準シャフトは三菱ケミカル、日本シャフトと共同開発したオリジナルモデル。ロフト(ライ)角は±1.5度の範囲で調整可能で、ソールウエイトは固定式です。
メーカー | テーラーメイド |
---|---|
製品名 | SIM2 レスキュー ユーティリティ |
ヘッド素材 | ボディ:ステンレススチール(450SS) フェース:マレージング鋼(C300)鍛造 |
番手/ロフト角 | #2/17度 #3/19.5度 #4/22度 |
シャフト | カーボン:TENSEI SILVER TM70('21)(S) スチール:N.S.PRO 910GH(S) |
長さ(#3) | 40.25インチ(TENSEI SILVER TM70)、40インチ(N.S.PRO 910GH) |
重量/バランス(#3) | 約360g/D2.5(TENSEI SILVER TM70)、約388g/D3(N.S.PRO 910GH) |
価格 | 41,800円(TENSEI SILVER TM70、税込)、38,500円(N.S.PRO 910GH、税込) |
公式サイト | テーラーメイド公式サイト |
テーラーメイド SIM2 レスキューを試打レビュー
兄弟モデルとしてデビューした『SIM2レスキュー』と『SIM2 MAXレスキュー』の性格の違いを高橋良明が診断。『SIM2レスキュー』はどんなゴルファーに向いているのか明らかにします。
- 見た目がアイアンに近く、ダウンブローに打ちやすい
- 操作性に優れ、とくにスライス系の球が打ちやすい
- 振った分だけ飛んでくれるからグリーンをねらいやすい
見た目がアイアンに近く、ダウンブローに打ちやすい
『SIM2レスキュー』を構えてみるとフェースのオフセットがけっこう大きくて、トゥが持ち上がっています。フェース周りの形状はほぼユーティリティアイアンか飛び系のロングアイアンといっていいでしょう。表面の模様と色のおかげかクラウンの存在もあまり目立たないのでアイアンと同じように構えられます。
また、前作に当たる『SIM MAXレスキュー』や兄弟モデルの『SIM2 MAXレスキュー』はどちらかといえば払い打つイメージですが、『SIM2レスキュー』はアゴの出かたが抑えられているので上から打ち込むイメージが強くなっています。
操作性に優れ、とくにスライス系の球が打ちやすい
『SIM2レスキュー』で一番特徴的なのはヘッドのコンパクトさです。『SIM2 MAXレスキュー』と同じ「Vスチールソール」でもさらに抜けがよく、ヘッドの入射角やフェース向きを思ったようにコントロールできます。スピン量も前作『SIM MAXレスキュー』より多いので高さを使って止めやすくなりました。
フェース角が最初からオープンなのでトゥ側でフックを打とうとすると当たり負けする傾向ですが、ネック側に当てたときはきっちりスライスしていってくれます。
鍛造と鋳造の違いなのか『SIM2 MAXレスキュー』よりもフェースの食いつき感は強く感じます。
振った分だけ飛んでくれるからグリーンをねらいやすい
『SIM2 MAXレスキュー』よりも弾き感が抑えめで弾道も低めですが、ロングアイアンと比べると球が上がってよく飛びます。ただし勝手に弾いて飛んでしまうわけではなく、振ったら振った分だけ飛んでくれます。
ヘッドスピードを上げていってもスピン量はそれほど増えないし、フェースアングルもけっこうオープンで左に行きにくいのでハードヒッターが叩いて飛ばせるクラブです。
スイートエリアが見た目の割に広く、ツイストフェースの効果でフェースが開いたりかぶったりしても極端に左や右に球が散らないので距離のバラつきが小さいところも長所です。
テーラーメイド SIM2 レスキューがおすすめの人
兄弟モデルの『SIM2 MAXレスキュー』はウッドのようにボールを左に置いて払い打つ人に向いていますが、形がアイアンに近い『SIM2レスキュー』は真ん中に置いて打ち込むタイプと相性がいいです。
ロングアイアンよりも球は上がりますが、ボールをしっかりとつかまえて本来の高さで飛ばすためにはある程度ヘッドスピードが必要です。最低でも43m/sくらいは欲しいところで、逆に速い分にどれだけ速くてもシャフトで対応できます。
また、フェースアングルがオープンなのでドローヒッターは引っかけ、フェードヒッターは逆球を怖がることなくしっかり振り抜けます。
リーディングエッジが前に出ていないのでロフトを立てて高さを抑えるなど、いろいろな球筋を打ち分けたいアスリートや上級者にもおすすめです。
テーラーメイド SIM2 レスキューの評価
前作の『SIM MAXレスキュー』は1モデルであらゆるゴルファーに対応していましたが、『SIM2 レスキュー』と『SIM2 MAXレスキュー』の2モデルに分かれた新作ではよりターゲットに合わせた作り込みがされています。
『SIM2 レスキュー』を一言で言い表すと「ヘッドスピードの速い人がアイアンよりもやさしく飛ばせるクラブ」です。アイアンよりもスイートスポットが広くて球が上がるだけでなく、球がつかまりすぎたり飛び過ぎたりしないところも上級者にとって使いやすいポイントです。
テスター/高橋良明(たかはし・よしあき)
1983年生まれ、東京都出身。2013年プロ入会。サザンヤードCC所属。ツアーに挑戦するかたわら、ゴルフ専門誌やウェブメディアでテスターを務める。毎年出る新製品はほぼ打ち尽くしている試打のスペシャリスト。